一人親方労災保険の「労災センター通信」

鳶職で独立するには?失敗しないポイントや年収の目安を解説

 鳶職で経験を積むと、独立を考える方は少なくないでしょう。独立には「年収アップが狙える」「自由な働き方ができる」などさまざまなメリットがありますが、準備不足で失敗するケースもあるため注意が必要です。
 本記事では、鳶職で独立するには何を準備すればよいのか、重要なポイントを7つにまとめました。年収の目安や注意点も解説しますので、ぜひ最後までお読みください!
鳶の一人親方

鳶職で独立するには?

 鳶職で独立するには、個人事業主または法人化(会社設立)する方法があります。

  • 個人事業主
     開業届を税務署に提出するなど、簡単な手続きで個人事業主として独立できます。請負契約で働くことになり、利益はそのまますべて収入になるのが大きなメリットです。また働き方も自由になり、目的に合わせて仕事量を調整できるなど、広い裁量権をもって仕事ができるのも魅力です。
  • 法人化(会社設立)
     法人化(会社設立)する場合は、定款作成や会社設立登記の申請などさまざまな手続きがあり、個人事業主として独立することに比べると多くの手間がかかります。しかし、従業員を雇って事業を拡大すると大規模な工事を請け負うことも可能になり、大幅な年収アップが狙えるメリットがあります。

 法人化には、多くの手間がかかることに加えて責任も重くなるため、はじめは個人事業主として独立するのが一般的です。事業を拡大したい場合は、多くの仕事を請け負えて収入が安定してから法人化するとよいでしょう。

鳶職の独立で準備することは?失敗しない7つのポイント

 鳶職の独立で失敗しないために、事前準備は欠かせません。
 人手不足が深刻な問題となっている建設業で、鳶職で独立して仕事をもらうことは決して難しくはありません。しかし、準備不足で独立したため「思っていたより稼げない」「仕事に追われて自由な時間が取れない」など、期待していた結果が得られないケースも珍しくありません。
 ここでは、鳶職で独立する際に準備するべきことを、大きく7つのポイントに分けて解説します。

資金

 鳶職で独立するには、ある程度のまとまった資金が必要です。建設業界では、締め日から支払いまでに2ヵ月ほどのタイムラグが生じるケースが多く、その間に生じるコストを賄うだけの資金を持っていなければなりません。
 個人事業主として独立する場合は、自分と家族の生活費を最低でも2ヵ月分は確保しておきましょう。ただし、独立してすぐに高単価の案件を獲得できない場合もあるため、余裕を持った貯金額があると安心です。従業員を雇う場合は、人数分の給料を最低でも2ヵ月は支払えるだけの額を用意しなければなりません。
 独立してから利益を出してはいるものの、手元に現金がなくなってしまうケースは少なくありません。事業を続ける運転資金が不足し失敗してしまわないよう、資金繰りには細心の注意が必要です。

足場資材

 鳶職で独立すると、足場資材も自分で用意しなければなりません。
 とはいえ、独立してすぐに十分な足場資材を揃えるのは難しいでしょう。一般的に、1棟分の足場資材を揃えるのに100万円以上必要だといわれています。1棟分だけの足場資材では事業を回せないため、少なくとも20棟分の足場資材が必要になると考えられます。
 足場資材の数は、現場の規模や従業員数によって大きく異なるため、実際にどれくらい必要なのかを明確にしてから購入するとよいでしょう。それまでは、足場資材のレンタルを活用したり、資材を持たずに常用や手間請けで仕事をしたりできます。実績を積みお金が貯まったところで、足場資材の購入を検討できるでしょう。

土場

 鳶職で独立して足場資材を購入すると、保管する土場が必要になります。
 土場を借りるには、月々の賃貸料と数ヵ月分の敷金などが発生します。土地を整備したり盗難防止用の囲いを設置したりする場合は、さらに数百万円がかかるでしょう。
また土場だけでなく、事務所や従業員の駐車場が必要になるケースもあります。
 土場を確保する際は、近隣住民の迷惑にならないような場所を探すとよいでしょう。足場資材の積み込み作業などで大きな音が発生すると、近隣住民からクレームを受ける可能性があります。

車両

 鳶職で独立するには、移動や運搬用の車両も必要になります。
 大量の足場資材を確保できた場合は、運搬用のトラックを複数台用意しなければなりません。トラック購入の際は、価格だけで決めないように注意しましょう。低燃費だったり修理費がかかったりすると、長い目で見てコストが高くなる可能性があります。
 足場資材と車両の購入を同時に行うのは、資金面で難しいケースも考えられます。その場合は、先にトラックを購入して手間請けを行うとよいでしょう。それから無駄遣いを避けてお金を貯め、足場資材と土場の確保を目指せます。

資格

 鳶職人になって仕事をはじめるのに、資格は必要ありません。しかし、独立して仕事を請け負う場合は、資格取得によりスキルをアピールできます。
 鳶職で独立するために必要な資格は、以下のとおりです。

