ふるさと納税は、税金の控除を受けながら地域の特産品も楽しめる制度として、利用者が増えています。
一人親方のような個人事業主にとっても、ふるさと納税は大きなメリットがあります。
しかし、収入が不安定になりやすい一人親方だからこそ、寄付のタイミングや控除の上限額には注意が必要です。
本記事では、一人親方がふるさと納税をする際に知っておきたい仕組みやメリット・デメリット、控除額の計算方法、確定申告の流れまで分かりやすく解説します。
ふるさと納税について知りたい一人親方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付をすることで、税金の控除が受けられる制度です。
寄付額のうち2,000円を超える部分は所得税と住民税から差し引かれる仕組みで、控除の上限内であれば実質2,000円の負担で寄付ができます。
たとえば、3万円を寄付した場合は、2万8,000円が税金から控除されます。
この制度は、故郷だけでなく全国どの自治体にも寄付できるため、特産品の返礼や地域の取り組みに共感して寄付先を選ぶことが可能です。
また、自治体によっては寄付金の使い道を指定できるなど、社会貢献の意識を持ちながら税の優遇も受けられます。
ふるさと納税は、税金をただ納めるだけでなく、自分の意思で使い道を決められるという点で、価値のある制度といえるでしょう。
参照:総務省「ふるさと納税の概要」
一人親方がふるさと納税をするメリット
一人親方がふるさと納税をすることで得られるメリットは2つあります。
どのようなメリットがあるか解説します。
返礼品が受け取れる
一人親方がふるさと納税をするメリットは、寄付先の自治体から魅力的な返礼品を受け取れる点です。
ふるさと納税は、寄付額に応じてその地域の特産品やグルメ、日用品などを受け取れます。
特に、実質2,000円の自己負担でこれらの品を手に入れられるのは大きな魅力といえるでしょう。
返礼品の内容は自治体によって異なるため、自分の興味や必要に合わせて選べる楽しさもあります。
制度の仕組みを正しく理解し、控除の上限を超えないようにすれば、納税と同時にお得な体験もできるのです。
確定申告の手続きが比較的簡単にできる
一人親方はもともと確定申告を行う立場のため、ふるさと納税の手続きも大きな負担にはなりません。
寄付後に届く「寄附金受領証明書」をもとに、申告書の該当欄へ金額を記入するだけで、控除の申請が完了します。
最近では会計ソフトに金額を入力すれば自動で計算してくれる機能もあり、初心者でも迷いにくいでしょう。
通常の確定申告に比べて作業が大幅に増えることはなく、無理なく対応できます。
ふだんから申告作業に慣れている一人親方も、初めて確定申告をする一人親方も、比較的スムーズにふるさと納税の申告ができるでしょう。
一人親方がふるさと納税をするデメリット
メリットがある一方で、一人親方がふるさと納税をするデメリットもあります。
どのようなデメリットがあるか、見ていきましょう。
収入が安定しないので控除の上限額が変動する
ふるさと納税では、寄付した金額のうち一定額までが税金から控除されますが、その上限は年収によって変わります。
一人親方は会社員に比べ収入が毎年変動しやすいため、寄付額の目安をつかむのが難しい傾向にあります。
もし多めに寄付してしまうと、控除を超えた分は自分で負担しなければなりません。
そのため、年のはじめよりも、収入の見通しが立ちやすい年末ごろに金額を決めるのが安心です。
収入が不安定な場合は、無理のない範囲で少額から始めるとリスクを減らせるでしょう。
ワンストップ特例制度が利用できない
ふるさと納税には、確定申告をせずに控除を受けられる「ワンストップ特例制度」がありますが、一人親方はこの制度を使えません。
この制度は確定申告が不要な会社員向けの仕組みで、申請書を自治体に送るだけで手続きが完了するというメリットがあります。
しかし、一人親方は事業者として毎年確定申告を行う必要があるため、対象外なのです。
とはいえ、すでに確定申告に慣れている方であれば、寄付金の額を申告書に記入するだけなので、それほど負担は大きくないでしょう。
確定申告をしなければ控除が受けられないため、寄付後は忘れずに手続きすることが大切です。
一人親方がふるさと納税をするときの上限額は?
