一人親方として働くと、自由度が高い一方で、健康面や事故のリスクにも自分で備えなければなりません。
特に、ケガや病気をした場合に「医療費は経費になるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
また、日々の作業が危険を伴うことから、保険や補償の重要性も見過ごせません。
本記事では、一人親方の医療費は経費になるのか、知っておきたい控除や制度、さらに万が一に備えるべき保険などを解説します。
医療費は経費になるのか気になっている一人親方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
一人親方は医療費を経費にできる?
一人親方は医療費を経費にできません。
なぜなら、診察費や薬代などの医療費は、個人の健康管理のためにかかるものであり、事業の直接的な経費とは認められないからです。
経費として認められるのは、事業を行う上で必要な支出に限られ、たとえば現場までの交通費や備品購入費などが該当します。
一方で、自分自身の通院や治療費などは、事業とは切り離された支出とみなされるため、経費計上は原則できません。
医療費がかかったときに一人親方が利用できる控除制度
一人親方は医療費を経費にはできませんが、一定額を超えた場合に使える控除や制度があります。
ここでは、一人親方が利用できる控除や制度を解説します。
医療費控除
医療費控除は、一人親方が支払った医療費が一定額を超えたときに、税金の負担を減らせる制度です。
1年間に支払った医療費が10万円を超えると、確定申告で所得から差し引けます。
自分自身だけでなく、生計をともにする家族の医療費も合算できるのが特徴です。
控除額の計算方法は「支払った医療費の総額-保険金などで補てんされた額-10万円(または所得が200万円未満は総所得の5%)」です。
医療費控除を利用すれば、所得税が減るので結果的に手取りが増えます。
ただし、すべての医療費が対象になるわけではなく、医療目的であることが条件です。
申告の際には医療費の領収書をきちんと保管し、医療費控除の明細書を作成する必要があります。
負担を減らすチャンスを逃さないよう、忘れずに手続きしましょう。
参照:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
医療費控除の対象となるもの
医療費控除は、治療や療養のために実際にかかった費用が対象で、美容目的や予防のための支出は基本的に認められません。
医療費控除の対象は以下のとおりです。
- 医師や歯科医師による診療・治療費
- 治療に必要な薬や医薬品の購入費用
- 病院や介護施設などにかかる費用
- 鍼灸師や柔道整復師などの施術費
- 看護師などによる療養上の世話の費用
- 助産師による出産介助の費用
- 介護福祉士による喀痰吸引や経管栄養の費用
- 介護保険の自己負担額
- 通院や入院に必要な交通費・医療器具代(ガソリン代や駐車場代は対象外)
- 骨髄移植のあっせん費用
- 臓器移植のあっせん費用
- 特定保健指導の自己負担額
これらの費用が10万円を超える場合は医療費控除が利用できるので、確定申告時に忘れず申請しましょう。
参照:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制は、市販薬を一定額以上購入したときに使える制度です。
健康維持のための取り組みを行った方が、年間1万2,000円を超えて薬を購入した場合に、税金の軽減が受けられます。
控除額は、1万2,000円を超えた部分の金額です(上限8万8,000円)。
以下のような取り組みをしていることが条件になります。
- 健康保険組合などが実施する健康診断(人間ドックなど)
- 市区町村の健康診査
- 予防接種(インフルエンザなど)
- 勤務先で行う定期健康診断
- 特定健康診査(メタボ検診など)や特定保健指導
- 市区町村のがん検診
セルフメディケーション税制は、通常の医療費控除と同時に使うことはできません。
薬局などでの購入が多い方には大きなメリットがあるので、条件を満たしていることをしっかり確認し、申告時のために領収書も忘れず保管しておきましょう。
参照:国税庁「セルフメディケーション税制とは」
セルフメディケーション税制の対象となるもの
セルフメディケーション税制の対象となるのは、ドラッグストアなどで購入できる特定の市販薬です。
これらは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれ、もともとは医師の処方が必要だった薬が、一般用に販売できるようになったものです。
たとえば、風邪薬、胃薬、湿布薬などが該当します。
これらの薬は、購入時のレシートやパッケージに「セルフメディケーション税制対象」のマークが表示されています。
このマークがついているものだけが控除の対象になるため、薬を購入したらレシートを必ず保管しておきましょう。
一人親方が加入しておいた方がよい保険
一人親方は、健康保険に加入する義務があります。
これは、日本が国民皆保険制度を導入しており、無保険は法律で認められていないからです。
ただし、一人親方は企業に雇われた従業員ではないため、会社員向けの社会保険には加入できません。
そのため、国民健康保険や業種別の健康保険組合など、自分に合う保険を選ぶことが大切です。
ここでは、一人親方が加入しておいた方がよい保険を解説します。
国民健康保険
