一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方の家賃は経費にできる?経費として計上する際の計算方法も解説

一人親方の家賃が経費になるのか疑問に感じる方もいるでしょう。

経費の計上が適切でないと、申告時にトラブルが発生する可能性があるため、正確な帳簿管理が求められます。
確定申告の際にスムーズな手続きを行うためにも、一人親方の経費を正しく把握することが大切です。

今回は、一人親方の家賃を経費として計上できるのかどうかを解説します。
経費として計上できるそのほかの項目についても解説していますので、本記事の内容をお役立てください。

一人親方の家賃は経費にできる

一人親方が自宅を仕事場として使っている場合、家賃を経費にできます。
ただし、日常生活でも使用している場合は、全額を経費対象にすることは認められていません。
こうした、家事と仕事の両方に関係する支出を「家事関連費」と呼びます。

対象とする費用を算出するには、部屋全体の何割が作業スペースとなっているか計算します。
加えて、事業に充てている時間も判断材料のひとつです。

面積と使用時間の両方を基準に割合を求め、そこから経費金額を割り出す方法を「按分」といいます。
仕事で使用している広さと時間に応じて割合を算定し、家賃経費に正確に反映させることが求められます。

一人親方の家賃を経費として申告する方法

一人親方の家賃を経費として申告する場合、主に以下の2種類の方法があります。

  • 青色申告
  • 白色申告

それぞれの申告方法について解説します。

青色申告の場合

青色申告とは、取引に関する内容を正確に帳簿へ記録し、その情報を基に確定申告を行う申告制度です。
所得を計算する際、税制上の優遇措置を受けられます。

青色申告を行うためには、開業から2ヶ月以内に手続きを完了する必要があります。
なお、年始の1月1日から15日の間に事業を開始した場合には、3月15日が申請期限です。

すでに事業を営み、白色申告から切り替えを希望する場合は、青色申告を適用したい年の3月15日までに申請書を提出しましょう。
また、事業を相続した際の提出期限は、被相続人の死亡時期に応じて異なります。

  • 1月1日〜8月31日に死亡した場合:死亡日から4ヶ月以内
  • 9月1日〜10月31日に死亡した場合:その年の12月31日まで
  • 11月1日〜12月31日に死亡した場合:翌年2月15日まで

自宅を事務所として活用する場合、家賃を経費にできるのは、事業に使用した分に限られます。
事業利用スペースの面積割合や使用時間で経費対象額を算出し、帳簿や間取り図などで、説明ができるようにしておきしょう。
税務署からの確認に備え、日常的に作業エリアや使用時間の記録を残しておくことを推奨します。

白色申告の場合

白色申告は、帳簿作成や提出する書類が比較的少なく済むため、手続きが手軽に行える傾向にあります。
経理業務に慣れていない一人親方が、この申告方法を選ぶケースも見られます。
自宅の家賃を経費として扱いたい場合には、業務使用部分だけを対象にしなければなりません。

記帳や手続きが簡易であることから、白色申告は取り組みやすい制度とされています。
申告時の正確性を維持するためには、業務利用の状況を整理し、データに基づく計算をしましょう。

一人親方の家賃を経費にする際の計算方法

自宅を事務所として利用している一人親方が、家賃の一部を経費に組み入れる場合には「家事按分」という考え方を用います。
家事按分とは、生活用と業務用が重なる支出のうち、仕事に利用した割合だけを分けて経費処理する方法を指します。

ただし、経費として計上するには、業務に使用したスペースの広さや作業時間の記録を整えておくことが必要です。
また、賃貸住宅と持ち家とでは、家賃の扱い方に違いがあるため、区別して計算することが求められます。

これから、賃貸物件と持ち家のそれぞれにおける経費計算の方法について説明します。

賃貸の場合

賃貸物件に住む一人親方が家賃を経費に計上する際には、1年分まとめて算出するほうが手間が少なくなります。
しかし、月ごとに業務にあてる時間が変動する一人親方の場合は、月単位で按分したほうが正確な申告が可能です。

例として、家賃が月額12万円、5部屋ある住居のうち1室のみを仕事用に使用しているケースを考えましょう。
この場合、各部屋が同じ面積とすると居住空間全体の約5分の1にあたるため、経費は12万円✕1/5=2万4,000円と求められます。

また、ワンルームなどの場合は面積で按分できないので使用時間で按分し、1日24時間のうち業務に9時間、私用に15時間を充てている場合は、経費は12万円✕9/24=4万5,000円となります。
このように、作業スペースの広さや使用時間に応じて経費額が変動するため、正確に計算し、申告することが重要です。

持ち家の場合

持ち家に居住している一人親方は、賃貸とは異なり、家賃を経費に含めることはできません。

ただし、建物の劣化に応じた「減価償却費」や、「固定資産税」、「住宅ローンにかかる利息」などについては、事業使用分を経費に振り分けられます。

たとえば、住宅ローンの利息が毎月3万円で、そのうち50%のスペースを事業に利用しているなら、1万5,000円を経費とすることが可能です。

金利だけでなく、固定資産税や減価償却費についても、業務用途に応じて按分し、経費処理を行いましょう。
スムーズな申告のためには、日常的に業務使用割合を明確に把握しておくことが重要です。

