「外国人労働者を雇用すると補助金を受け取れるのか」「どのような制度を利用できるのか」と迷う方もいるでしょう。
結論として、外国人を雇用しただけで一律に受け取れる補助金・助成金はなく、利用できる制度は雇用条件や在留資格、取組内容によって異なります。
本記事では、補助金と助成金の違いを整理したうえで、外国人雇用で利用を検討できる主な助成金、在留資格による違い、申請前の注意点、建設業で確認したい事項を解説します。
外国人労働者を雇用している事業主や、これから雇用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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外国人労働者に関する「補助金」と「助成金」の違い
「補助金」と「助成金」は、どちらも事業者を支援する制度ですが、対象や支給要件、申請方法などは制度ごとに異なります。
一般的に、助成金は一定の支給要件を満たしたうえで申請する制度が多く、補助金は公募期間が設けられ、審査や採択を経て支給される制度が多くあります。
ただし、名称だけで明確に区別できるわけではないため、利用する制度ごとの確認が必要です。
外国人雇用に関する国の主要な支援制度は、厚生労働省の「助成金」が中心です。
一方、自治体によっては、外国人労働者の受入れや就労環境の整備などを対象とした補助金を実施している場合があります。
いずれも外国人を雇用しただけで一律に支給されるものではないため、自社の状況に合う制度と要件を把握しましょう。
外国人雇用で利用できる主な助成金
外国人雇用で利用できる助成金は、目的や雇用形態、在留資格によって候補が異なります。
各制度が何を支援し、どのような場合に利用を検討できるのかを把握したうえで、自社に合う制度を選ぶことが大切です。
主な4制度は、下表のとおりです。
| 制度 | 外国人との関係 | 主な目的 | 主な助成内容 | 事前手続き・確認の要点 |
|---|---|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 外国人雇用に直接対応 | 就労環境整備・定着 | 1制度20万円、上限80万円 | 計画開始日の6か月前から1か月前までに計画書を提出 |
| キャリアアップ助成金 | 外国人専用ではない | 正社員化・処遇改善 | 正社員化コース:中小企業の有期雇用から正社員への転換40万円、重点支援対象者80万円など | 原則、取組前日までに計画を提出 |
| 人材開発支援助成金 | 外国人専用ではない | 業務に必要な教育訓練 | 訓練経費・賃金の一部 | 利用するコースの計画届・事前手続きを確認 |
| トライアル雇用助成金 | 外国人専用ではない | 対象求職者等の試行雇用 | 原則最大4万円/月、最長3か月 | 紹介・雇入れ要件を事前確認 |
対象要件や申請時期は制度・コースによって異なるため、利用時は最新の情報を確認してください。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、原則として雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用し、就労環境の整備に取り組む事業主を対象とする制度です。
2026年度の助成額は、1制度の導入につき20万円、上限80万円です。
雇用労務責任者の選任や就業規則等の多言語化に加え、苦情・相談体制の整備など、所定の措置を新たに実施する必要があります。
また、助成金を受給するには、原則として外国人労働者の離職率が15%以下であることなど、所定の要件を満たさなくてはなりません。
なお、インターネット上では「外国人を雇うと72万円もらえる」といった情報も見られますが、72万円は外国人1人の雇用に対して支給される金額ではありません。
過去の同コースでは、生産性要件を満たした場合に上限72万円となる仕組みがありましたが、現在の支給額とは異なります。
通訳・翻訳費や社内マニュアル・標識類の多言語化にかかる費用などは、要件を満たせば助成対象となります。
計画書は取組開始前に提出する必要があるため、契約や支払いを進める前に対象となる措置と提出時期を確認してください。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は外国人専用ではなく、有期雇用労働者などの正社員化や処遇改善を支援する制度です。
外国人労働者については、特に正社員化コースを利用する場合、在留資格によって対象可否が異なります。
技能実習生と特定技能1号は、正社員化コースの対象外です。
ただし、キャリアアップ助成金そのものを利用できないわけではなく、処遇改善に関するコースは、それぞれの要件を満たせば対象となる場合があります。
正社員化コースの在留資格別の扱いは、下表のとおりです。
| 在留区分 | 正社員化コース | 注意点 |
|---|---|---|
| 技能実習生 | 対象外 | 処遇改善に関するコースは要件次第で対象 |
| 特定技能1号 | 対象外 | 処遇改善に関するコースは要件次第で対象 |
| 特定技能2号 | 要件次第で対象 | 雇用期間・賃金・就業規則等も確認 |
特定技能2号など、在留資格上は正社員化コースの対象となる場合でも、それだけで助成を受けられるわけではありません。
賃金や就業規則など、コースごとに定められた要件もあわせて確認する必要があります。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金も外国人専用の制度ではありません。
雇用する外国人労働者に、職務上必要な知識や技能を習得させる場合に利用を検討でき、対象となる訓練を実施すると、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
また、建設業では、建設労働者技能実習コースも設けられています。
技能検定の事前講習など、建設労働者の技能向上に関する訓練で利用を検討できるため、実施前に対象となる訓練や必要な手続きを把握しておきましょう。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、安定した職業に就くことが難しい求職者などを一定期間試行雇用する事業主を支援する制度です。
