一人親方労災保険の「労災センター通信」

工事現場の騒音対策7選!一人親方が知るべき規制と原因も解説

工事現場の騒音対策は必要?

工事現場における騒音対策は、近隣住民との信頼関係を守るために重要です。

実際、環境省によると騒音に関する苦情の約6割が建設作業や工場からの騒音に関係しています。こうした背景から騒音規制法が制定され、生活環境や健康を守る仕組みが整えられました。

とはいえ、重機の操作や大型車両の出入りを完全に無音化することは難しいです。それゆえに、工事に伴う音や振動が地域住民にとって大きな負担となり、しばしば苦情やクレームにつながるのです。

だからこそ、施工者側は積極的に騒音対策を行う必要があります。

参照:環境省「騒音規制法」

騒音規制法

騒音規制法は、都道府県知事や市長などが地域を指定地域として定め、場所ごとに異なる規制基準を設けています。特に、一定以上の音を発する作業は特定建設作業とされ、対象地域で行う場合は事前に届出が義務づけられています。

工場や事業所に特定施設を新たに設置する際は30日前まで、特定建設作業を行う場合は7日前までに市町村や特別区長に届出が必要です。届出を怠れば罰則の対象となることもあります。

参照:環境省「騒音規制法」

特定建設作業と作業時間

騒音規制法で定められている特定建設作業には、以下のようなものがあります。

  • 杭打機・杭抜機・杭打杭抜機(圧入式を除く)
  • 鋲(びょう)打機を使用する作業
  • 削岩機を使う作業(1日の移動範囲が50m以内の場合)
  • 空気圧縮機(出力15kW以上、電動機を除く。ただしさく岩機用は除く)
  • コンクリートプラント(混練容量0.45㎥以上)やアスファルトプラント(混練重量200kg以上)を設置して行う作業
  • バックホウ(出力80kW以上のもの。ただし環境大臣が指定する低騒音型を除く)
  • トラクターショベル(出力70kW以上。同じく低騒音型を除く)
  • ブルドーザー(出力40kW以上。同じく低騒音型を除く)

これらの作業を実施する際は、騒音規制法で作業時間や騒音の大きさが決められています。事業者は事前に届出を行い、下記の基準を守らなければなりません。

規制の種類 第1号区域 第2号区域
騒音の大きさ 敷地境界において85デシベルを超えない 同左
作業時間帯 午後7時~午前7時に行わない 午後10時~午前6時に行わない
作業期間 1日あたり10時間以内、連続6日以内 1日あたり14時間以内、連続6日以内
作業日 日曜日やそのほかの休日でない 同左

第1号区域は住宅地や学校の周辺など特に静けさを守る必要がある場所が対象で、第2号区域はそれ以外の住宅区域を指し、第1号区域よりも制限が緩やかです。工事を行う際は、自分の現場がどちらに該当するかを確認し、法律に基づいた作業を徹底することが求められます。

参照:環境省「騒音規制法」

工事現場で騒音が起こる原因

工事現場では、さまざまな機械や作業によって大きな音や振動が発生します。ここでは、工事現場で騒音が起こる原因を解説します。

建設機械を使った作業

建設工事では、重量物を運搬したり土砂を掘削したりするために大型の建設機械が不可欠です。ショベルカーやクレーンなどは稼働時だけでなく移動する際にも大きな音や振動をともないます。そのため、これらの機械の音が周辺住民の生活に直結して苦情につながることが少なくありません。

重機の使用が作業効率向上に欠かせない一方、騒音の大きな原因であることを理解して運用には十分な配慮が必要です。

建設機械の操作ミス

機械の取り扱いは熟練の技術が求められますが、人間が操作する以上、ミスは避けられません。操作を誤ると通常よりも大きな騒音や振動が発生し、近隣への影響が大きくなる可能性があります。

さらに、誤操作は作業員自身や周囲の安全を脅かす事故や災害にもつながりかねません。そのため、操縦者には十分な教育と訓練を行い、現場全体で安全意識を高めることが不可欠です。

騒音問題だけでなく労働災害防止の観点からも、操作ミスを最小限に抑える取り組みが求められます。

解体作業

工事現場で特に大きな音の出るのが解体作業です。建物を壊す際には、重機にブレーカーや圧砕機を取り付けてコンクリートや木材を破砕します。その際、機械自体の稼働音に加え、崩れ落ちた瓦礫が地面に落下する衝撃音も重なり、周辺環境に大きな負担を与えかねません。

解体作業は工事工程の中でも特に強い音や振動が集中するため、住民にとって大きな不快感をともないます。安全確保と効率を両立させつつ、できる限り影響を抑える工夫が求められます。

大型車両の出入り

資材の搬入や廃棄物の搬出を行うため、工事現場では大型トラックやダンプカーの出入りがあります。車両が現場へ出入りする際のエンジン音や走行音、さらには荷物の積み降ろしの際に生じる衝撃音が、騒音となります。

車両の出入りは工事を進めるうえで避けられないものですが、運転方法や時間帯に注意することである程度抑制できるでしょう。

作業員の声

工事現場では、安全確保のために作業員同士が大きな掛け声を出し合い、車両の誘導や作業の合図を行うケースがあります。これは事故を防ぐために必要な行動ですが、周囲の人々からすると「うるさい」と感じられて、騒音クレームの原因になる場合もあります。

