一人親方の特別加入

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労働災害の損害賠償責任

損害賠償とは、自らの行為によって他人に与えてしまった損害について賠償することを言います。 損害を被った被害者が加害者に対して損害結償を請求する場合、 債務不履行に基づく損害賠償請求と不法行為に基づく損害賠償請求の2つがあります。 これはそれぞれ民法415条と709条に定められています。

  • 債務者が正当な理由がないにも関わらず債務の本旨に従ったを履行しなかったために生じた債務不履行責任
  • 故意・過失により他人の権利を侵害し、これによって他人に損害を生じさせたことに基づく不法行為責任

損害賠償の範囲は、「債務不履行又は不法行為」と「損害」との間に因果関係があるものに限られます。 因果関係とは「風が吹けば桶屋が儲かる」というな無制限に原因を追求した結果の因果関係ではなく、 また一点の疑問もさしはさめない程度に完璧な因果関係でもありません。 「通常人が疑をさしはさまない程度に真実性の確信を持ち得るもの」でありさえすれば、因果関係があると解されます。

労働災害による損害賠償において、債務不履行又は不法行為責任のいずれにおいても、 その損害の種類に大きな差はなく、財産的損害と精神的損害の2つに分けられます。損害の主なものは次のとおりです。

  • 治療費、入院費、付添費
  • 弁護士費用
  • 遅延損害金
  • 葬儀費用
  • 休業損害
  • 逸失利益(後遺障害、死亡)
  • 慰謝料

労災保険法は労働基準法で定める企業の業務上の災害補償責任を代行する目的で作られた保険制度であり、 労働災害が発生した場合に企業が負う損害賠償のうち治療関係費用、休業損害、逸失利益を 企業に代わって補償します。 建設現場においては元請企業が一括して労災保険に加入していますので、 下請企業労働者も元請の労災を使用することができますが、 元請とも下請とも雇用関係にない人はどうでしょうか? 一人親方は請負労働者、職人、社外工と会社によって色んな呼び方がありますが、 一人親方は原則として労災保険を使えません。その結果、企業が直接損害賠償責任を負うことにもなりかねません。

労災適用のまとめ
労働者の種類 労災の適用
元請企業労働者 元請企業の労災を使用
下請企業労働者 元請企業の労災を使用
一人親方 労災不適用

 安全配慮義務(債務不履行)

ある法律関係に付随して、使用者が労働者に対して信義則上負う義務として安全配慮義務があります。 具体的には「労務の提供にあたって、労働者の生命・健康等を危険から保護するよう配慮すべき使用者の義務」です。 その義務の履行を怠るときは、債務不履行となり、民法の規定に基づき、使用者は労働者に対して 損害賠償しなければなりません。
ここで言う「ある法律関係」とは「雇用契約」をだけを指すものではありません。 「労務の提供」は雇用契約上の労働者だけでなく、 請負契約・委託契約によっても「労務の提供」がなされる場合があります。 したがって、下請企業の労働者や一人親方の場合、元請企業と雇用関係にはありませんが、 元請企業と下請企業労働者・一人親方に次のような直接又は間接的に使用従属関係・指揮命令関係がある と認められるような場合は、元請企業は下請労働者・一人親方に対する安全配慮義務があると考えられます。

  1. 元請企業の管理する設備、工具等を用いていること
  2. 下請企業労働者が事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働していること
  3. 下請企業労働者の作業内容が元請企業労働者の作業内容が同一であること

なお、立証責任は損害賠償請求を請求する側である労働者側が負っていますが、 それに対して企業側は事故に過失のなかったこと、すなわち事故の防止にあたって十分に注意を尽くしていたことを立証する責任が生じます。

 不法行為責任

不法行為責任とは、故意または過失によって他人の権利を侵害し、 これによって他人に損害を生じさせたことに基づく責任のことです。 債務不履行責任と異なり、加害者と被害者の間に契約の有無は関係ありません。 よって、下請企業労働者はもちろん一人親方に対して元請企業の不法行為があった場合は、 その責任が問われることになります。ただし、以下の要件を満たすことが必要になります。

  1. 故意または過失があること
  2. 他人の権利又は利益を侵害したこと
  3. 加害行為と損害との間に因果関係が認められること

不法行為の立証責任も安全配慮義務のそれと同様に損害賠償を請求する側である労働者が負っています。安全配慮義務違反の立証と比較して、不法行為の場合は故意又は過失があることを立証しなければならず容易ではありません。そのため、安全配慮義務違反に基づく損害賠償が可能な場合には、そちらを選択することが多いようです。

 企業の責任

今まで見てきたように、 会社には直接雇用している従業員だけでなく、 請負その他の契約に基づいて特別な契約関係にある者に対しても、 その生命・健康について特別の注意義務を払う必要があります。 また、不法行為責任に関しては、契約の有無は全く関係ありません。

  • 安全配慮義務は雇用関係に限定されない
  • 不法行為責任は契約の有無は無関係

雇用関係の有無に関わらず、事故が起きた場合は 債務不履行責任に基づく安全配慮義務違反又は不法行為責任を根拠として 元請企業がその責任を追及される可能性があります。 下請企業労働者は労災保険を使用できますから一応安心できますが、 一人親方の労働中の事故は労災保険が使用できない以上、 企業が損害の責任を負うことになります。

一度事故が起きると・・・
一人親方
  • 治療費はどうする?
  • 仕事休んだら、生活できない
  • 障害が残ったら、今の仕事ができなくなる
  • 自分が死んだら、家族の生活はどうなるんだろう

というような不安を抱くでしょう。
企業の責任、被災労働者の治療、生活、遺族補償・・・
色んな問題が噴出します。では、どうしたらいいのでしょうか?

労災保険は、本来は会社に雇用される従業員のための保険ですが、 個人事業主である一人親方のみなさんのために個別に加入するという道を用意しています。 それが「特別加入」です 労災保険は会社にとっても、一人親方にとっても欠かせない保険です。

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