外国人専用ではないため、外国人であっても就労可能な在留資格等を有し、対象労働者や雇入れに関する要件を満たす必要があります。
また、建設業の中小事業主が35歳未満の若年者または女性を建設労働者として試行雇用する場合は、トライアル雇用助成金に上乗せして支給される若年・女性建設労働者トライアルコースを利用できる場合もあります。
助成金を利用する際は、外国人本人が在留資格の範囲内で就労できることと、助成金の対象要件を分けて判断することが大切です。
外国人雇用の助成金を申請する前に確認したいポイント
助成金は、制度の対象に該当するだけで受給できるものではありません。
計画や申請の時期、雇用に関する手続き、建設分野固有の受入れ要件を分けて確認することが重要です。
計画提出前の契約・支払いに注意する
雇用関係助成金には、取組を始める前に計画の提出が必要な制度があります。
助成金を利用する予定がある場合は、契約や支払いを進める前に、対象制度の提出期限を確認しましょう。
外国人労働者就労環境整備助成コースでは、計画提出前に対象措置の業務を外部機関などへ委託した場合や、対象となる費用の一部または全部を支払った場合は支給対象になりません。
就業規則や社内マニュアルの多言語化などを検討している場合も、発注や支払いの時期に注意が必要です。
雇用保険や届出などの支給要件を確認する
助成金の対象可否は、外国人の在留資格だけでは決まりません。
雇用保険の適用状況や外国人雇用状況の届出など、雇用にともなう手続きも確認する必要があります。
さらに、制度ごとに離職率や賃金、就業規則などの支給要件が定められています。
労働保険料の滞納など、事業主側の状況が支給判断に関係する場合もあるため、在留資格だけで利用できると判断しないようにしてください。
建設分野の特定技能受入れ要件と助成金の要件を分けて確認する
建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、助成金の申請とは別に、建設特定技能受入計画の認定など、建設分野固有の要件を満たす必要があります。
特定技能制度上の受入れ要件を満たしていても、雇用関係助成金を自動的に受給できるわけではありません。
受入れ制度と助成金では求められる要件が異なるため、両者を分けて考える必要があります。
契約や取組を始める前に、次の項目を整理しておきましょう。
- 計画提出期限:利用する制度の期限内に計画を提出できるか
- 外部委託・支払い:計画提出前に対象措置の委託や支払いをしていないか
- 雇用保険:対象労働者や事業主が必要な要件を満たしているか
- 外国人雇用状況の届出:対象外国人について必要な届出を済ませているか
- 支給要件:離職率、賃金、就業規則、労働保険料などを確認したか
- 建設分野の特定技能:受入れ要件と助成金要件を別々に確認したか
未確認の項目がある場合は、契約・支払い・取組開始前に最新の要件を確認してください。
関連記事:建設業で外国人労働者を受け入れるには?必要な在留資格や条件を解説
外国人従業員と一人親方では利用する制度が異なる
雇用される外国人労働者向けの雇用関係助成金と、独立して請負で働く一人親方が利用する労災保険の特別加入は別の制度です。
外国人が一人親方として働く場合は、在留資格や就労条件を確認したうえで、労災保険の特別加入についても確認しなければなりません。
「一人親方団体労災センター」は、建設業などで働く一人親方の労災保険特別加入をサポートする団体で、加入要件を満たす外国籍の一人親方にも対応しています。
なお、外国籍の方は、在留資格や就労制限によって加入できない場合があります。
元請から加入証明書の提出を求められている場合や、急ぎで現場に入る必要がある場合は、最短翌日からの加入や加入証明書の即日発行が可能です。
通常加入の組合費は月々500円で、労災事故が起きた際の申請書類作成など、加入後のサポートにも対応しています。
短期加入にも対応しているため、期間が限られた現場で働く場合にも利用できます。
加入できるか分からない場合や必要書類について確認したい場合は、お気軽に一人親方団体労災センターまでご相談ください。
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関連記事:
外国人の在留カードとは?取得方法や各種手続きについて解説
一人親方は従業員を雇える?雇用する際に必要な手続きを解説
労災特別加入の証明書を発行する方法は?申請の流れと必要な書類を解説
外国人雇用の助成金・補助金に関するよくある質問
本章では、外国人雇用の助成金・補助金に関するよくある質問とその回答を2つご紹介します。
外国人のアルバイト・パートでも助成金の対象になる?
外国人のアルバイト・パートでも、助成金の対象になる場合がありますが、対象となるかどうかは助成金の種類や在留資格、雇用条件によって異なります。
例えば、キャリアアップ助成金には短時間労働者などを対象とするコースがあるため、在留資格や雇用保険の加入状況、利用するコースごとの要件を確認してください。
自治体の外国人労働者向け補助金はどこで確認できる?
自治体の補助金は全国共通ではなく、地域や年度によって対象や補助額、募集期間が異なります。
例えば東京都では、2026年度に中小企業の外国人従業員に対する日本語教育などを支援する制度が実施されています。
利用を検討する場合は、事業所所在地の都道府県・市区町村の公式サイトで最新情報を確認しましょう。
外国人雇用の助成金は最新の要件を確認して活用しよう
外国人雇用で利用できる支援制度には、国の助成金や自治体の補助金などがあります。
国の主要な雇用関係助成金は、制度ごとに対象者や支給要件、申請時期が異なるため、在留資格だけで判断せず、雇用保険や計画提出の時期まで確認することが大切です。
また、制度は改正される場合があります。
過去の記事に記載された金額や条件をそのまま参考にせず、申請時点の最新情報を確認してください。
外国人が一人親方として働く場合は、雇用関係助成金とは制度が異なるため、労災保険の特別加入についても必要な手続きを把握しておきましょう。
