一人親方労災保険の「労災センター通信」

インボイス制度、一人親方はどうする?判断基準と2026年の変更点

一人親方として働くなかで、「インボイス登録は必要なのか」「売上1,000万円以下なら登録しなくてもよいのか」と迷う方もいるでしょう。
インボイス登録の要否は、一人親方だからという理由だけで決まるものではありません。
自身の消費税の課税関係に加え、主要な取引先がインボイスを必要としているかどうかも判断材料になります。

本記事では、インボイスへの登録を判断するポイントや日当・人工代との関係、2026年10月以降の経過措置、登録する場合の手続きまで解説します。
自身に必要な対応を考える際の参考にしてください。

一人親方はインボイス登録が必要?

一人親方だからといって、必ずしもインボイス登録をする必要はありません。

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」であり、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書の保存を求める制度です。適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録を受けた事業者に限られます。

消費税の納税義務とインボイス登録は別の仕組みであり、売上規模だけでなく主要な取引先との関係も踏まえて、登録の可否を判断しましょう。

インボイス登録は任意|売上1,000万円は消費税の納税義務を判断する基準の一つ

適格請求書発行事業者として登録するかどうかは、事業者が任意で選択できます。

そのため、課税売上高が1,000万円を超えたことだけを理由に、必ずインボイス登録が必要になるわけではありません。

売上1,000万円という基準は、主に消費税の納税義務を判断する際に関係します。個人事業者は基準期間や特定期間の課税売上高などによって課税事業者に該当するかを確認するため、「消費税を納める必要があるか」と「インボイスを発行するために登録するか」は分けて考えましょう。

売上1,000万円以下でも取引先によっては登録を検討する

課税売上高が1,000万円以下で免税事業者に該当する場合でも、適格請求書発行事業者への登録を選択できます。

売上だけを見て、登録の必要性を判断することはできません。

一人親方が未登録であれば、適格請求書は発行できないため、課税事業者である元請や取引先の仕入税額控除の扱いに影響します。

登録を検討したほうがよいケース・登録を急がなくてもよいケース

主要な取引先から適格請求書の発行を求められている場合や、新規の取引先がインボイス発行事業者との取引を重視している場合は、登録を検討したほうがよいでしょう。

一方、取引先がインボイスを必要としておらず、現在の取引条件にも影響がない場合は、必ずしも登録を急ぐ必要はありません。

一人親方だから、あるいは売上が1,000万円以下だからと一律に判断せず、自身の課税関係と主要な取引先の状況を踏まえて決めることが大切です。

一人親方がインボイス登録する・しないで何が変わる?

インボイス登録の有無によって、適格請求書を発行できるかだけでなく、消費税の申告・納税や事務負担、取引先への影響も変わります。

関連記事:一人親方がインボイス登録するメリットやデメリットは?登録方法も解説

登録すると適格請求書を発行できる一方、消費税の申告・納税が必要になる

適格請求書発行事業者として登録すると、登録番号などの必要事項を記載した適格請求書を発行できます。

そのため、インボイスの発行を求める元請や取引先にも対応しやすくなるでしょう。

一方、免税事業者がインボイス登録をすると課税事業者となり、課税売上高が1,000万円以下でも原則として消費税の申告・納税が必要です。

また、適格請求書を発行できるよう請求書の様式を整え、交付した適格請求書の写しを保存するなどの対応も求められます。

登録しない場合は取引先の仕入税額控除や取引条件に影響する可能性がある

インボイス登録をしなければ、適格請求書は発行できません。

そのため、課税事業者である元請や取引先では、仕入税額控除の扱いに影響し、取引条件の確認や見直しを求められる可能性があります。

ただし、未登録であることだけを理由に、必ず仕事がなくなったり取引を打ち切られたりするわけではありません。実際の影響は、取引先の課税関係や取引方針によって異なります。

インボイス制度を登録する・しない場合の主な違いを整理すると、下表のとおりです。

項目 インボイス登録あり インボイス登録なし
適格請求書の発行 できる できない
取引先の仕入税額控除 原則として適格請求書をもとに控除できる 原則として制限を受ける
免税事業者が選択した場合の消費税 課税事業者となり、申告・納税が必要 免税事業者の要件を満たしていれば、原則として納税義務は免除される
請求書・帳簿などの事務対応 適格請求書の発行や写しの保存などが必要 適格請求書発行事業者としての対応は不要
取引条件への影響 取引先がインボイスを必要とする場合に対応しやすい 取引先によっては条件の確認や見直しが必要になる可能性がある

どちらを選ぶかは、自身の消費税の課税関係や取引先の状況、登録後の事務負担を踏まえて判断しましょう。

一人親方の日当・人工代にもインボイス制度は関係する

建設業の一人親方が受け取る日当や人工代も、業務委託の対価として支払われている場合はインボイス制度と関係します。

「日当」という名称だけで判断せず、契約の実態や現在の取引条件を確認することが必要です。

業務委託の対価として受け取る日当・人工代は給与とは扱いが異なる

一人親方が業務委託契約に基づいて受け取る日当や人工代は、雇用契約に基づいて従業員へ支払われる給与とは性質が異なります。

人工代とは、建設現場などで作業員1人が1日働くことを「1人工」として算定する報酬を指すのが一般的です。

「1日2万円」のように日額で報酬が決められていても、それだけで給与に該当するわけではありません。報酬が請負契約などに基づく業務の対価なのか、雇用契約などに基づく給与なのかは、契約や働き方の実態によって判断されます。