ふるさと納税で控除を受けられる金額には上限があり、一人親方もその目安を知っておくことが大切です。
一人親方がふるさと納税で受けられる控除額の上限は、住民税所得割額の約20%が上限の目安とされています。
住民税所得割額は、毎年5~6月頃に自治体から届く「住民税決定通知書」に記載されています。
具体的な計算方法は、「住民税所得割額×課税所得に応じた変数+2,000円」です。
住民税所得割額は、課税所得×10%で計算できます。
また、課税所得に応じた変数は、以下のとおりです。
課税所得金額 | 課税所得に応じた変数 |
195万円以下 | 23.558% |
195万円超~330万円以下 | 25.065% |
330万円超~695万円以下 | 28.743% |
695万円超~900万円以下 | 30.067% |
900万円超~1,800万円以下 | 35.519% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40.683% |
4,000万円超 | 45.397% |
課税所得が300万円の一人親方の場合、住民税所得割額30万円、変数は25.065%です。
寄付可能上限額の計算式に当てはめると、30万円×25.065%+2,000円=7万7,195円となり、この金額がふるさと納税の上限額の目安となります。
ここで算出した金額はあくまで目安です。
正確な金額は、ふるさと納税サイトのシミュレーション機能を使って確認しましょう。
一人親方がふるさと納税をしたときの控除額
ふるさと納税をするとどのくらい税金が控除されるのか、気になる方も多いでしょう。
ここでは、一人親方がふるさと納税をしたときに、いくら控除されるのか解説します。
所得税
ふるさと納税をすると、寄付額の一部が所得税から差し引かれます。
計算方法は、「(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率」です。
所得税率は所得の金額によって異なり、以下の表のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 |
1,000円~194万9000円まで | 5% |
195万円~329万9,000円まで | 10% |
330万円~694万9,000円まで | 20% |
695万円~899万9,000円まで | 23% |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% |
4,000万円以上 | 45% |
ここでは、所得400万円、所得控除100万円、課税所得300万円の一人親方が、2万円を寄付した場合を想定して計算してみましょう。
課税所得が300万のため、所得税の税率は10%です。
計算式にはてはめてみると、(2万円−2,000円)×10%=1,800円となり、所得税からは1,800円が還付されます。
また、現在の所得税には「復興特別所得税(所得税の2.1%)」が上乗せされており、実際の計算には復興特別所得税が加えられる点は頭に入れておきましょう(2037年12月31日まで)。
参照:総務省「税金の控除について」
国税庁「No.2260 所得税の税率」
住民税
住民税の控除は基本分と特例分に分かれています。
それぞれの計算式は、以下のとおりです。
- 基本分: (ふるさと納税額-2,000円)×10%
- 特例分:(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
- 特例分が住民税所得割額の2割を超える場合:(住民税所得割額)×20%
先ほどと同じように課税所得300万円の一人親方が2万円寄付した場合を想定して計算してみましょう。
- 基本分:(2万円-2,000円)×10%=1,800円
- 特例分:(2万円-2,000円)×(100%-10%-10%)=1万4,400円
- 合計:1,800円+1万4,400円=1万6,200円
この計算から、1万6,200円が翌年の住民税から差し引かれることが分かります。
これに先ほどの所得税の控除額1,800円を加えると、合計で1万8,000円の控除が受けられます。
あくまで一例なので、自分の税額に合わせて、計算シミュレーションを活用しましょう。
参照:総務省「税金の控除について」
一人親方がふるさと納税を確定申告する方法
一人親方はワンストップ特例制度を使えないため、ふるさと納税の控除を受けるには確定申告が必要です。
確定申告をしなければ、いくら寄付しても控除されません。
ここでは、ふるさと納税をした場合の確定申告の手順を解説します。
寄附金受領証明書を準備する
確定申告には、「寄附金受領証明書」が必要です。
これは寄付をした自治体から送られてくる書類です。
複数の自治体に寄付した場合は、すべての証明書をそろえる必要があります。
紙で申告する場合は、この証明書を添付します。
e-Taxを使う場合は提出不要ですが、万が一の確認に備えて5年間は保管しておきましょう。
正確に記載するためにも、申告書を作成する際は証明書を手元に用意しておくと安心です。
確定申告書 第一表の記入項目
確定申告書第一表では、「所得から差し引かれる金額」欄の中にある「寄附金控除」の欄に金額を記入しましょう。
具体的には、ふるさと納税の合計額から2,000円を引いた金額を記載します。
たとえば2万円を寄付した場合は、1万8,000円と記入します。
複数回寄付をしている場合は、すべての金額を合計して記載しなければいけません。
正しく記入することで、税金の控除が適用されます。
確定申告書 第二表の記入項目
確定申告書第二表には、ふるさと納税をした自治体の名前と寄付額を記入しましょう。
複数ある場合は「〇〇市ほか」と書き、合計金額を記載します。
また、「住民税・事業税に関する事項」の欄にも記入が必要です。
ここには2,000円を引かず、実際に寄付した合計金額を記入します。
記入ミスがあると控除が正しく適用されないことがあるため、慎重に記入しましょう。
まとめ
ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすることで、税金の控除が受けられる制度です。
自己負担2,000円で地域の特産品などの返礼品が受け取れるうえ、寄付金の使い道を自分で選べる自治体もあります。
一人親方も上限額を把握し、確定申告を正しく行えば、所得税と住民税からの控除が適用されます。
ただし収入に波がある場合は、年末に見通しを立ててから寄付額を決めるのがおすすめです。
税金をただ納めるだけでなく、地域貢献と節税を両立できるふるさと納税を、ぜひ賢く活用してみてください。