労災指定病院の調べ方がわからずお困りの一人親方もいるでしょう。
労災指定病院は、厚生労働省のホームページから簡単に検索できます。
今回は、労災指定病院の調べ方を中心に、労災病院・一般病院との違いや、労災申請手続きについて解説します。
労災指定病院の調べ方を知りたい一人親方や、労災に見舞われてから病院探しをすることのないよう事前に調べたい一人親方はぜひ参考にしてください。
Contents
労災指定病院とは
労災指定病院とは、一般の医療機関が都道府県の労働局長に申請をして認められた民間の医療機関です。
一般診療のほか、労災により治療が必要な際に労災保険(労働者災害補償保険法)の適用が受けられます。
一方、労災病院は独立行政法人労働者健康福祉機構が運営する公的な医療機関で、全国に32ヶ所あります。
正式には「労災保険指定医療機関」といい、一般診療のほか労働者の治療やリハビリなどに重点を置いています。
労災指定病院と労災病院どちらも労災時の治療を無償で受けられるものの、運営や管理元に違いがあり、労災指定病院は労働者にとって利用しやすい医療機関となっています。
労災指定病院と一般病院との違い
一般の医療機関の申請によって指定された労災指定病院と一般病院との違いは、治療費の負担や返還方法などです。
労災指定病院を受診した場合、病院によっては預り金が必要なケースがあるものの原則、労働者は無料で治療を受けられます。
一方、労災指定以外の一般的な病院を受診した場合は、労働者が治療費を全額立て替えて後日、労災認定後に労働基準監督署から還付を受けられます。
労災手続き方法と必要書類
労災指定以外の病院でも労災保険は使用できるものの、手続きの流れが変わります。
労災指定病院にかかった場合と一般病院にかかった場合の労災手続き方法についてそれぞれ解説します。
労災指定病院や労災病院で治療を受ける場合
労災指定病院や労災病院での手続き方法は、治療を受けた病院の窓口へ「療養給付請求書」を提出するだけです。
給付請求書は、厚生労働省のホームページ「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」からダウンロードできます。
業務災害の場合:療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
通勤災害の場合:療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)
労災保険を使って労災指定病院・労災病院で治療を受ける場合、労災保険から病院へ直接治療費が支払われるため、被用者の負担はありません。
健康保険を使うと医療費の切り替え手続きが必要となります。労災指定病院の受付で「労災」であることを事前に申し出たうえで、健康保険証を提示せずに受診しましょう。
労災指定以外の一般病院で治療を受ける場合
医療機関が労災指定ではなかった場合は、治療費を全額負担した後に「療養費用請求書」で給付金を請求します。
いったん窓口で治療費を全額負担し、後から請求申請手続きを行って費用を給付されるため注意が必要です。
様式は療養給付請求書と同様に、厚生労働省のホームページ「主要様式ダウンロードコーナー」からダウンロードできます。
業務災害用、通勤災害用、薬局用、柔整用、はり・きゅう用などさまざまな様式があるため、適したものを選びましょう。労災病院・労災指定病院の時と同様に、労災の治療に健康保険は利用できません。
<労災病院・労災指定病院以外の病院で治療を受ける際の流れ>
- 病院窓口で治療費を全額自費で支払う領収証を受け取る
- 労災の申請書(様式第7号)を作成し、医師による証明を受ける
- 労働基準監督署へ治療費の領収証と労災申請書(様式第7号)を提出
- 指定した口座に治療費が振り込まれる
労災指定病院以外の医療機関では労働者が一時的に立て替える必要があるため、労災時の治療は労災指定病院や労災病院を受診した方がよいでしょう。
労災の申請から支給決定までの審査期間
労災の申請から支給決定までの審査期間は、保険給付の種類によって異なります。
<審査期間の目安>
ケガや病気、休業補償の場合:約1ヶ月
障害が残った場合:約3ヶ月
死亡した場合:約4ヶ月
精神疾患の場合:1年以上
労災認定をするためには、労働基準監督署による調査が必要になり、ときには専門家の意見を確認されることもあります。
労災認定までの期間は約1ヶ月~1年以上かかるといわれているようです。
保険給付を受け取るまで時間がかかる可能性があるため、無償で治療が受けられる労災指定病院を受診するとよいでしょう。
労災指定病院の調べ方
労災指定病院の調べ方は厚生労働省の検索ページを活用するか、病院のホームページや電話で直接確認する方法があります。
それぞれの調べ方についてみていきましょう。
厚生労働省の検索ページを活用する
労災指定病院は、厚生労働省のホームページ「労災保険指定医療機関検索」から医療機関の名称や所在地、診療科目を選択して検索できます。
労災保険指定医療機関の情報は令和7年4月1日時点の届出内容に基づいた情報のため、受診したい病院が決まったら念のため一度問い合わせすると良いでしょう。
勤務先や家からの距離、症状などを考慮して検索を行い、最も条件に合う労災指定病院を選んでください。
参考:厚生労働省「労災保険指定医療機関検索」
病院のホームページや電話で直接確認する
病院のホームページを訪問し、労災保険の診察や治療に関する表記を確認してみるのも1つの方法です。
また、病院に直接電話で労災保険の治療を受けられるか確認するのが最も確実でしょう。
労災で病院を受診する時の注意点
労災指定病院を受診する時の注意点について解説します。
病院受付で健康保険証を提示せず労災であることを伝える
健康保険で受診した場合は、健康保険組合に連絡して医療費を返金する必要があります。
病院で診療を受ける際には、必ず受付窓口で「労災治療」である旨を申し出て、健康保険証を提示しないように気をつけましょう。
間違って健康保険証を出してしまった場合はどうする?
