外国人労働者を雇用している一人親方・個人事業主の中には、「外国人従業員も年末調整が必要なのか」「海外に住む家族を扶養にするには、どのような手続きが必要なのか」と迷う方もいるでしょう。
外国人労働者の年末調整では、国籍だけで対象かどうかを判断するのではなく、所得税法上の区分や本人・親族の状況に応じて確認することが重要です。
本記事では、外国人労働者の年末調整について、対象者の判断から必要書類、国外に住む親族の扶養控除、年途中の入退社・入出国時の扱いまで、手続きを進めるうえで押さえておきたいポイントを整理します。
外国人従業員の年末調整を適切に進めるための参考にしてください。
Contents
外国人労働者の年末調整は「居住者・非居住者」の判定から始める
外国人従業員の年末調整では、国籍ではなく所得税法上の居住者と非居住者の区分が出発点です。
まず年末調整の対象となるかどうかと判定基準を整理すると、その後の書類確認や扶養控除の判断を誤りにくくなります。
居住者でも年末調整の対象要件を確認する
外国人従業員も、所得税法上の居住者で、扶養控除等申告書の提出など通常の年末調整の対象要件を満たす場合は、日本人従業員と同様に年末調整を行います。
外国籍であることだけを理由に対象外とは判断できません。
非居住者は通常の年末調整では処理せず、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)に対する課税関係を確認します。
まず居住者区分を把握し、そのうえで通常の年末調整の対象要件を確認する流れが基本です。
国籍・在留資格や「来日1年未満」だけで居住者区分を判断しない
居住者と非居住者の区分は、国籍や在留資格ではなく、国内に住所があるか、または引き続き1年以上居所があるかなどで判断します。
住所は生活の本拠を意味し、職業や滞在予定など客観的な事情も判断材料です。
来日から1年未満でも、国内で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業に就いている場合などは、国内に住所を有すると推定されることがあります。
したがって、「来日1年未満だから非居住者」と一律に扱わず、実際の居住状況や職業、滞在予定を踏まえて確認しなければなりません。
関連記事:【在留資格一覧】外国人の就労ビザは何種類?雇用状況とともに解説
外国人労働者の年末調整で使う申告書と確認ポイント
外国人専用の年末調整申告書はなく、所得税法上の居住者で年末調整の対象となる外国人従業員も、基本的に日本人従業員と同じ申告書を使用します。
ただし、国外居住親族がいる場合は、扶養控除等(異動)申告書などで確認する項目が増える点に注意が必要です。
特に「非居住者である親族」に関する欄を確認し、年末調整時には「生計を一にする事実」へその年の送金額などを記載します。
国外居住親族に関係する欄を重点的に見ることで、記入漏れや確認不足を防ぎやすくなります。
国外居住の扶養親族は年齢・所得・追加要件を確認する
国外居住の扶養親族について扶養控除を受ける場合、確認すべき条件は所得だけではありません。
2026年分では年末調整の時期によって所得要件が変わり、親族の年齢によって追加要件も異なります。
国外居住の扶養親族は年末調整の時期に応じた所得要件を確認する
2026年分の所得税では、12月1日以後に行う年末調整から扶養親族などの所得要件が変わります。
扶養親族や同一生計配偶者などの合計所得金額は62万円以下となり、給与収入のみの場合は136万円以下が目安です。
改正前はそれぞれ58万円以下、123万円以下だったため、前年の基準をそのまま使えません。
一方、2026年分であっても、最後の給与を11月30日以前に支払い、その時点で年末調整を行う場合は改正後の基準は適用されません。
この場合、改正後の基準を反映した控除などの適用を受けるには、確定申告などが必要です。
国外居住の扶養親族については、所得要件に加えて年齢区分でも条件が変わるため、年末調整の時期と親族の年齢を分けて確認しましょう。
30歳以上70歳未満の国外居住の扶養親族には追加要件がある
国外居住の扶養親族は、年齢によって追加要件が異なります。
年齢別の要件は下表のとおりです。
| 年齢区分 | 30歳以上70歳未満に固有の追加要件 | 38万円以上の支払 |
|---|---|---|
| 16歳以上30歳未満 | なし | 一律には不要 |
| 30歳以上70歳未満 | 留学、障害者、年38万円以上の生活費や教育費の支払のいずれか | 追加要件の一つ |
| 70歳以上 | なし | 一律には不要 |
30歳以上70歳未満の追加要件は国外居住の扶養親族に関するルールであり、国外居住の配偶者に対する配偶者控除などとは区別が必要です。
対象親族の年齢を先に確認しておくと、後述する必要書類を判断しやすくなります。
国外居住親族の親族関係書類・送金関係書類を確認する
国外居住親族について控除を受けるには、親族関係や送金の事実を確認できる書類が必要です。
それぞれの書類が何を証明するのかを分け、複数の親族がいる場合や書類の提出が遅れた場合にも注意しましょう。
