一人親方労災保険の「労災センター通信」

事務所労災はいつから義務化?現場労災との違いや手続き方法を解説

事務所労災の取り扱いが見直され、建設業では現場に属さない業務に従事する労働者について、労災保険への加入が義務付けられました。
そのため、「どの業務が事務所労災に該当するのか」「実務上、どのような手続きや保険料負担が必要なのか」といった疑問を感じる人もいるでしょう。

本記事では、事務所労災の概要をはじめ、現場労災との違い・事務所労災の手続き方法・労災保険料の計算方法について解説します。
事務所労災への理解を深めたいという方は、ぜひ参考にしてください。

事務所労災とは?2025年10月の通達で加入が義務化へ

事務所労災とは、事務所・工場・資材置き場など、工事現場以外で発生した労働災害に対する保険制度のことです。
2025年10月に厚生労働省から示された通達により、建設業における取扱いが明確化されました。

建設業では、工事現場とは別に、事務所などで継続的に労働者を使用する場合に継続事業として労災保険の成立手続きが必要とされています。
従来は、事務所や資材置き場に常駐していないケースで保険関係の成立が十分に整理されていない場合もありましたが、現在は加入手続きが求められる点に注意が必要です。

建設業における事務所労災と現場労災の違い

建設業における事務所労災と現場労災の違いを表にまとめました。

項目 事務所労災 現場労災
対象作業 契約書や見積作成・銀行での手続き・資材の整理や調達・移動中の業務・除雪などの業務 建築・土木・基礎工事・屋根工事など現場で行うすべての作業
主な作業場所 事務所・自宅兼事務所・移動中の道路・取引先など 工事現場(敷地内)
保険料率 低い 高い
保険料の対象 事務所など業務に従事した時間の賃金 工事の請負金額
加入者 下請含む各事業主が個別に加入 元請負人が下請分も含めて一括加入

本章では、建設業における事務所労災と現場労災の違いについて、詳しく解説します。

事務所労災とは

事務所労災は、建設業において工事現場以外の業務に従事する労働者を対象とした労災保険の通称であり、事務所・工場・資材置き場などで業務中に負傷した場合に必要な給付を受けられる制度です。
工事現場以外で発生した災害は、現場の保険関係では取り扱えないため、継続事業として労災保険を成立させる必要があります。

工事現場以外の業務に従事する労働者を使用する事業主には、所定の加入手続きを行う義務があります。

保険料は全額事業主負担であり、国へ納付する仕組みです。
未加入のまま労災事故が発生した場合には、追徴保険料の徴収に加え、給付に要した費用の全部または一部が徴収対象となる可能性があります。

現場労災とは

現場労災とは、建設の工事現場で働く労働者が労災で負傷した際に必要な保険給付が受けられるものであり、保険組合を経由して特別加入できます。
現場で発生した労災のみが対象となるため、事務所から自宅間の移動中に労災が発生した場合にも現場労災は使えません。

建設業の労災保険は本来、工事現場ごとに労災保険料を計算する必要があり、事務処理が煩雑なため、各工事を一括して扱う仕組みがあります。
建設業の工事現場では、元請が下請の保険料も負担するケースが多いようです。

事務所労災に該当する業務の具体例

工事現場以外の業務にあたる事務所労災の事例は次の通りです。

  • 特定の工事現場とは無関係な資材置場や倉庫などの整理作業
  • 事務所での営業や経理作業
  • 工場や作業場で木材を加工した製品作り
  • 保守・メンテナンスなど

建設工事の準備や資材の片付け作業は、原因となる工事の元請事業場の労働保険で補償されます。
当日の工事現場が明確であれば、自宅から作業場所を往復する移動や通勤中の事故も対象外となるため、注意しましょう。

事務所労災で注意すべきチェックポイント

本章では、事務所労災に関して、元請と下請それぞれが確認すべきポイントについて解説します。

元請が確認すべきポイント

事務所労災において、元請は下請事業主に対して、次の内容をチェックしましょう。

<事務所労災の加入が必要な作業>

  • 事務所、倉庫、資材置き場などの事業場がある
  • 重機や工具の整理整頓、清掃、メンテナンスを行っている
  • 見積書作成のための現場確認作業がある
  • 所属事業場の修繕作業を行っている

下請が特定の工事現場に付随しない業務を行う場合、現場労災では補償対象外のため、元請として下請の労災保険加入状況を確認し、必要に応じて支援やフォローアップを行いましょう。

下請が確認すべきポイント

労働者は現場労災が適用されますが、下請工事の際は元請の現場労災が適用されます。
また、労災が発生した場所が工事現場かそれ以外かによって適用される労災が変わるため、注意しましょう。

<事務所労災と現場労災の違い>

  • 工事現場の業務中のけが → 現場労災
  • 工事現場以外の業務中のけが → 事務所労災

工事現場と工事現場以外の業務を兼務する場合は、毎月の業務日報や出勤簿などで、就業時間を分けて記録することが大切です。

建設業における事務所労災の手続きや保険料の計算方法

本章では、建設業での事務所労災の手続きや保険料の計算方法について解説します。

事務所労災の手続き方法

事務所労災の手続きの流れは、次の通りです。

  1. 労働保険の「保険関係成立届(様式第1号)」を所轄の労働基準監督署へ提出
  2. 該当年度分の労働保険料を概算保険料として計算
  3. 「概算保険料申告書」を所轄の労働基準監督署または都道府県労働局へ提出

