一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方が加入できる退職金とは?各制度の特徴や注意点を解説

会社員の場合は一般的に退職金を受け取れますが、一人親方にはそのような仕組みがありません。
しかし、仕事を辞めたあとの生活費を賄うために、退職金が必要な一人親方もいるでしょう。

本記事では、一人親方でも加入できる退職金制度を3つ取り上げ、それぞれの特徴・加入条件・注意点などをわかりやすく解説します。
退職金制度について詳しく知りたい一人親方は、ぜひ参考にしてください。

一人親方が加入できる退職金制度

会社員は、退職時に勤務先から退職金を受け取れるケースが一般的です。

しかし、一人親方は企業に雇われていないため、退職金を自動的にもらえる仕組みはありません。

そのため、将来の生活資金は自分自身で計画的に準備する必要があり、現役のうちから退職金制度を活用し、年金以外の収入源を確保することが重要です。

一人親方が加入できる退職金制度は3つあり、それぞれの違いを表にまとめました。

小規模企業共済 建設業退職金共済制度(建退共) iDeCo(個人型確定拠出年金)
加入対象 個人事業主や小規模企業の役員など 建設現場で働く方 20歳以上65歳未満で、公的年金に加入している方
掛金 月1,000円から7万円まで 掛金の1日あたりの上限は320円 月5,000円以上、1,000円単位
一人親方の上限は6万8,000円
受け取れる時期 廃業や死亡した場合など 建設業を辞めたときや55歳以上になったときなど 原則60歳まで引き出せない
注意点 短期解約は掛け捨てになる可能性がある 一人親方は任意組合を作らないと加入できない 60歳まで引出不可

順に、各制度の特徴を見ていきましょう。

小規模企業共済

小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営する、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。

一人親方も加入でき、老後や引退後の資金を計画的に準備できます。

次からは、加入条件や掛金について解説します。

加入できる条件

小規模企業共済に加入できるのは、個人事業主や小規模企業の役員などです。

一人親方は個人事業主に該当するため、原則として加入が可能です。

税務署へ開業届を提出し、事業所得として確定申告を行っていることが前提となります。

また、会社と雇用関係がなく、給与収入を得ていないことも条件の1つです。

さらに、固定給ではなく成果に応じた報酬で働いていることや、事業者として継続的に活動している実態が求められます。

掛金

小規模企業共済の掛金は、月1,000円から7万円までの範囲で、500円単位で自由に設定できます。

収入状況に合わせて無理なく積み立てられる点が大きなメリットです。

掛金は加入後も増額・減額が可能で、収入が多い時期は多めに、厳しい時期は少なめに調整できます。

支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、確定申告時の節税効果も高くなります。

さらに、積み立てた掛金の範囲内で、低金利の貸付制度を利用できる点も、事業を行う一人親方にとって心強い仕組みといえるでしょう。

退職金を受け取れる条件

小規模企業共済では、事業の状況や年齢など、一定の条件を満たしたときに共済金を受け取れます。

どのタイミングで受け取るかによって、受給できる共済金の種類が異なります。

共済金の種類と受け取れる条件は、表のとおりです。

種類 詳細
共済金A 個人事業の廃業した場合、死亡した場合
共済金B 65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ場合
準共済金 個人事業を法人化して、加入資格がなくなった場合
解約手当金 任意解約や機構解約など

共済金A・Bは掛金納付月数が6か月未満の場合、準共済金は掛金納付月数が12か月未満の場合だと受け取れず、掛け捨てになります。

加入から間もない時期に解約すると不利になりやすいため、長期的な利用を前提に検討したほうがよいでしょう。

建設業退職金共済制度(建退共)

建設業退職金共済制度(建退共)は、一人親方が加入できる退職金制度です。

建退共は、建設業に従事する方のために国が設けた退職金制度で、一定の基準にもとづいて退職金が支払われます。

一人親方でも、建設業界で働き続ける限り制度を継続できるため、会社員から独立した方にも向いています。

次からは、建退共への加入条件や受け取れる退職金などについてまとめました。

関連記事:建退共は一人親方でも加入可能!加入条件やメリット・掛金まで解説

加入できる条件

建退共の対象となるのは、建設現場で働く方です。

職種や役職、雇用形態は問われず、大工・左官・鳶職・配管工・電工・現場事務員など幅広い職種が含まれます。

国籍や給与形態による制限もありません。

ただし一人親方の場合、単独では加入できず、一人親方が集まって任意組合を作る、または任意組合に加入することで被共済者として認められる点に注意しましょう。

受け取れる退職金

建退共で受け取れる退職金は、掛金を納めた期間に応じて決定されます。

建退共では、掛金の1日あたりの上限が320円と定められており、共済証紙21日を1か月として月数が計算されます。

納付した掛金に加え、運用による利息分が上乗せされるため、積立期間が長いほど受取額も大きくなる仕組みです。

1日320円の掛金を掛け始めた場合の退職金は、表のとおりです。

年数(月数) 退職金額
1年(12か月) 2万4,192円
1年6か月(18か月) 4万9,728円
1年11か月(23か月) 7万8,624円
2年(24か月) 16万1,280円
3年(36か月) 24万1,920円
4年(48か月) 32万5,786円
5年(60か月) 41万4,087円
6年(72か月) 50万3,463円
7年(84か月) 60万231円
8年(96か月) 69万6,999円
9年(108か月) 79万3,767円
10年(120か月) 89万3,559円
15年(180か月) 140万9,319円
20年(240か月) 193万3,479円
25年(300か月) 247万4,439円
30年(360か月) 303万8,919円
35年(420か月) 364万1,031円
40年(480か月) 426万8,007円