親族関係書類は親族関係を証明し、外国語書類には和訳文を付ける
国外居住親族について控除を受ける場合、本人と対象親族との関係を証明する親族関係書類が必要です。
外国政府や外国の地方公共団体が発行した書類を使うときも、対象者との親族関係を確認できる内容でなければなりません。
書類が外国語で作成されている場合は、和訳文を添えて提出または提示します。
送金関係書類は原則として扶養対象の親族ごとに確認する
送金関係書類では、国外居住親族へ生活費や教育費を支払った事実を証明します。
扶養控除などの対象となる親族が複数いる場合は、原則として親族ごとに送金したことを示せる状態にしておかなければなりません。
家族の代表者1人へ全員分をまとめて送金しても、代表者以外の親族に支払った事実の証明にはならないため注意が必要です。
必要書類を年末調整時までに提出または提示できなければ、その時点では該当する控除を適用できません。
ただし、年末調整後に書類がそろった場合でも、源泉徴収票を作成するまでであれば、勤務先で年末調整を再計算できる場合があります。
勤務先で再計算しない場合は、本人が確定申告で控除を受けます。
国外居住親族の控除では、適用する要件によって必要書類が異なり、主な必要書類と確認内容は下表のとおりです。
| 書類 | 確認できること | 必要となる主な場面 |
|---|---|---|
| 親族関係書類 | 国外居住親族との親族関係 | 国外居住親族について扶養控除などを受ける場合 |
| 留学ビザ等書類 | 留学により国外居住となったこと | 30歳以上70歳未満の親族を「留学」の要件で扶養控除の対象とする場合 |
| 送金関係書類 | 生活費や教育費を支払った事実 | 国外居住親族について扶養控除などを受ける場合 |
| 38万円送金書類 | 年間38万円以上を支払った事実 | 30歳以上70歳未満の親族を「38万円以上の支払」の要件で扶養控除の対象とする場合 |
特に、送金関係書類と38万円送金書類は名称が似ているため、どの要件を証明する書類なのかを確認して取り違えないようにしましょう。
年途中の入社や退社、入出国では年末調整の扱いが異なる
外国人従業員が年途中に入社、退社、入出国した場合は、居住者区分や在職状況によって年末調整の扱いが変わります。
主なケースを整理すると、下表のとおりです。
| 主なケース | 年末調整の扱い・確認事項 |
|---|---|
| 年途中に入社し、年末まで勤務する | 前職で扶養控除等申告書を提出して受けた給与がある場合は、源泉徴収票で前職の給与や源泉徴収税額などを確認して年末調整へ反映する 前職分を確認できなければ年末調整は行えず、本人が確定申告で精算する |
| 年途中に退職する | 通常の年途中退職では、原則として退職した勤務先で年末調整を行わない |
| 年途中に出国して非居住者となる | 通常の年末調整の対象要件を満たす人が、海外転勤などにより年途中で非居住者となる場合は、非居住者となる時点で年末調整を行う |
| 年途中に来日して居住者となる | 居住者となった時点や扶養控除等申告書の提出状況を踏まえ、年末調整の対象となる給与を判断する |
| 年途中に出国後、同じ年に再び居住者となる | 年途中で非居住者となった後、同じ年に帰国して再び居住者となった場合は、居住者だった期間内に支払うべき給与を合計して年末調整する |
2026年に年の途中で年末調整を行う場合は、12月1日施行の税制改正との前後関係にも注意が必要です。
外国人労働者の年末調整に関するよくある質問
本章では、外国人労働者の年末調整に関するよくある質問とその回答を2つご紹介します。
非永住者と非居住者の違いは?
非永住者と非居住者は異なる区分です。
非永住者は所得税法上の居住者の一類型で、日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下の人が該当します。
一方、非居住者は国内に住所がなく、かつ、引き続き1年以上の居所もない人のことです。
令和8年分の扶養控除等申告書に外国語版はある?
国税庁は、令和8年分の扶養控除等(異動)申告書について、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フィリピノ語の仮訳を公開しています。
ほかの申告書については、各様式ページで外国語版の公開状況を確認してください。
外国人労働者の年末調整は確認順序を押さえて対応しよう
外国人従業員の年末調整では、まず居住者と非居住者を判定し、年末調整の対象となるかどうか、国外居住親族の有無、所得と年齢の要件、必要書類、年途中の異動という順で確認します。
国籍や在留資格だけで税務上の居住者区分を判断せず、国外扶養や送金についても適用条件と証明書類を分けて確認することが大切です。
在留資格や労働時間など年末調整とは別の雇用管理もあるため、それぞれの制度を区別して適切に対応しましょう。
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