間違って健康保険証を出してしまった場合は、健康保険から労災保険への切り替え手続きが必要です。
切り替えができる場合は、病院に「療養の給付請求書」(様式第5号・様式第16号の3)を提出すると手続きは完了し、病院の窓口で支払った自己負担分が返還されます。
切り替えできない場合は、医療費の全額(10割)を自己負担して事後に労災保険から補償を受ける流れとなります。
受診から約1ヶ月以内であれば切り替えが可能です。間違って健康保険を使ってしまった場合は、手続きの負担が大きくなるため、気付いた時点で切り替え手続きができるか医療機関に相談しましょう。
労災保険には適用範囲がある
入院時の労災保険の適用範囲は、診察代、手術費用、投薬費用、検査費用、リハビリテーション費用、入院費用、食事代、入院や通院にかかる交通費(移送費)などです。
労災保険の対象外となる費用は、個室利用時の差額ベッド代、タオルなど病院から借りた物品代、診断書作成費用などがあります。
最初の病院から転院する場合は書類が変わる
労災保険で最初に診療を受けた医療機関には、様式5号「療養補償給付たる療養の給付請求書」を提出します。
もし何らかの理由で転院する場合、転院先の病院には様式6号「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等変更届」を提出します。
様式6号に記載する「労災指定医番号」は厚生労働省「労災保険指定医療機関検索」で簡単に調べられるようです。
【ケース別】労災指定病院を受診できない場合の対処法
突然発生する労災で考えられる指定病院を受診できない場合の対処法について解説します。
夜間・休日にケガをした場合
夜間・休日にケガをした場合は、救急外来に健康保険で受診して後日、病院に労災への切り替え手続きを行いましょう。
①健康保険組合または市区役所に連絡して自己負担分の残りの返還請求を待つ
②返還請求を受けて自己負担分(3割)の残り7割分を健康保険組合に返金する
③必要な書類をそろえて労働基準監督署に労災申請する
切り替え手続きに必要な書類は、療養の給付請求書(様式第7号・第16号の5)、返還額と自己負担分の領収書などです。
救急車で搬送された場合
労災により救急車で搬送された場合、搬送先の病院が労災指定でないケースも考えられます。
労働基準監督署への労災保険の給付手続きは、基本的には労働者自身で行いますが、本人だけでなく家族も行えます。
①厚生労働省のWebサイトからダウンロードした労働災害の請求書を作成する
②補償内容に応じた申請書を作成して労働基準監督署長に必要書類を提出する
③労働基準監督署の調査結果と判断を待つ
労災保険の給付の種類によっては申請期限があるため、注意しましょう。
一人親方・個人事業主が労災保険を利用する場合
一人親方や個人事業主の場合、労災保険に特別加入していないと労災として認められません。
労災リスクの高い建設業で働く一人親方は、労災保険特別加入制度を利用して労災で被災した場合に必要となる保険給付や特別支給金を受けられるようにしましょう。
また、特別加入している一人親方が労災指定病院で治療を受ける際は、加入証明書を持参する必要があります。
特別加入する際は、加入証明書を即日発行できる特別加入団体を選ぶと便利です。
加入手続きは一人親方団体労災センターで行える
一人親方労災センターでは、最短「翌日」から全国各地で加入でき、加入証明書は即日発行いたします。
初年度のみ入会金1000円が必要となるものの、組合費わずか月々500円で追加費用は一切かかりません。
次年度以降の更新費用はキャンペーン割引や団体割引もあります。
労災保険特別加入を検討している一人親方は、「一人親方団体労災センター」 へ問い合わせてみせください。
まとめ
労災指定病院の調べ方として、厚生労働省の検索ページや病院のホームページや電話で直接確認する方法があります。
労災では健康保険が使えず、労災指定病院以外の一般病院では10割の窓口負担が発生するため、事前に労災指定病院を調べて受診すると手続きがスムーズです。
一人親方や個人事業主は労災保険に特別加入していないと労災として認められません。
労災指定病院で治療を受ける際は、事前に病院受付で労災であることを伝えて健康保険証は提示せずに加入証明書を持参しましょう。