一人親方が経費として認められる項目

家賃以外にも一人親方が経費として認められる項目は複数あります。
節税につなげるためにも、経費にできる項目を把握することが大切です。
ここからは、一人親方が経費として認められる項目について解説します。

水道・光熱費

自宅で事業を行う場合、水道・光熱費も経費に含められる支出のひとつです。
ただし、生活と業務が混在している場合は、すべてを対象にすることはできません。

水道・光熱費を事業用として計上するには、家賃と同様に「家事按分」が必要です。
24時間の電気使用のうち、業務に9時間使っているならその割合で算出します。

飲食業や美容業など、店舗として使っている物件では、発生する水道・光熱費を全額経費にすることも可能です。
対して、自宅兼事務所の場合は、使用時間や面積をもとに割合を出す必要があります。

自宅を仕事場として使う場合、水道・光熱費の使用状況を細かく把握するのは現実的に難しい面があります。
そのため、使用時間や作業スペースの面積を基準に按分する方法が一般的です。

接待交際費

接待交際費とは、一人親方が仕事上の関係を築くために使う接待や贈り物の費用を指します。
接待交際費には、取引先との飲食、手土産なども含まれます。
事業に関連していれば経費として計上できますが、私的な交友や従業員の慰安のための支出は対象外です。

相手や目的が不明確なまま申告すると、税務署に否認される可能性もあります。
交際費として認められるには、業務との関係を具体的に説明できることが重要です。

経費として計上する際は、領収書の保管に加え、詳しい内容や相手先などを記録に残しておくとよいでしょう。

旅費交通費・荷造り運賃

旅費交通費とは、一人親方が業務上の移動に使った費用を指し、経費として計上可能な項目です。
自家用車を使っている場合は、ガソリン代や車両の購入費も対象になることがあります。

ただし、プライベートで使った交通費は対象外です。
業務と関係ない移動費を混在させると、経費として否認されるおそれがあります。

また、郵送や配送のために使った段ボール代や郵便料金などは、「荷造り運賃」として扱われます。
資料や商品の発送に関する費用も、業務の一環であれば経費として計上可能です。

組合費

組合費とは、一人親方が所属する労災保険の特別加入団体に支払う費用です。

建設業や運送業など、労災リスクのある仕事に従事することがある一人親方は、万が一に備える手段として組合へ加入する場合があります。

会社員が雇用先で保険に加入するのとは異なり、自ら補償を確保する必要があるためです。
その際に支払う年会費や加入料などが、業務に関係する支出として認められます。

所属する団体によっては「団体費」や「協会費」と呼ばれることもありますが、いずれも内容が業務に関わるものであれば計上可能です。
ただし、親睦目的の集まりや私的な活動を含む場合は対象外となります。

材料費・消耗品費

材料費は、建設や製造などで実際に作業に使われる材料です。
たとえば、木材や塗料など、建設に直接関わる資材が該当します。

一方、消耗品費は、業務に必要な道具や備品の費用です。
事務用のノートやプリンターのインクなどが消耗品に含まれます。
10万円未満で、使用期間が1年未満の備品であれば、原則として消耗品費に分類されます。

10万円以上、かつ1年以上使う備品は「工具器具備品」に該当し、減価償却の対象となり、一括で経費にはできません。
材料費も消耗品費も、使途が業務に関係していることが前提です。
内容に応じて分類し、正しく経費処理することが求められます。

雑費

雑費とは、一人親方が事業で支出した中で、どの項目にも該当しない費用です。

消耗品費と混同されやすい傾向がありますが、雑費は、ゴミの処分料、銀行の振込手数料など、どの項目にも当てはまらない一時的な費用のことを指します。

消耗品と雑費の分類に迷った場合は、支出の性質や目的を整理することが重要です。
ほかの科目に該当しない場合は、雑費として申告しましょう。

一人親方の経費にできない項目とは

家族の生活費や趣味、旅行や私用の衣類代など、業務に関係のない費用は経費にできません。

設備投資や大規模な改修費は、経費ではなく資産として処理され、耐用年数に応じて減価償却費として計上されます。
仕事用の車をレジャーに使ったときのガソリン代など、仕事と私用が混在している場合も、経費にはできません。

さらに、忘年会や慶弔費など、従業員向けの福利目的の支出も原則として経費の対象外です。
ただし、社員を雇う予定がある場合には、福利厚生費が経費として認められることもあります。

業務に必要がある項目かを考慮して、経費に含めるか検討するとよいでしょう。

一人親方の経費の目安はどれくらい?

一人親方の経費は、売上の3〜5割程度がひとつの目安とされています。
ただし、事業の内容によって割合は変わります。

経費の上限は原則として決められていません。
しかし、売上に対して経費が多すぎる場合は、税務署から説明を求められる可能性があります。
支出の内容を明確にし、必要なときに根拠を示せるように準備しておくことが大切です。

まとめ【一人親方の家賃は経費として計上できる】

今回は一人親方の家賃が経費として計上できるのかどうかを解説しました。
一人親方の経費は、事業に必要な支出を正しく区分し、適切に計上することで、税務上のトラブルを防げます。

経費計上のルールを理解し、正確な申告を心がけましょう。
本記事の内容を、経費の管理や確定申告の際にお役立てください。

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