一人親方労災保険の「労災センター通信」

個人事業主でも労災保険に加入できる?知っておきたいリスクと加入条件

労災保険は、業務中や通勤中にケガや病気をしたときに、さまざまな補償を受けられる制度です。労災保険は本来、会社員や公務員に認められている制度であり、個人事業主は加入できないことになっています。逆にいえば、1人でも従業員を雇う場合には、必ず労災保険に加入しなくてはなりません。
しかしながら、原則どおりすべての個人事業主が労災保険に加入できないわけではありません。例外的に、労災保険に加入できる個人事業主もいます。

この記事では、個人事業主が加入できる労災保険の概要・リスク・条件を解説します。
個人事業主が安心して仕事をするためには、労災保険への加入は必ず役に立ちますので、ぜひご参考にしてください。

個人事業主は労災保険に加入できない?

「労災保険」とは、業務や通勤上の事由による労働者の負傷・疾病・障害・死亡などに対して、労働者やその遺族のために必要な補償を受けられる保険制度です。労災保険は業種に関係なく、従業員を1人でも雇えば(週の労働時間が20時間以上)加入義務が発生します。
労災保険を適用される基本的なパターンは、以下の3つに該当した場合です。

  • 事業主の支配・管理下で業務に従事している
    特段の事情がない限り、基本的に労災保険が認められます。
  • 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合(休憩中や就業時間前後など)
    私的な行為によって発生したケガや病気については、労災保険が認められないものの、会社の設備によって発生した事故は補償の対象になります。
  • 事業主の支配にあるが、管理下を離れて業務に従事している
    特段の事情がない限り、労災保険の対象になります。

また、失敗に関しては、業務との関連性が必須条件になっています。
いずれにせよ、労災保険は会社などの団体に所属して、事業主の支配下に置かれていることが前提条件です。

参考:東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/rousai.html

個人事業主の労災保険特別加入制度とは?

支配・管理下に置かれない個人事業主は、原則通りでいえば労災保険の適用は受けられません。しかし、個人事業主が労災保険を受けられる例外事項があります。
業務や通勤上のケガや病気に関するリスクに対して、不安を感じている方は、以下に該当するか否かをチェックしてください。

中小事業主

「中小事業主」とは、従業員を1人以上・年間100日以上雇用している事業主のことです。
「中小企業主」には、会社(株式会社・有限会社・合資会社など)と個人事業主の両方が含まれます。
通常、労災保険は労働者のための保険であるため事業主は加入できませんが、「中小事業主」は事業主であっても加入可能です。業種によって、「中小事業主」として認められる規模(労働者数)が定義されています。

  • 金融業、保険業、不動産業、小売業・・・50名以下
  • 卸売業、サービス業・・・100名以下
  • 上記以外の業種・・・300名以下

「中小事業主」として労災保険に加入するには、以下2つの要件を満たさなくてはなりません。

  • 雇用する労働者について、労災保険の保険関係が成立していること
  • 労働保険の事務処理を、労働保険事務組合に委託していること

「中小事業主」の労災保険加入方法について詳しく知りたい方は、所管の労働局にお問い合わせください。

一人親方その他の自営業者

建設業など、特定の事業に従事する一人親方・そのほか事業者・その家族は、労災保険に特別加入できます。
<一人親方として認められる事業>

  • 個人タクシー業者や個人の貨物運送業者など、自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業
  • 建設事業(大工、左官、とび職人など)
  • 水産事業
  • 林業の事業
  • 医薬品販売事業
  • 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業
  • 船員法第1条に規定する船員が行う事業

上記の業種であるとともに、従業員を雇用しない(厳密には、雇用時間が年間で延べ100時間未満である)ことが、一人親方として認められるための条件です。一人親方が労災保険に特別加入するには、労基局認定の団体を通じて登録申請をしなくてはなりません。