  • 玉掛け技能
     鳶職人にとって必須の資格です。クレーンなどで荷を吊る際に、ワイヤーロープを吊り荷にかける作業を「玉掛け」、外す作業を「玉外し」と呼びます。吊り上げ荷重1トン未満の場合は「玉掛け特別教育」、1トン以上の場合は「玉掛け技能講習」を受講・修了しなければなりません。
  • 足場の組立て等作業主任者技能
     ゴンドラの吊り足場を除く吊り足場・張り出し足場・高さが5m以上の構造の足場の組立て・解体・変更の際に必要な資格です。資格取得には3年以上の実務経験が必要で、各都道府県が実施する技能講習を受講することで取得できます。
  • 建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能
     高さ5m以上の鉄鋼や鉄塔の組立て・解体・変更の作業に必要な資格です。資格取得には鉄骨に関する作業経験が3年以上必要で、各都道府県が実施する技能講習を受講することで取得可能です。
  • とび技能士
     鳶作業の段取り・仮設建設物の組立てと解体・掘削・土止めなど、鳶職の仕事全般に関する技能を認定する国家資格です。3級から1級まであり、3級は誰でも受験できますが、2級は2年、1級は7年以上の実務経験が必要です。1級合格者は、独立開業の際に一流の鳶職人として自己アピールにつながります。

建設業許可

 鳶職で独立するにあたり、建設業許可を取得するかも考えなければなりません。建設業許可は、税込500万円以上の工事を請け負う際に必要です。
 一人親方として独立し、税込500万円以下の仕事を請け負う場合に建設業許可は必要ありませんが、法人化して事業を拡大したい場合は検討が必要になります。
 建設業許可を取得するために満たさなければならない主な要件は、以下のとおりです。

  • 経営業務の管理責任者の要件
     建設業に関する経営者としての経験が問われます。
  • 専任技術者の要件
     建設業に関する資格、もしくは十分な実務経験があるかが問われます。
  • 財産要件
     自己資金の額が500万円以上、または500万円以上の資金を調達する能力を有するかが問われます。

一人親方労災保険

 鳶職の独立で失敗しないポイントに、一人親方労災保険に加入することが挙げられます。
 鳶職人が独立して一人親方になったり、会社を設立して社長や役員になったりする場合、労働基準法が定める「労働者」に該当しなくなり、仕事中の災害時に労災保険が適用されなくなるため注意が必要です。
 労災保険が適用されないと、ケガや病気の治療は全額負担となり、治療のために仕事ができない期間の補償もありません。
 しかし、一人親方の場合は一人親方労災保険に加入することで、労働者と同様に労災保険の手厚い補償が受けられるようになります。一人親方労災保険は任意加入で、特別加入団体をとおして手続きを行います。
 一人親方労災保険についての詳しい情報は、「一人親方団体労災センター」までお気軽にご相談ください。

鳶職で独立すると儲かる?年収の目安と注意点

一人親方の鳶の平均年収
 鳶職で独立するメリットのひとつに、年収アップを狙えることが挙げられます。では、実際に独立後の収入はどうなるのでしょうか。
 ここでは、独立後の年収の目安と注意点をまとめます。

独立後の年収の目安

 鳶職の平均年収は約400万円だといわれています。
 独立すると会社に必要経費を引かれないため、売上はそのまま収入として入ってきます。例えば、常用で一次下請け業者に仕事をもらうと、平均的な常用単価は17,000円ほどです。月に25日間仕事をしたとすると、月収は42万5,000円、年収にすると510万円になります。
 会社を設立して従業員を雇うと、対応可能な件数も増え、売上に応じて自分の年収アップも可能です。鳶職で独立して会社を経営する方の中には、年収1,000万円を超えるケースもあります。

【注意点】年収は自分の頑張り次第

 鳶職で独立することで年収アップが狙えるとはいえ、成功するかどうかは自分の頑張り次第であるため注意が必要です。
 独立後に安定した収入を得るには、勤勉さが必要不可欠です。独立すると仕事の進め方を自由に決められるのがメリットですが、サボり癖があり納期に間に合わないなど問題が生じると、信頼関係を損ないその後の仕事にも影響しかねないでしょう。また営業をサボっていると、「次の現場がまだ決まっていない」という状況が生じ、仕事がないため収入は得られません。
 独立してから、お金の使い方で失敗する方も少なくないため注意が必要です。個人事業主として独立する場合、総売り上げから経費や税金を差し引いた額が自由に使えるお金ですが、売上を自分の給料のように使ってしまうケースもあるようです。また会社を設立した方の中には、会社のお金と自分のお金の区別がつかずに出費を繰り返し、「従業員へ給料が支払えない」などの状況に陥る場合もあります。

まとめ

 鳶職で独立する際に、失敗しない7つのポイントをまとめました。
 独立後は諸経費や従業員の給料などを支払わなければならず、資金繰りに苦労するケースは珍しくありません。そこで、独立前に余裕を持った額の資金を貯めておく必要があります。事業拡大を目指す場合は、足場資材・土場・車両の確保や、資格や建設業許可の取得も考慮に入れなければなりません。
 また、高所作業をメインに行う鳶職は、危険と隣り合わせの職業でもあります。独立すると労災保険の対象から外れるため、任意の一人親方労災保険に加入しておくと安心です。

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