加入期間が1年以上2年未満の場合は、納付した掛金額よりも少ない退職金になる点に注意が必要です。

また、実際の受取額は、証紙の貼付状況や運用状況によって変わるため、あくまで目安として考えるとよいでしょう。

退職金を受け取れる条件

一人親方が建退共の退職金を受け取るには、決められた条件を満たす必要があります。

退職金を受け取れる条件は、次のとおりです。

  • 他業種への転職や引退などで建設業を辞めた
  • 55歳以上になった
  • 病気やけがにより、建設業の仕事を続けることが難しくなった
  • 無職になった
  • 本人が死亡した(この場合は、遺族が退職金を受け取れる)

なお、退職金は条件を満たしていても自動的に支給されるわけではありません。

所定の手続きを行い、必要書類を提出することで、はじめて受給できる点に注意しましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を積み立て、自分で運用しながら老後資金を形成する私的年金制度です。

小規模企業共済や建退共とは異なり、iDeCoは年金制度として位置づけられており、老後資金の確保を目的としています。

掛金が全額所得控除になるため、節税効果の高さが大きな特徴です。

一方で、原則60歳になるまで資産を引き出せないため、途中で廃業した場合や急な出費には対応しづらい点も理解しておく必要があります。

次からは、iDeCoの加入条件や掛金について見ていきましょう。

加入できる条件

iDeCは、原則として20歳以上65歳未満で、公的年金に加入している方が対象となる制度です。

iDeCoでは、加入者がどの公的年金制度に属しているかによって、掛金の上限額などが異なります。

加入できる方は、表のとおりです。

国民年金の第1号被保険者 20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生
国民年金の第2号被保険者 会社員や公務員などの厚生年金の被保険者
国民年金の第3号被保険者 国民年金の第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者
国民年金の任意加入被保険者 国民年金に任意で加入した方

一人親方は第1号被保険者に該当するため、加入できます。

iDeCoは任意加入の制度であり、自分で申し込みを行い、掛金額や運用方法を選択します。

将来の受取額は運用状況によって変動するため、制度の特徴を理解したうえで加入を検討しましょう。

掛金

iDeCoの掛金は、月5,000円以上、1,000円単位で設定できます。

収入状況に合わせて無理なく続けられる金額を選ぶことが大切です。

一人親方の場合、国民年金第1号被保険者に該当するため、掛金の上限は月6万8,000円となっています。

掛金額は年に1回変更でき、状況に応じて増減することも可能です。

また、必要に応じて拠出を一時的に止められます。

ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せない資産であるため、生活費に影響が出ない範囲で設定し、長期的に積み立てることが大切です。

退職金制度の併用・重複加入に関する注意点

一人親方が退職金制度に加入する際、併用できるケースとできないケースがあります。

本章では、退職金制度の併用や重複加入に関する注意点を解説します。

建設業退職金共済制度と小規模企業共済は重複加入できない

建設業退職金共済制度(建退共)と小規模企業共済は、同時に利用できません。

万が一、誤って両方に加入してしまった場合は、加入資格のない制度について契約が取り消されます。

その際、納めた掛金は返還されますが、利息や上乗せ分は含まれません。

さらに、返還された掛金について、所得控除を受けている場合は、税務署で修正申告が必要となる点にも注意が必要です。

制度を選ぶ際は、自分の働き方や将来設計に合ったものを1つ選び、加入条件を十分に確認してから手続きを進めましょう。

iDeCoはほかの制度と併用できる

iDeCoは、小規模企業共済などほかの制度と併用できます。

この理由は、iDeCoが老後資金の形成を目的とした制度であり、退職金制度とは性質が異なるためです。

特に、小規模企業共済と併用することで、どちらも掛金が全額所得控除の対象となり、節税効果をさらに高められます。

両制度を組み合わせれば、安定性を重視した備えと、成長を期待できる運用を両立でき、バランスよく将来に備えられるでしょう。

まとめ

一人親方は会社員のように自動的に退職金を受け取れる仕組みがないため、将来に向けた資金準備を自分で行う必要があります。

その手段として、小規模企業共済・建設業退職金共済制度(建退共)・iDeCoといった制度を活用するとよいでしょう。

小規模企業共済は掛金の自由度と節税効果が高く、建退共は建設業向けの退職金制度です。

iDeCoは老後資金の形成に向いていますが、60歳まで引き出せない点に注意が必要です。

それぞれの特徴を理解し、早めに準備を始めることで、引退後の安心した生活につながるでしょう。

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