一人親方労災保険に特別加入していても、労災事故の度合いによっては補償が不足する場合もあります。
一人親方労災保険で損害賠償請求は補償対象外のため、補償内容に不安を感じる方や、家族のことも考えて万が一の事態に十分備えたい一人親方もいることでしょう。
その場合は、一人親方でも加入できる民間の労災上乗せ保険に必要に応じて加入することがおすすめです。
今回は、労災上乗せ保険の概要や一人親方が労災上乗せ保険へ加入するメリットやデメリット、加入方法などを解説します。
労災上乗せ保険を検討している一人親方や補償内容が気になる方は本記事を参考にしてください。
Contents
労災上乗せ保険とは
「労災上乗せ保険」とは、一人親方労災保険で不足する補償を必要に応じて追加できる民間保険のことです。
労災認定されなくても補償が受けられる場合があるため、国の労災保険よりも、家族などへの補償を早めに受けられるでしょう。
また、一人親方の労働環境に合わせた補償内容を選択できます。
一方、「一人親方労災保険」は、療養にともなう治療費や入院費などに対する最低限の補償が受けられる国の任意保険です。
労災認定されるまでの期間は、給付内容ごとに異なるものの約1~3ヶ月で、すぐに給付が受けられません。
休業補償は賃金の80%程度、破損・物損などの損害賠償請求や慰謝料などは補償対象外となっています。
労災上乗せ保険は一人親方でも加入できる?
労災上乗せ保険は一人親方でも加入できます。
労災上乗せ保険への加入の有無が現場入りへの条件となっているケースがあり、未加入の一人親方は現場入りができない可能性があるため、注意しましょう。
また、一人親方労災保険で損害賠償は補償対象外のため、自分が加害者となった場合に、必要な補償内容が国の労災制度では満たせないケースがあります。
特に、現場での死亡事故が起きた場合、雇用契約に関わらず、慰謝料や損害賠償を請求される可能性があるため、労災上乗せ保険の加入を検討するとよいでしょう。
労災上乗せ保険が適用される主なケース
労災上乗せ保険が適用されるケースは、以下の通りです。
ただし、補償範囲は保険会社やプランによって異なるため、実際に加入している保険を確認しましょう。
・労災により通院、休業したケース
・後遺障害が残ったケース
・死亡したケース
・労働者や第三者への賠償責任が発生したケース
・労働が原因で病気や精神疾患になったケース
労災上乗せ保険の主な補償内容
労災上乗せ保険で受けられる主な補償内容は、以下の通りです。
ただし、補償内容は保険会社や保険内容によって異なります。
・治療費、通院費、入院費、手術費
・休業補償金
・後遺障害補償金
・死亡補償金
・建物や資材、第三者への損害賠償金
労災上乗せ保険の種類
一人親方でも加入できる「労災上乗せ保険」は主に2種類に分類されます。
「法定外補償保険」「使用者賠償責任補償」についてそれぞれ見ていきましょう。
法定外補償保険
「法定外補償保険」とは、民間の保険会社へ任意に加入する私的な保険で、法律で定められた制度ではないことからそう呼ばれます。
「法定外補償保険」では、国の制度である一人親方労災保険での補償対象外の部分を補償でき、補償内容は、休業補償や障害補償、遺族補償が中心です。
死亡・後遺障害保険金や入院・通院給付金などが受けられ、補償額は保険会社によって異なります。
国の制度である一人親方特別加入制度による補償では足りない部分を補填する手厚い補償として、一人親方のリスクへの備えとして、安心できる保険といえるでしょう。
使用者賠償責任補償
「使用者賠償責任補償」は、労災事故によって被災した場合の損害賠償や慰謝料請求に対応した補償です。
一人親方労災保険では、本人や遺族への補償は可能ですが、慰謝料や損害賠償は補償対象外となっています。
損害賠償金は、数千万円から億単位の高額となることが多いため、労災上乗せ保険に加入しておくと、賠償金額確定後に受け取りとなる補償金を法定外補償保険で補填しながら対応できます。
一人親方が労災上乗せ保険に加入するメリット
一人親方が労災上乗せ保険に加入する3つのメリットについて解説します。
補償が手厚くなる
労災上乗せ保険に加入する1つ目のメリットは、損害賠償や家族に対する遺族給付等の手厚い補償も受けられることです。
一人親方労災保険は、自分のケガや病気に関しての補償のため、足りない場合があります。
国の特別加入制度での補償額は給付基礎日額によって決まり、仕事上での損害賠償請求は補償できません。