掛け声は現場における安全文化の一部であり必要なものですが、住民への影響を理解しておくことが大切です。必要な声と不要な声を区別するなどの工夫も必要でしょう。

工事現場の騒音対策

工事現場で発生する騒音は、近隣住民にとって大きな負担となりクレームやトラブルの原因にもなるため、現場では騒音対策をする必要があります。法律で定められた規制を守ることはもちろん、現場独自の工夫を取り入れることで、より効果的に騒音を抑えられるでしょう。

ここでは、工事現場の騒音対策を7つ解説します。

規制されている時間に作業をしない

工事における騒音対策として、作業は法律で認められた時間内に行いましょう。夜間や早朝の作業は住民の安眠を妨げ、強いストレスの原因となります。特定建設作業では作業可能な時間帯が法律で制限されており、工事を早く進めたいがために無理をして長時間作業を行うと、罰則を受ける可能性もあります。

原則として朝から夕方の時間帯に作業を行い、日曜や休日などは休工するなど、時間管理の徹底が重要です。

建設機械の操作を丁寧に行う

日常的にできる有効な対策の一つが、建設機械を慎重に操作することです。重機は少しの不注意で大きな音を出すため、常に集中力が求められます。長期の作業では注意力が落ちやすいため、朝礼や掲示物で意識を高めるとよいでしょう。

また、土砂を積む際に落下の高さを抑えたり、重機の移動を最小限にしたりする工夫も騒音軽減につながります。

建設機械の動きを最小限にとどめる

重機は稼働するだけで大きな音や振動を発生させるため、その動きをできるだけ少なくすることが効果的です。

たとえば、現場内で重機が最短ルートを通れるよう動線を工夫したり、作業の手順を整理して無駄な移動を減らしたりする方法があります。一見小さな改善に見えますが、これらの積み重ねで騒音や振動の減少につながるでしょう。

建設機械のアタッチメントを変更する

重機に取り付けるアタッチメントの種類によっても、発生する騒音は大きく変わります。特に金属製のアタッチメントで金属資材を扱うと衝突音が響きやすく、長時間続くと住民にとって大きなストレスとなります。

その対策として有効なのが、ゴム製や防音仕様のアタッチメントに交換することです。これにより衝突音を抑え、騒音を軽減できるでしょう。

大型車両は徐行運転にする

資材や廃材を運搬する大型車両は、移動そのものが大きな音を出します。

現場内では時速10km以下に制限速度を設けているケースも珍しくありません。場内の速度を抑えるだけで、タイヤやエンジン音による騒音や振動は大幅に減少するでしょう。

また、車両を使用しないときにはエンジンを停止することで、余計な音や排ガスを防ぐことも可能です。

こうした小さな積み重ねが、住民からの信頼を得るための大きな一歩につながります。

防音シートを設置する

住宅街や市街地では、防音シートやパネルの設置が効果的です。

足場を覆ったり地面にクッション材を敷いたりすることでも音の拡散を防げます。防音シートは安価で設置しやすく、「防音」と表示されたものは住民への配慮も示せます。パネル型は仮設壁のように使えるため、道路工事など狭い場所でも活用可能です。

現場環境に合わせた素材を選び、騒音対策を徹底しましょう。

騒音レベルを可視化する

騒音を抑えるためには、現場で実際にどれくらいの音が出ているのかを把握することが大切です。そのため、騒音計を設置してリアルタイムで測定することが有効です。

基準値を超えた場合にはすぐに改善策を講じることができ、結果的にトラブル防止につながるでしょう。また、測定結果を作業員に共有することで、日々の作業を慎重に行う意識付けにも役立ちます。

数字で示すことで対策の効果も確認できるため、現場管理の重要なツールといえるでしょう。

まとめ

工事現場で発生する騒音は、重機の稼働、解体作業、大型車両の出入りなど避けられない要素が多く含まれています。しかし、規制で定められた時間を守ることや、防音シートの設置、重機操作の工夫などを徹底すれば、周囲への影響を最小限に抑えられるでしょう。

騒音規制法や振動規制法に基づいた適切な管理は、住民の生活環境を守るだけでなく、事業者にとっても信頼を築き工事を円滑に進めるうえで欠かせない取り組みです。

日々の小さな配慮の積み重ねが、大きなトラブル防止につながるでしょう。

> 労災センター通信 一覧ページへ

問い合わせはこちら

一人親方労災保険についての
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

050-3786-1525

[受付時間] 平日9時~18時 (土日祝・年末年始除く)

一人親方労災保険特別加入のお申し込みはこちら

お申し込みの流れはこちらをご覧ください。

一人親方労災保険特別加入手続きの当団体対象地域

関東
東京・千葉・神奈川・埼玉・茨城・栃木・群馬・静岡
関西
大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀・三重・鳥取・岡山・徳島・香川
中部
長野・新潟・富山・山梨・岐阜・愛知
九州
福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島
東北
宮城・岩手・秋田・山形・福島
沖縄
沖縄