一人親方労災保険の「労災センター通信」

適応障害は労災として認められる?認定条件や手続き、補償内容を解説

職場の環境や業務の負担が続き、心身の調子を崩してしまう方は少なくありません。

なかには「適応障害と診断されたけれど、これは労災になるのだろうか?」と不安を抱えている方もいるでしょう。

精神疾患の労災は、けがとは違って判断が難しく、労災と認定されるための基準に分かりにくい点があるためです。

そこで本記事では、適応障害が労災認定される条件や申請の進め方、認められなかった場合の対処法、受けられる補償について解説します。

適応障害が労災認定されるのかどうかが気になる方は、ぜひ参考にしてください。

適応障害

適応障害は労災になる?

仕事が原因で適応障害が発症したと判断される場合、労災として扱われる可能性があります。

労災は本来、けがや病気をしたときに労働者を守る制度ですが、近年は職場で受けた強いストレスによる精神的な不調も対象に含まれています。

長時間労働の継続やパワハラの被害、急に責任の重い業務を任されるといった状況で強い負荷が生じ、結果として心のバランスを崩す例も少なくありません。

ただし、仕事が原因であることを明確に示せるかどうかが重要です。

私生活の問題が主な要因となっている場合や、業務との関連が確認できない場合は、労災として認められません。

適応障害が労災認定される3つの条件

労災認定の基準
適応障害が労災と判断されるには、厚生労働省が示す3つの条件をすべて満たす必要があります。

どのような条件なのか、1つずつ見ていきましょう。

①認定基準の対象となる精神障害を発病している

労災として認められるには、適応障害を含む精神障害の発症が医療機関で確認されている必要があります。

医師による正式な診断は欠かせない条件であり、自己判断のみでは認定の対象になりません。

診断書には、病名だけでなく症状が現れた時期やその後の状態の変化などが記載され、審査を行う際の重要な資料となります。

また、業務との関連性について医師が可能な範囲で触れていると、因果関係を説明するうえで有利に働くケースもあるでしょう。

ただし、認知症や薬物依存など、一部の疾患は労災の対象外です。

②適応障害発病前の約6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷があった

2つ目の条件は、発症前のおおよそ6ヶ月の間に、仕事が原因で強いストレスを受けていたと客観的に確認できることです。

厚生労働省は心理的負荷の強さを評価するために、業務内容、職場環境、人間関係などの具体的な基準を示していて、下のようなケースは強い負荷として評価されやすい傾向にあります。

  • 1ヶ月あたりの残業が著しく多かった
  • 上司からの継続的な叱責やパワハラがあった
  • 重大なトラブルへの対応を1人で任された
  • 異動直後に過大な責任を負わされた
  • 顧客からのクレーム処理が続いた