万が一、労災事故で長期間休業することになっても、労災上乗せ保険に加入していると手厚い補償が家族分も受けられます。
特に、短期間でも労働者を雇う一人親方にとって、加入時に従業員名簿不要で、人員の入れ替えがあっても保険適用となるため、加入した方がよいでしょう。
必要な補償特約を選べる
労災上乗せ保険に加入する2つ目のメリットは、必要な補償特約を選べることです。
過労死やセクハラ・パワハラなどの問題が取り沙汰される現代では、損害賠償を請求される可能性があります。
例えば、過労死の際は遺族年金や慰謝料、葬祭料などの補償、ハラスメントには「雇用慣行賠償責任補償」特約があります。
一人親方労災保険では、損害賠償にあたる慰謝料は補償対象外です。
そのため、必要に応じて補償を選べる労災上乗せ保険に加入することで、労災リスクに備えられるでしょう。
社会保険料の控除対象となる
労災上乗せ保険に加入する3つ目のメリットは、任意保険料に「社会保険控除」の対象として節税効果があることです。
労災上乗せ保険の保険料は、税務上において全額必要経費で計上が可能なため、忘れずに確定申告してください。
ただし、個人事業主の一人親方の場合、自身の労災保険は経費扱いとはならないため、注意しましょう。
一人親方が労災上乗せ保険に加入するデメリット
一人親方が労災上乗せ保険に加入するデメリットについて解説します。
補償内容が重複するリスクがある
一人親方が労災上乗せ保険に加入するデメリットは、一人親方労災保険と補償内容が重複するリスクがあることです。
補償内容が重複すると、どちらかの給付しか受けられず、保険料の払い損となってしまう可能性があります。
保険内容と、付帯した特約の補償内容が重複していないかを加入前に必ず確認し、補償内容を理解したうえで加入しましょう。
保険会社によって補償内容が異なる
労災上乗せ保険は民間保険のため、保険会社によって補償内容や補償額が異なる場合があります。
労災上乗せ保険を選ぶ際は、いざという時に十分な補償が受けられるよう、補償内容や保険料について調べることが大切です。
補償範囲や内容と保険料の釣り合いなどのコスト面に目を向けて複数の保険会社の補償内容を比較するとよいでしょう。
一人親方に対応していない場合がある
労災上乗せ保険は、基本的に損害賠償請求や従業員に対する補償を受けるために加入する労災対応の保険のため、必ずしも一人親方に対応しているとは限りません。
保険会社によっては、特約を付帯して上乗せ保険に加入できる場合や代用商品を紹介してもらえる場合があるため、一人親方でも加入できるかを事前に確認しましょう。
一人親方が労災上乗せ保険に加入する方法
一人親方が労災上乗せ保険に加入する方法について解説します。
特別加入団体から加入
特別加入団体によっては、労災上乗せ保険にも加入できる場合があるため、各加入団体へ直接確認してみるとよいでしょう。
現在加入している特別加入団体から労災上乗せ保険に加入するメリットは、補償内容が重複しにくいことです。
商工会議所から加入
地域によって異なるものの、商工会議所から労災上乗せ保険へ加入する方法もあります。
商工会議所からの加入は、複数の保険会社の商品の中から自分に必要な補償を選べます。
また、団体割引が適用される場合もあるため、保険料を抑えられるでしょう。
民間の保険会社から加入
労災上乗せ保険は、民間の保険会社から直接加入して補償内容を自由に選択できます。
ただし、上乗せ保険は種類が多く、必要に応じた補償内容を自分で選ぶことは難しいでしょう。
また、特別加入団体のような独自の特約や割引がなく、保険料が高くなってしまう場合が多いです。
雇用人数や補償項目によっても保険料は異なるため、まずは保険代理店で複数の見積もりをとって比較しましょう。
まとめ
労災上乗せ保険は、国の制度である一人親方労災保険の補償対象外部分を上乗せして補償が受けられる民間保険です。
基本的に、労災上乗せ保険は「法定外補償保険」「使用者賠償責任補償」の2種類から構成され、一人親方特別加入団体や商工会議所、民間の保険会社から加入できます。
労災保険に加入する際は、一人親方でも加入可能か、補償内容に重複がないかを確認して、必要な補償特約を選べる保険会社を選ぶことが大切です。
建設業で働く一人親方は労災リスクが高いため、手厚い補償が受けられる労災上乗せ保険への加入を検討すると安心でしょう。