労働保険
労災保険は業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために必要な保険給付を行うことを目的としています。これに対して、雇用保険は 失業した被保険者や高齢者や育児休業者等の雇用の継続が困難になった被保険者に対して保険給付を行うことを目的としています。被保険者となる労働者を雇用したときは、被保険者資格取得届を管轄のハローワークに提出します。
このようにその目的とするところに大きな違いがありますが、通常は両保険を一体として適用・成立させ、納付する保険料についても労災保険の保険料と雇用保険の保険料を一体として申告・納付します。これを一元適用事業と言います。これに対して、建設業を初めとするいくつかの業種においては労災保険の保険関係と雇用保険の保険関係を別々に成立させます。労災保険は労働基準監督署へ、雇用保険は公共職業安定所へそれぞれ申告・納付します。このような事業を二元適用事業と言います。
適用事業・適用労働者
労災保険は労働者を一人でも雇用している場合は加入が義務付けられている強制保険です。そのため、労働者を使用している場合は。その使用した日に適用事業所となります。
労災保険法上の労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。つまり正社員、契約社員、パート、派遣労働者等、名称や雇用形態にかかわらず、雇用契約を結び労働の対価として賃金を得ていれば、労働者となります。
雇用保険は週の労働時間が一定の時間数を超えた場合に雇用保険の被保険者になります。労働者であるからといって、その全員が雇用保険の被保険者に該当するわけではありません。雇用保険の被保険者に該当する者を使用した日に雇用保険の適用事業所となります。また、労災保険は労働者であることがその適用要件となっているため、個々の労働者に関して保険の手続は必要ありませんが、雇用保険の場合は週の労働時間数が一定の時間数を越えた者を対象としているため、管轄の公共職業安定所に雇用保険の被保険者の資格取得の手続をすることになります。
なお、不法就労者は雇用保険や社会保険に加入することはできませんが、労災保険法上は労働者となります。法人の代表以 外の役員や委託によって働く労働者も、その就労実態に使用従属関係があり、賃金が支払われている場合は労働者とみなされます。
- ※請負契約、業務委託契約との関係
- 請負契約とは、請負人がある一定の仕事を完成させ、注文者がこれに報酬を支払う契約、業務委託契約とは特定の仕事を処理することを目的として行われる契約と民法では規定しています。請負契約、業務委託契約は雇用契約ではないため、労働者とはなりません。
- ※派遣契約 との関係
- 派遣は雇用契約は派遣元で結び、指揮命令権が派遣先にある特殊な雇用形態です。通常は雇用と使用は同一であるのが原則ですが、行政に許可又は届出をすることによって雇用と使用を分離した派遣契約を結ぶことが可能になります。そのため、派遣元と派遣先の双方に法律上の義務が生ずることになります。労働基準法では、災害補償に関する部分は派遣元が責任を負うとあります。したがって、派遣労働者が業務災害や通勤災害を被った場合は派遣元の労災保険から補償がされます。
適用単位
労災保険の保険関係は、事業を単位として成立します。この適用単位としての事業とは、会社そのもの、企業そのものではなく、一つの会社にいくつかの支店や工場がある場合には、原則として支店や工場ごとに保険関係が成立することになります。例えば、東京に本社があり横浜に営業所がある場合は、東京と横浜それぞれで保険の手続をしなければなりません。
また、労働保険で「事業」と言った場合、継続事業と有期事業に分けられます。「継続事業」とは、一般の工場、商店、事務所等のように事業の 期間が予定されていない事業を言います。それに対して、有期事業とは建設工事や立木伐採事業のように事業の期間が予定され、事業目的を達し終了するような事業を言います。
保険関係の一括
労災保険の適用単位は事業ごとにと先述いたしましたが、事務処理の簡素化等の目的から一定の要件を満たした場合には複数成立すべき保険関係を一つの保険関係として処理することができるようになります。誤解のないように言うと、保険関係の一括による効果は保険料のみです。そのため、雇用保険の手続を本社で行うには事業所非該当なる手続が必要になります。また、労災保険の給付請求は一括されないため、事故が起きた場合にはそれぞれの事業で成立させた保険関係ごとに管轄の労働基準監督署で行います。
- 継続事業の一括
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同一の事業主が2以上の事業を行う場合において、以下のすべての要件を満たすときは、これらの複数の事業を一括できます。
- すべての事業の事業主が同一であること
- それぞれの事業で保険関係が成立していること
- 事業の種類が同一であること
- 保険関係が同一であること
- 有期事業の一括
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同一事業主が、建設の事業又は立木の伐採の事業を同時に2以上行う場合において、それぞれの有期事業が次の条件をすべて満たしてい るときは、それらの有期事業を一括して一つの継続事業とみなして保険事務が処理されます。
- 事業主が同一人であること
- それぞれの事業が建設事業か立木の伐採の事業のいずれか一方のみに該当すること
- それぞれの事業が他の有期事業の全部又は一部と同時に行われること
- それぞれの事業の規模について、概算保険料額が160万円未満であって、かつ、建設の事業においては、請負金額が1億9,000万円未満、立木の伐採の事業においては、素材の見込み生産量が1,000平方メートル未満であること
- それぞれの事業の種類が、建設業においては、労災保険率表による事業の種類が同一であること
- それぞれの事業に係る保険料納付事務が1つの事務所で取り扱われ、かつ、それぞれの事業がその一括事務所の所在地を管轄する都道府県労働局の管轄区域、又はそれと近接する都道府県の管轄区域内で行われるものであること
- 請負事業の一括
- 建設業の場合、数次の請負によって事業が行われることが一般的であるため、保険関係を本来の適用単位で成立させることは大変困難なものと考えられています。そのため、数次の請負による建設の事業は、元請事業者を事業主として取扱う「請負事業の一括」が法律上当然に行われます。
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