一人親方労災保険の「労災センター通信」

労災保険とはどのようなもの?ポイントをわかりやすく解説

 「健康経営」が非常に注目されていることからもわかるとおり、近年では労働者の健康への配慮が重要視されています。
労働時間が長くなりがちな職場や、建設業など肉体的な負担の大きな職種では特に、雇用者側も労働者側も「健康と安全を意識して、仕事をすることが当然である」との考え方が主流です。

 そのなかで、重要性が再認識されているのが「労災保険」です。労災保険に加入すると、業務中や通勤中にケガや病気をしてしまったときの治療費だけでなく、さまざまな補償が受けられます。労災保険は、会社員はもちろんのこと、一部の個人事業主の方にも必要不可欠な保険制度の一つです。

 この記事では「労災保険」がどのようなものなのかを、一からわかりやすく解説します。

労災保険とは?

 労災保険」という言葉自体は、大半の方が耳にしたことがあると思います。その一方で、労災保険がどのようなものかを明確に理解されている方は、少ないのではないでしょうか?

 この章では、労災保険とは何かをわかりやすく解説します。

労災保険をわかりやすく説明すると・・・

 「労災保険」とは、労働者が業務上の事由あるいは通勤中にケガ・病気をしてしまったとき、本人もしくはその遺族が必要な保険給付を受けられる制度です。労災保険は1970年に全面スタートして、すでに50年以上経過しています。

 労災保険は、民間の生命保険や火災保険などとは異なり、国が設けている制度です。従業員を雇用する場合には、必ず労災保険に加入しなくてはなりません。また、建設業に従事する一人親方などは、従業員を雇用しなくても労災保険への特別加入が認められています。

 補償の対象になった場合、どのような給付が受けられるのかについては後の章で詳しく解説しますが、民間の保険制度には見られないほど補償が充実している点が、大きな特長です。

 業務中や通勤中に起きてしまった事故やケガに対して、全面的に補償されているので、「健康と安全を意識して働くには不可欠の制度である」ともいえます。

雇用保険との違い

 労災保険は雇用保険と併せて、「労働保険」と呼ばれています。制度の目的や趣旨が似ていることもあり、労災保険と雇用保険は混同されがちです。
しかし、両者は目的や補償の内容が異なります。両者の違いをわかりやすく解説するために、表にまとめましたのでぜひチェックしてください。

雇用保険 労災保険
対象者
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者
  • 31日以上の継続雇用が見込まれている労働者
  • すべての被雇用者
  • 一人親方など特別加入が認められている個人事業主
補償内容
  • 失業や育児休業などの際に、収入保障が得られる
  • 業務中や通勤中のケガ・病気・死亡に対しての各種給付金などを受けられる
特別加入(一人親方) なし あり

 趣旨が似ているものの、まったく別のサービスであることがわかります。
 雇用保険について詳しく知りたい方は、一人親方は雇用保険に加入できる?いざというときのために備える方法にて解説していますので、参考にしてください。

労災保険の対象者とは?

 保険制度について考えるときに重要なポイントは、ご自身が保険の対象となるか否かのチェックです。どのような場面で対象になるのかを把握しているのといないのとでは、仕事をする上での安心感に大きな違いが生じます。

 この章では、労災保険の対象者を具体的に解説します。

正社員

 従業員を一人でも雇用する事業者は、労災保険への加入が義務づけられています。したがって制度上、正社員には必ず労災保険が適用されます。

 ただし、「チェックをしたら勤務先の会社が、労災保険に未加入だった」というケースに直面するかもしれません。

 もし、労災保険に未加入であることが発覚した場合、会社が過去にさかのぼって(最大2年間分)保険料を徴収されます。また、労災保険への加入は義務であるため、未加入事業者はハローワークに掲載できなかったり、保険料を会社が負担したりするなどのペナルティーを負うケースもあります。いずれにせよ、正社員は労災保険の対象です。

パート・アルバイト

 パート・アルバイトなどの雇用形態であっても、労災保険の対象になります。派遣社員や日雇い労働者であっても、雇用契約を結んでいる限りは、必ず労災保険の対象者として認められます。反対に、労災保険が適用されないのは、会社に雇用されていない個人事業主・経営者・公務員などです。