国民健康保険は、一人親方をはじめとする自営業者やパート、アルバイト、農業・漁業従事者などが加入できる公的保険です。
加入の際は各市町村が窓口となり、保険料は前年の所得額に基づいて決められます。
高収入の年があると翌年の保険料が高くなるので、納付に備えて余裕を持った資金管理が必要です。
国民健康保険の大きなメリットは、高額療養費制度がある点です。
医療費が高額になっても自己負担の上限額を超えた分は戻ってくる仕組みなので、万が一のときも安心でしょう。
ただし、業務中のケガや病気は給付の対象外なので、別の補償を検討するのも重要です。
参照:厚生労働省「国民健康保険制度」
健康保険組合
健康保険組合は、職業や地域ごとに作られている保険制度で、特定の業種に従事している方が加入できる仕組みです。
たとえば、建設業界には全国建設工事業国民健康保険組合(建設国保)があり、大工やとび職、左官業など、建設に携わる方が利用しています。
国民健康保険とは違い、保険料が所得に連動しない場合が多く、年齢や家族構成などによって決められます。
場合によっては国民健康保険よりも保険料が抑えられ、補償内容も充実している場合があるため、選択肢として検討する価値があるでしょう。
建設国保以外にも健康保険組合はあるので、加入条件や保険料をよく確認し、自分に合った保険を選びましょう。
労災保険
労災保険は、通常は会社員など雇われている方が加入する保険ですが、一人親方も「特別加入」という形で加入できます。
これは、危険な作業が多い一人親方が、事故や病気で働けなくなったときのリスクをカバーするための制度です。
特別加入すると、仕事中のケガや病気で治療が必要になった場合に保険が適用され、休業補償や遺族補償も受けられます。
現場作業が多い一人親方にとって、事故は常に身近なリスクなので、この保険は重要です。
加入は任意ですが、自分自身と家族を守るためにも、加入することをおすすめします。
一人親方が労災保険へ特別加入するメリット
仕事中や通勤中のケガや病気のリスクがある一人親方にとって、労災保険の特別加入は大きな安心材料になります。
ここでは、加入することで得られるメリットを解説します。
ケガや病気のときに補償が受けられる
一人親方が労災保険に加入するメリットは、仕事中や通勤中のケガや病気に対して手厚い補償がある点です。
たとえば、現場でケガをしてしまった場合、病院での治療費はすべて保険でまかなわれ、自己負担はありません。
また、ケガや病気で一定期間働けなくなったときには、給付基礎日額に応じた休業補償が支払われます。
さらに、障害が残った場合には障害補償、万が一命を落とした場合には遺族補償が家族に支給されます。
こうした補償があることで、事業が止まっても生活への影響を最小限に抑えられるのです。
ただし、プライベートでの事故や病気は対象外なので、その点は理解しておく必要があります。
仕事の幅が広がり収入アップする可能性がある
労災保険に加入していると、受注できる仕事の範囲が広がる可能性があります。
一人親方は、さまざまな現場で作業をすることになりますが、現場によっては安全対策が厳しく、労災保険の加入が条件となるケースが少なくありません。
加入していない場合は、せっかくの高単価な案件を逃してしまうかもしれません。
一方、加入していれば労災保険の番号を提出できるため、そうした現場にも参加でき、収入アップのチャンスが広がります。
保険に入ることで、新たな仕事の門戸が開かれるのは、一人親方にとって大きなメリットでしょう。
労災隠しを防げる
一人親方が労災保険に加入すると、労災隠しのリスクを防げます。
労災隠しとは、本来は労災保険が使えるはずの事故が発生した際に、現場の都合で申請をさせてもらえないことです。
現場のスケジュールが遅れるのを避けたいという理由から、報告を避けるケースもあるといわれています。
しかし、団体を通じて労災保険に加入していると、万が一のときも団体が間に入り、正しく申請できる体制が整っています。
こうしたサポートがあることで、現場の空気に流されず、自分の権利をしっかり守れるのです。
労災保険へ加入するなら一人親方団体労災センターへ
一人親方として労災保険に加入したいと考えているなら、「一人親方団体労災センター 」がおすすめです。
一人親方団体労災センターは、分かりやすく親切なサポートをモットーにしており、全国規模で安心して加入できる体制が整っています。
特に「すぐに加入したい」という方には、振込確認後、最短で翌日から加入が可能というスピード対応が魅力です。
電子申請なので手続きもスムーズで、忙しい一人親方にとって負担が少なくて済みます。
また、組合費は月々500円と低コストでしっかり補償が受けられるのも大きなポイントです。
労災保険にまだ加入していない方、これから加入を考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
一人親方は、個人で働く自由がある反面、万が一のリスクにも自分で備えなければなりません。
医療費は経費として計上できませんが、医療費控除やセルフメディケーション税制などを活用すれば、確定申告時に税金の負担を軽減できます。
高額な医療費が発生したときの経済的リスクを減らすために国民健康保険や業種別の健康保険組合への加入も検討しましょう。
加えて、現場作業が多い一人親方にとっては、労災保険への特別加入も重要です。
今後も安心して働き続けるためには、これらの制度や保険をしっかり理解し、早めに備えておくことが欠かせません。
自分と家族を守るために、必要な手続きをきちんと進めておきましょう。