そのため、日当や人工代という名称だけを理由に、インボイス制度と無関係だと考えるのは適切ではないでしょう。一人親方として業務委託の対価を受け取っている場合は、その取引についてインボイス対応の要否を確認する必要があります。

契約時に税込・税抜のどちらで金額を決めているか確認する

日当や人工代への影響を考える際は、現在の契約金額が税込・税抜のどちらで決められているかを確認しましょう。

インボイス登録の有無によって元請との価格交渉や支払条件が見直される可能性はありますが、日当や人工代が一律に増減するわけではありません。

取引条件は基本的に当事者間で決めるものの、インボイス未登録を理由として一方的に取引価格を引き下げるなど、取引条件の見直し方や内容によっては、独占禁止法などの問題となるおそれがあります。

登録状況だけで判断せず、現在の契約内容や元請との取り決めを確認したうえで、必要な対応を検討することが大切です。

2026年10月からインボイス制度の経過措置はどう変わる?

2026年10月以降は、インボイス未登録の免税事業者などとの取引に関する経過措置が変更されます。

未登録を続ける一人親方は、取引する元請側への影響も踏まえて今後の対応を考える必要があるでしょう。

一方、インボイス登録によって課税事業者となった個人事業者には、一定の要件を満たす場合に利用できる負担軽減措置も設けられています。

制度ごとに適用時期や要件が異なるため、未登録の場合と登録する場合の双方から確認しておくことが大切です。

2026年10月から免税事業者などとの取引に関する仕入税額控除の割合が変わる

インボイス制度では、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの課税仕入れについても、一定割合を仕入税額として控除できる「経過措置」が設けられています。

この控除割合は、2026年9月30日までは80%ですが、同年10月1日から70%へ引き下げられます。

その後も段階的に縮小し、2028年10月から50%、2030年10月から30%となる予定です。

控除できる割合が下がると、未登録の一人親方と取引する課税事業者の元請側では、税負担が増える可能性があります。

経過措置があるから取引条件に影響しないとは限らないため、未登録を継続する場合も、制度変更と取引先の方針を確認しておきましょう。

個人事業者は2027年分・2028年分の3割特例も確認する

インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者となった個人事業者は、2027年分と2028年分の消費税申告で「3割特例」を適用できる場合があります。

これは、一定の要件を満たす場合に、納付税額を売上に係る消費税額の3割とする負担軽減措置です。

対象となるには、個人事業者であることや、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどの要件があります。

すべての一人親方が一律に利用できるわけではないため、インボイス登録後の税負担を考える際は、自身が適用対象になるか確認しましょう。

インボイス登録をする場合の手続きと登録後の対応

インボイス登録をすると決めたら、適格請求書発行事業者の登録申請を行い、請求書の様式や消費税の申告・納税にも対応できるよう準備します。

必要な準備を事前に確認しておくと、登録後の実務を進めやすくなるでしょう。

適格請求書発行事業者の登録申請をする

適格請求書を発行するには、税務署長から適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があります。

登録申請は、国税電子申告・納税システムのe-Taxで行えるほか、申請書を作成して郵送で提出することも可能です。

登録を受けると登録番号が通知されるため、その番号を請求書に記載できるよう準備を進めましょう。

申請方法や登録時期によって必要な対応が異なる場合があるため、手続きの際は国税庁の最新情報を確認してください。

登録後は適格請求書の記載事項を整える

登録後は、現在使用している請求書が適格請求書の要件を満たしているか確認します。

適格請求書には、発行事業者の氏名または名称・登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとに区分した対価の額と適用税率・税率ごとの消費税額・交付を受ける事業者の氏名または名称などの記載が必要です。

不足する項目があれば請求書のフォーマットを見直し、会計ソフトなどを使用している場合は登録番号や消費税額が正しく表示されるよう設定します。

消費税の申告・納税方法を確認する

免税事業者がインボイス登録をすると課税事業者となり、原則として消費税の申告・納税が必要です。

納付税額の計算には原則課税や簡易課税があり、要件を満たせば負担軽減措置を利用できる場合もあります。

適した方法は売上や仕入れの状況によって異なるため、判断が難しい場合は税理士などの専門家への相談も検討しましょう。

まとめ

一人親方のインボイス登録は、売上1,000万円を超えているかどうかだけで決めるものではありません。

自身の消費税の課税関係や主要な取引先がインボイスを必要としているか、登録後の税負担・事務負担を踏まえて判断することが大切です。

また、インボイス制度への対応とは別に、一人親方として働くうえでは仕事中のけがや事故への備えも欠かせません。

一人親方団体労災センター」では、一人親方を対象とした労災保険の特別加入手続きをサポートしています。

最短翌日からの加入や加入証明書の即日発行、短期加入にも対応しているため、急ぎで現場に入る予定がある方もご相談いただけます。

「一人親方として安心して仕事を続けられる体制を整えたい」とお考えの方は、お気軽に一人親方団体労災センターへご相談ください。

> 労災センター通信 一覧ページへ

問い合わせはこちら

一人親方労災保険についての
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

050-3786-1525

[受付時間] 平日9時~18時 (土日祝・年末年始除く)

一人親方労災保険特別加入のお申し込みはこちら

お申し込みの流れはこちらをご覧ください。

一人親方労災保険特別加入手続きの当団体対象地域

関東
東京・千葉・神奈川・埼玉・茨城・栃木・群馬・静岡
関西
大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀・三重・鳥取・岡山・徳島・香川
中部
長野・新潟・富山・山梨・岐阜・愛知
九州
福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島
東北
宮城・岩手・秋田・山形・福島
沖縄
沖縄