 ※公務員は、「国家公務員災害補償法」といった労災保険に該当する保険制度により、厚く保護されます。
 ※また、中小事業主は労災保険への特別加入が認められています。

一部の自営業者(一人親方など)

 一般的に個人事業主は労災保険への加入が認められていませんが、特定の業務に従事する個人事業主は、労災保険への特別加入が認められています。典型的なケースは、建設業に従事する一人親方です。

 一人親方は、高所や重機を使用して作業するため、業務中のリスクが高いと考えられています。実際に作業中の事故が毎年発生しており、仕事の依頼主である請負元には、安全・衛生管理が強く要求されています。

 そこでポイントになるのが、作業員である一人親方の労災保険加入状況です。一人親方が労災保険に加入していれば、万が一事故が生じてしまった場合であっても補償が受けられるため、業務中のケガによるリスクを最小限に抑えられます。したがって、一人親方が労災保険に加入しているか否かをチェックすることが、請負元にとって安全状況の確認に該当します。

労災保険の給付が受けられる場面とは?

 労災保険の給付がどんなときに受けられるのかについても、チェックしておきましょう。労災保険の対象者であっても、適用となる場面でなければ給付は受けられません。
 例えば、業務に関係のないところでのケガや病気は、労災保険でなく健康保険の適用対象となります。補償の内容にも大きく影響する、非常に重要なポイントです。

業務災害

 「業務災害」とは、業務上の事由による労働者の負傷・疾病・障害・死亡などを指します。
これは業務が原因となっている、つまり業務(仕事)と傷病との間に、一定の関係性が認められることを意味します。

 例えば以下のケースでは、業務上の事由であると認められません。

  • 休日ボランティア活動に参加していた際、足にケガをしてしまった
  • 業務の休憩時間に階段を踏み外して、骨折をした
  • 体調が悪く病院にかかってみたところ、インフルエンザと診断された(会社内で感染した可能性が極めて高い場合を除き、労災が認められる可能性は低い)

 厳密には労災に当たるか否かは、ケースバイケースにて判断されます。例えば休憩中であっても、会社の設備不良が原因でケガを招いてしまった場合には、労災保険が認められるでしょう。あるいは、研修の一環としてマラソンやウォーキング大会などが実施され、その最中にケガをしてしまった場合についても、「業務中」であると判断される可能性が高いです。

通勤災害

 「通勤災害」とは、職場への往復の際、ケガ・病気・死亡した場合に適用されます。住居と職場との間を、合理的な経路・方法にて往復することが、要件として定められています。合理的な通勤経路を中断・逸脱した場合については、その種類によって以下のように扱いが異なります。

  • 日常生活を送るうえで必要な行為(日用品の買い物、身内の介護や自身の治療のための医療・介護施設への移動など)
     →例外的に、通勤災害が認められます。
     ※ただし、中断箇所内でのケガや病気に関しては労災の対象外になります(例えば、食品スーパー内で事故に遭いケガをした場合)
  • 日常生活を送るうえで必要のない行為(仕事終了後に、趣味のためコンサート会場へ移動する場合など)
     →全面的に労災は認められません。

労災保険の補償内容とは?

 労災保険を申請したときに、どのような補償が認められるのかを知ることも重要です。
 ポイントは、以下の通りです。

療養補償

 「療養補償」とは、労災病院あるいは労災保険指定医療機関にて、治療費の自己負担が0円になる補償のことです。対象となる医療機関は、厚生労働省の以下のホームページにて確認できます。

 参考:労災指定医療機関
https://rousai-kensaku.mhlw.go.jp/

 指定の医療機関以外で治療を受けた場合、いったん支払った後、治療費を請求できます。

休業補償

 「休業補償」は、病気やケガで全く仕事ができない期間、一定の補償が受けられる制度です。

 補償が受けられる期間は、ケガ・病気の発生後4日目から治癒するまでです。
 (会社員の場合、ケガ・病気発生後3日目までは、勤務先の会社から休業補償が受けられる仕組みになっています)