特定作業従事者

「特定作業従事者」とは、以下の事業に該当する事業者を指します。

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 国または地方公共団体が実施する訓練従事者
  • 家内労働者およびその補助者
  • 労働組合等の常勤役員
  • 介護作業従事者および家事支援従事者

「特定作業従事者」に関しても、一人親方のように特別加入団体を通じて、労災保険に申し込みしなくてはなりません。特別加入団体の連絡先がわからないときには、最寄りの「労働基準監督署」または「労働局」に問い合わせをすると、詳細を確認できます。

海外派遣者

海外に派遣された方の中で、労災保険の特別加入条件は以下の通りです。

  • 日本国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人
  • 日本国内の事業主から、海外にある中小規模の事業に事業主等として派遣される人
  • 独立行政法人国際協力機構など、開発途上地域に対する技術協力の実施の事業をおこなう団体から派遣されて、開発途上地域でおこなわれている事業に従事する人

単に留学をするために海外に行く方や現地採用された方は、労災保険への特別加入が認められません。

個人事業主が労災保険に加入しないときのリスクとは?

本来は会社員に認められている労災保険が、一定の条件のもと個人事業主にも認められているのは、労災保険に大きなメリットがあるためです。また、それ以上に、労災保険に未加入の場合大きなリスクが存在するためです。
この章では、個人事業主が労災保険に加入しないときのリスクを解説します。

ケガ・病気をしたときの補償がない

労災保険に加入していなければ、ケガや病気をした時に補償が受けられません。さらに、補償が受けられずに治療費をご自身で負担することになると、不安や負担はよりいっそう大きなものになります。
労災保険に加入していれば、病院などの医療機関でかかる治療費や、薬の代金の自己負担額が0円になります。
そもそも保険は全般的に、不測の事態が起こっても経済的な被害を最小限におさえるために、加入するものです。労災保険は、業務や通勤中に起こった事故やケガ・病気に対して国が用意している保険であるため、同様の趣旨の民間保険と比較をしても、少ない掛け金で厚い補償を受けられます。

従業員を雇用している場合、違法になる「費用徴収制度」

一人でも従業員を雇用した場合(年間20時間以上)、個人事業主であっても労災保険への加入義務があり、加入しなかったときには行政機関からの指導があります。
指導の内容は、以下のとおりです。

  • 行政機関からの指導を受けたにもかかわらず、加入に応じなかった場合
    事業主が故意に応じなかったとみなされ、認定された保険支給額の100%を支払う義務を負います。
  • 行政機関からの指導を受けていないものの、労災保険の加入対象となったときから1年以上加入に応じていない場合
    重大な過失があるとみなされ、認定された保険支給額の40%を支払う義務を負います。

本来支払うべき保険料を遡って徴収されたうえで、さらに上記のペナルティも発生するため、労災保険に加入しないことはすなわち余計な費用負担を招く結果になるのです。

仕事が受けられなくなることがある

建設業においては特に、労災保険の未加入が大きな社会問題になっています。したがって、自社の社員だけでなく仕事の請負先に対しても、労災保険の加入状況をチェックする元請業者が増えています。

「一人親方」や「中小事業主」の労災保険は義務ではなく、あくまでも権利として特別に加入が認められている制度です。
しかし、未加入の場合には仕事の受注にも影響するかもしれません。逆にいえば、労災保険の加入を請負の条件に設定している業者は、安全義務に配慮している点で、安心して取引できる業者であるといえるでしょう。

個人事業主が労災保険に加入して得られる安心とは?