労働保険料とは、保険関係成立日から年度末までに労働者に支払う賃金総額の見込額に保険料率を乗じて得た額です。
事務所労災に必要な書類の提出期限は、「保険関係成立届」が保険関係成立日の翌日から起算して10日以内、「概算保険料申告書」は保険関係成立日の翌日から起算して50日以内となります。

事務所労災の保険料の計算方法

事務所労災の保険料は労働者の賃金で算出し、現場労災の保険料は元請工事の請負金額で算出されます。
事務所労災は一般的な給料総額から保険料を計算する仕組みです。

保険料の算定は、特定の工事現場に付随しない業務に従事した分の賃金額を算出し、算定基礎に含めるイメージです。
出勤簿などの根拠資料を基に算出し、資料がない場合は実態から日数・時間数を推算して賃金額を算出しましょう。

年度更新と建設業の労災保険率

年度更新とは、前年度に納めた労働保険料を精算し、新しい保険年度分について概算保険料を算出して申告・納付する手続きのことです。
労災保険率とは、事業主が納付する労災保険料を算定する際に用いる割合です。
当該事業における年度内の賃金総額に労災保険率を乗じることで、労災保険料額が算出されます。

年度更新の手続き方法

労災保険料や雇用保険料は、4月または成立月から翌3月までの保険料を概算で支払い、年度終わりに確定保険料を計算して清算します。
次年度の概算保険料の申告納付を毎年繰り返して年度更新を行います。

建設業では、現場労災は請負金額総額、雇用保険は現場分と事務所分の給料総額、事務所労災は事務員の給料総額でそれぞれ計算するため、3枚の申告書と3つの労働保険番号が必要です。
毎年12月頃に準備、4月頃に申告書類が送付されるため、期限内に手続きを行いましょう。

建設業の労災保険料率

建設業の労災保険率は、工事現場以外の主たる業務の種類によって異なります。
労災保険率は、過去3年間の労災発生状況などを考慮して3年ごとに見直されますが、据え置きとなる場合もあります。

業種番号 事業の種類 労災保険率
31 水力発電施設、ずい道等新設事業 34
32 道路新設事業 11
33 舗装工事業 9
34 鉄道または軌道新設事業 9
35 建築事業(既設建築物設備工事を除く) 9.5
36 機械装置の組み立てまたは据付けの事業 6
37 その他の建設事業 15
38 既設建築物設備工事業 12

適用される労災保険率は、実際の事業内容や主たる業務によって決まるため、年度更新の際には最新の保険率を確認することが重要です。

事務所労災に関するよくある質問

事務所で働く労働者がいない場合は労災加入しなくてもよい?

事務所で働く労働者がいない場合でも労災加入が義務化されました。
事務所がなくても次の作業を行う場合や、現場作業をしない事務員を雇用する場合は事務所労災への加入が必要です。

  • 現場の準備と無関係な作業場での片付けや整理整頓作業
  • 資材置き場で道具の準備
  • 作業場の営繕作業
  • 次の現場の打合わせへ運転して移動
  • 自宅のパソコンで請求書を作成
  • 見積書作成のため取引先への現場状況確認

業務に必要な現場以外の作業は事務所労災が適用されるため、注意してください。

事務所労災が必要な理由は?

事務所労災が必要な理由は、現場とは関係ない業務での労災事故が現場労災の適用外となるためです。
例えば、工事とは関係のない事後の片付けや資材の整理中に事故が起きた場合、現場労災では補償が受けられません。
未手続中の事故として処理される可能性があるため、早めに事務所労災の手続きを行いましょう。

労災事故が発生したときはどうしたらよいですか?

労災事故が発生した場合、事業者は労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出します。
事故発生日時・場所・事故時の業務内容・災害の発生状況などの記録が必要です。

虚偽の内容を報告したり、提出を怠ったりすると、労働安全衛生法により50万円以下の罰金に処されます。
いわゆる「労災かくし」は法違反となるため、適切に対応しましょう。

労災保険特別加入は一人親方団体労災センターへ

従業員を1人でも雇う事業主は、元請や下請関係なく労災保険に加入させる義務があります。
建設現場で働く現場作業員のほか、事務員や内勤スタッフなど、働くすべての人が加入対象です。

一人親方団体労災センターでは、団体加入・下請・外注の一人親方を労災保険に加入する手続きも行っています。
労災事故時に必要な申請書類も追加費用なく作成支援しています。

まとめ

事務所労災は、2025年10月に示された通達により、作業の実態に応じて適切に労災保険を成立させることが求められています。
建設業は現場作業だけでなく、特定の現場に属さない作業も含まれるため、現場労災とあわせて事務所労災への対応が重要です。
制度の内容を正しく理解し、適切に備えましょう。

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