 休業補償について詳しく知りたい方は「労災保険の休業補償とは?補償範囲から申請方法まで完全解説!」にて解説しています。詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてください。

傷病補償(年金・一時金)

 業務中や通勤中にケガや病気をしてから、1年6か月が経過しても治癒せず、なおかつ傷病等級に該当する場合には、傷病補償が給付されます。
傷病の等級に応じて、傷病補償年金・傷病特別支給金(一時金)・傷病特別年金が給付されます。

障害補償(年金・一時金)

 業務中や通勤途上でのケガや病気が原因で障害を負った場合に障害等級に応じて障害補償を受けられます。1級から7級までが年金で、8級から14級までが一時金です。障害補償は治療の結果これ以上治療を続けていても効果がなく症状が固定したと判断された場合に支給されますので、障害補償を受けると療養補償や休業補償は受けられなくなりますので注意が必要です。

遺族補償(年金・一時金)

 業務中や通勤中に死亡した場合、その家族は遺族補償を受けられます。

 遺族補償の受給対象となるのは、以下に該当する方です。

  • 被災労働者の死亡当時、同一生計の最先順位者(優先順位は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順)
  • 55歳以上の夫・父母・祖父母、18歳の誕生日を迎える年度の3月末日以前の子・孫、55歳以上もしくは18歳の誕生日を迎える年度の3月末日以前の兄弟姉妹、のいずれかに該当すること
  • 第5等級以上の障害が認められており、傷病によって労働が著しく制限される状態にあること

葬祭料

 「葬祭料」は、葬祭をおこなった方に対して支給されます。
 従って、家族以外の方が葬式を開催した場合であっても支給されます。

介護補償

 障害補償年金・傷病補償年金いずれかの受給権者で、介護が必要な状態(等級1・2級)にある方は、介護補償の対象になります。一定の上限は設けられていますが、介護にかかった費用が給付されます。

労災保険の給付額とは?

 続いて、労災保険に加入している場合、どれだけの給付が受けられるのかについて解説します。ポイントとなるのは、「給付基礎日額」です。
 会社員の給付基礎日額は、前年度の収入によって決定されます。一人親方などの個人事業主は、給付基礎日額を自身で決定します。

 (労災保険の概要)

  • 休業補償・・・給付基礎日額の60%+特別支給金(給付基礎日額の20%)
  • 傷病補償年金+傷病特別年金+傷病特別支給金(一時金)・・・傷病の等級によります。
  • 障害補償年金+障害特別年金+障害特別支給金(一時金)・・・障害の等級によります。
  • 障害補償一時金・・・障害の等級によります。
  • 遺族補償年金・・・遺族の人数に応じて、給付基礎日額の245日分から153日分の年金+特別支給金(一時金)300万円
  • 遺族補償一時金・・・給付基礎日額の1000日分+特別支給金(一時金)300万円
  • 葬祭料・・・給付基礎日額の60日分

 ※療養補償と介護補償(上限あり)は、給付基礎日額にかかわらず支給されます。

労災保険の加入方法とは?

 会社員の場合、労災保険加入は義務です。従って、特に手続きをしなくても、会社に所属していれば自動的に加入できます。

 ただし、上述の通り、まれに労災保険未加入の会社があります。その場合、事業所の所在地を管轄する年金事務所に相談してください。

 一人親方の場合は、労働局承認の労災保険特別加入団体を通じて、申し込み手続きをおこなう必要があります。
 補償給付額や毎月支払う保険料は、どの団体を通じて申し込みをしても一律で設定されていますが、団体加入の料金や対応はそれぞれ異なります。

 加入料が安く、スピーディーな対応の団体を通じて加入するようにしましょう。

まとめ

 労災保険は、労働者が安心して業務を遂行するためにも、会社や経営者が従業員の安全に配慮するためにも重要です。補償の条件・内容・金額を把握して、適切に保険を利用できるようにしましょう。

 従業員を一人でも雇用する会社には、労災保険への加入が義務付けられています。また、一人親方は労災保険の特別加入が認められています。

 本記事の内容をご参考にしていただき、ぜひ労災保険の理解を深めてください。

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