労災保険に加入した場合に、どのような補償が受けられるのかについても、チェックしておきましょう。受けられる補償は、大きく分けて7項目あります。
すべてに共通するのは、業務中や通勤中に起因する場合に補償対象となる点です。

  • 療養補償給付
    基本的には、ケガや病気が治癒するまでの治療費や薬代が給付されます。ただし、一般的な治療をおこなっても医療効果が期待できない状態に関しても、治癒とみなされます。
  • 障害補償給付(年金/一時金)
    障害補償年金は等級1~7級に該当する、比較的重度な障害を対象としています。ケガや病気が治癒、もしくは症状が固定した後に障害が残ったときに、障害補償年金が給付されます。障害補償一時金は障害補償年金と同じで、ケガや病気が治癒もしくは症状が固定した後に障害が残ったときに、障害補償一時金が給付されます。等級8~14級までの、比較的軽度な障害に対して支給されます。
  • 休業補償給付
    ケガや病気の療養のため、労働できない日が4日以上となった場合に4日目以降、日ごとに補償を受けられます。
    会社員の場合、補償額は基本給の80%(給付基礎日額60%+特別支給金20%)と決まっていますが、個人事業主の場合には給付基礎日額をご自身の判断で設定します。
    給付基礎日額は、3,500円~25,000円まで16段階で設定可能です。
    給付基礎日額の金額に連動して、支払う保険料が変動します。
  • 遺族補償給付(年金/一時金)
    業務中・通勤中に万が一死亡してしまったときには、遺族の人数に応じた遺族補償年金・遺族特別支給金(一時金)が給付されます。遺族補償年金の受給資格をもつ遺族がいない場合などは、遺族補償一時金・遺族特別支給金(一時金)を受け取れます。
  • 葬祭料
    業務中・通勤中に死亡してしまった場合、31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額、または給付基礎日額の60日分のいずれか高い方が支給されます。
  • 傷病補償年金
    業務中・通勤中のケガや病気が、療養開始後1年6か月経過しても治っていない場合や障害が残ってしまった場合に、障害の程度に応じて、傷病補償年金・傷病特別支給金(一時金)が給付されます。
  • 介護補償給付
    障害補償年金または傷病補償年金受給者のうち、一定の障害を有し介護を受けている場合には、介護の費用として支出した額(上限額があります)が支給されます。

 上記のように、業務中や通勤中のケガや病気に対して、幅広い補償が受けられます。
 給付額は給付基礎日額と連動しているので、必要な補償の大きさと日ごろの生活とのバランスをとりながら、給付基礎日額を検討しましょう。

個人事業主の労災保険加入手続き方法

 個人事業主が労災保険にはじめて加入したいときには、労働基準監督署を通じて労働局長に申請書を提出しなければなりません。注意しなくてはならないのは、中小事業主・一人親方・特定作業従事者・海外派遣者のそれぞれで、加入すべき団体や申請書のフォーマットが異なることです。
 必ずご自身の立場にあった団体に加入して、申し込みをしなくてはならないため、間違えないよう注意しましょう。もし不安のある方は、最寄りの労働基準監督署に問い合わせをすれば、正しく回答してもらえます。
 申請してから労災保険加入が完了するのは、最短で翌営業日です。ただし、特別加入団体の規定や手続きの流れによって、日数は異なります。さらに、特別加入団体に入る場合の加入金に関しても、一律で決まっているわけではありません。

 特別加入団体を選ぶ際には、費用が安く、手続きの早い団体を選ぶようにしましょう。ただし、費用に関しては特に、ホームページ表記のみに注意していると、実際の請求項目を見落としてしまうことがあります。例えば、給付を請求する際に別途手数料が発生することもあるので、追加費用がかからないことを明記している団体がオススメです。

 団体の選び方に迷ったら、最寄りの団体に電話をしたり、webサイトをチェックしたりするとよいでしょう。

まとめ

 労災保険は、会社員や団体に所属している人が、業務中・通勤中のケガ・病気・死亡の補償を受けられる制度です。しかし、個人事業主であっても一定の条件を満たせば、労災保険への特別加入が認められています。

 労災保険は国が運営している制度であり、補償がとても厚い点が大きな特長です。
 特別加入が認められているのは、以下の4業種です。

  • 中小事業主
  • 一人親方その他の自営業者
  • 特定作業従事者
  • 海外派遣者

 加入条件・保険料・特別加入団体などをチェックして、ご自身にあった団体を通じて加入してください。

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