こうした出来事がどの程度の頻度で、どれほど継続していたか、その実態を確認できることが重要です。

労働基準監督署は、これらの要素を総合的に判断し、業務と発症の関連性を評価します。

③業務以外の要因により発病したとは考えにくい

適応障害の主な原因が仕事によるものだと判断できると、労災として認められる可能性があるでしょう。

労災はあくまで業務に起因する不調を補償する制度です。

私生活での深刻なトラブルや経済的問題、家族の病気などの大きなストレス要因があると、業務との因果関係が認められない場合もあります。

例えば、発症直前の離婚や親族の死別や、持病や依存症による精神的な落ち込みが原因と考えられる場合は、認められにくいでしょう。

ただし、私生活にストレスがあった場合でも、仕事上の負荷が大きく、症状の悪化や発症に直接つながったと判断されれば、労災として扱われる可能性はあります。

重要なのは、業務による影響がどれほど強かったかを、客観的な資料や医師の意見をもとに説明できるかどうかという点です。

適応障害の労災認定を受けるまでの手続き方法

労災認定の手続き方法
適応障害の労災認定を受けるためには、決められた手順に沿って申請を進める必要があります。

労災申請は、診断を受けることから始まり、原因の確認、書類の準備、提出、調査という順番で進みます。

本章では、申請に必要なステップをまとめました。

医療機関で適応障害の診断を受ける

労災申請を行うためには、まず精神科や心療内科を受診し、医師から正式に適応障害と診断される必要があります。

診断がなければ申請そのものができません。

受診時には、どのような業務負担があったのか、症状はいつから続いているのかなどを具体的に説明しましょう。

具体的であればあるほど、医師が状況を理解しやすくなり、診断書の内容もより正確になります。

診断書には、病名のほか症状の経過や発症時期、治療方針などが記載されます。

適応障害の原因が仕事である証拠を集める

次に、仕事が原因で適応障害になったことを説明できる証拠を集めましょう。

例えば、残業時間がわかる勤務記録、パワハラ発言の録音、部署異動後の業務負担の増加が示された資料などが有効です。

タイムカード、シフト表、メール、チャット、業務報告書など、客観的な記録は特に重視されやすい傾向にあります。

また、体調が悪化した時期や症状の変化を自分で日々メモしておくことも説得力につながります。

ハラスメントがあった場合は日時や内容を詳しく記録し、可能であれば第三者の証言も準備するとよいでしょう。

労災申請に必要な書類を準備する

申請に使う書類にはいくつか種類があり、目的に応じて様式が変わります。

医療費を請求する場合は「療養補償給付請求書」、休んだ期間の補償を受けたい場合は「休業補償給付請求書」など、状況に合わせて書類を選びましょう。

必要な書類は、厚生労働省のサイトや労働基準監督署で入手できます。

書類には、本人の情報や勤務状況、発症につながった業務内容などを記載します。

不備があると審査が進まないため、正確に記入することが重要です。

また、書類の一部には会社の証明欄もありますが、協力が得られない場合でも申請自体は本人だけで進められます。

労働基準監督署へ提出する

書類が準備できたら、勤務先を管轄する労働基準監督署に提出しましょう。

提出方法には、持参、郵送、一部自治体ではオンライン申請が可能な場合もあります。

提出する資料には診断書、証拠資料、本人による説明文書などが含まれます。

労働基準監督署の調査を受ける

申請が受理されると、労働基準監督署が事実確認の調査を行います。

調査では、業務によるストレスの程度や発症までの経緯、私生活の要因の有無などが細かく確認されます。

本人への聞き取りのほか、勤務先や診断した医師への確認が行われるケースも少なくありません。

適応障害のような精神疾患のケースでは、認定までに数ヶ月以上かかる場合もあります。

適応障害で労災認定されたときに受けられる補償

適応障害が仕事によって引き起こされたと認定されれば、労災保険からさまざまな補償を受けられます。

本章では、受けられる補償を3つ見ていきましょう。

療養補償給付

治療が必要な場合に受けられるのが「療養補償給付」です。

労災に認定されると、診察料や薬代、検査費用など、治療に関わる費用が原則として全額補償され、医師が必要と判断した精神療法なども対象です。

労災指定医療機関を利用した場合は窓口で治療費を支払う必要はなく、指定外病院の場合は自分で支払い、後から請求することとなります。

休業補償給付

適応障害によって働けない状態が続き、給与が支払われない期間があるときは「休業補償給付」が利用できます。

給付は休業4日目から始まり、1日あたり給付基礎日額の60%が支給されます。

さらに、特別支給金として20%が加算されるため、実質的には収入の80%が補償される仕組みです。

精神疾患による休業は長期化することも多いため、この補償は生活を維持するうえで大きな助けとなるでしょう。

【関連記事】

  • 2.労災 休業補償 待機期間
  • 2.労災保険 特別支給金

障害補償給付

治療を続けても症状が改善せず、日常生活や仕事に影響が残った場合は「障害補償給付」の対象です。

障害の程度に応じて1級から14級までに区分され、重い等級では年金形式、軽い場合は一時金として給付が行われます。

気分障害、記憶力の低下、強い不安症状などで働き方に制限が生じた場合に、障害等級の認められる可能性があるでしょう。

給付額は等級によって異なり、日額の一定日数分が支給されます。

適応障害が労災認定されなかったときは審査請求ができる

労災保険の審査請求
申請内容によっては、意に相違して適応障害が労災認定されないケースもあり、対策が求められます。

労働基準監督署の判断に納得できない場合は、「審査請求」という制度を使って再度の判断を求めることが可能です。

審査請求は、労働者災害補償保険審査官に対して行い、決定を知った日から3ヶ月以内に申し立てる必要があります。

再審査では、最初の審査で提出した資料に加えて新たな証拠や状況説明も提出できるため、認定される可能性が高くなるかもしれません。

審査請求でも認められなかった場合は、労働保険審査会に申し立てる再審査請求を求めることも可能です。

審査請求や再審査請求をしても労災認定されなかったときは、傷病手当金を受け取る方向に変えるとよいでしょう。

傷病手当金は、健康保険に加入している場合に受け取れるお金です。

ただし、一人親方の場合は健康保険ではなく国民健康保険加入が一般的なので、傷病手当金は受け取れません。

まとめ

適応障害が労災として認められるかどうかは、仕事による強いストレスがあったか、医師の診断はあるか、私生活の影響ではないかなど、複数の条件を総合的に判断して決まります。

認定されれば、治療費の補償や休業中の収入サポート、障害が残った場合の給付など、症状に応じた補償を受けられます。

一方で、認定に至らなかった場合でも、審査請求によって再検討を求めることが可能です。

労災制度は、手続きを正しく進めれば、治療に必要な環境を整える助けになります。

つらい状況を一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に早めに相談しましょう。

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