一人親方労災保険の「労災センター通信」

労災保険未加入の一人親方のリスクとは?対処法を解説

 一人親方にとって労災保険は任意の制度です。しかし、未加入の場合には治療費負担が生じたり、休業補償が受けられなかったりするなど、通勤や業務中のケガ・病気をしてしまったときのリスクが大きくなります。さらに、一人親方としての仕事の受注に影響するケースさえあります。
 この記事では、労災保険未加入の一人親方のリスクと、その問題を解決するための対処法について解説します。また一人親方が労災保険に加入する際の方法についてもご紹介しますので、労災保険未加入の一人親方は参考にしてください。

一人親方が労災保険未加入のリスクとは?

 そもそも、一人親方が労災保険未加入の場合にはどのようなリスクが生じるのでしょうか?普段、健康に過ごしていると、いざ病気やケガをしてしまったときのことはなかなか想定しづらいものです。
 この章では、大きく4つのポイントに分けて、労災保険未加入の一人親方にとってリスクとなり得るポイントをご紹介します。

業務上のケガ・病気の治療費が自己負担になる

 大きなケガをしてしまった場合に、労災保険に加入していない場合には、医療機関での治療費や薬科代が自己負担になります。現場でどんなに注意を払っていても、業務の際にケガや病気を絶対しないわけではありません。不運な事故に遭遇したり病気を発症したりなど、ケガや病気の状態になってしまうことがあります。
 もしもケガや病気の状態になれば、速やかに病院を受診して治療を始める必要があります。治療したら治療費を支払わなければいけませんが、労災保険に未加入の場合は治療費がすべて自己負担です。また、ケガや病気が重いものになったとき、治療費が高額に上るケースも少なくありません。

就業不能補償が受けられない

 就業不能補償とは、ケガや病気が原因で仕事ができないときの収入減少を補填してくれる保険です。労災保険には就業不能補償が搭載されていますが、未加入者はこの補償を受けられません。つまり、業務中に大きなケガや病気をしたときには、治療費を負担すると同時にご自身の収入が途絶えるという二重の苦しみを受けることになります。特に、一人親方は会社員の給与体系とは異なり基本給の概念がないため、余計に重いダメージとなるでしょう。

多彩な補償が受けられない

 労災保険には、多彩な補償が設けられていますが、未加入の場合には当然すべての補償給付が受けられなくなります。補償内容別に、未加入のリスクをご紹介します。

  • 傷病(補償)年金
  • 障害(補償)給付
  • 遺族(補償)給付
  • 祭料(葬祭)給付
  • 介護(補償)給付

 労災保険がカバーする範囲が広いからこそ、未加入の場合に生じるリスクの幅もかなり幅広くなります。

現場に入れないことがある

 一人親方と契約する元請け企業には、ガイドラインによって安全配慮義務が課せられています。安全配慮義務の中には労災保険への加入が含まれているため、未加入の一人親方とは契約は避けられがちです。労災保険未加入であるにもかかわらず契約を結んだら、ガイドラインに反するためです。
 特にガイドラインの遵守を徹底する大手企業や大規模な案件では、そのような傾向が顕著です。もしも現場に入れなければ、一人親方は仕事の範囲が狭まり、安定的に案件を受注できなくなります。

なぜ一人親方の労災保険未加入問題が生じるのか?

 特別加入が認められているにもかかわらず、一人親方の労災保険加入率は低い状態です。一人親方の労災保険未加入が時として問題になることもあります。なぜ、一人親方の労災保険加入率が低いのかについて、2つの理由を解説します。

保険料が自己負担である

 通常の労災保険は保険料を事業主が負担しますが、一人親方の場合保険料は自己負担となります。将来の不安やリスクに対して備えるためとはいえ、金銭的な出費については負担に感じる方が多いようです。考え方次第ではありますが、以下の点を冷静に判断することが重要です。

  • 労災保険は国が運営している保険制度であるため、補償が厚い制度であること
  • 労災保険未加入の場合に、現場に入れないケースがあること

 また、労災保険特別加入団体を選ぶ際に、組合費の安い団体を選ぶことも大切です。

誤解により重要性が認識されていない

 労災保険の重要性があまり認識されていないこともあります。

  • 自分は労災事故に遭わないとの思い込み・・・労災保険の年間受給者数は70万人弱にも上ります。
    建設業に関しては労災事故の多い業種であるため、常にケガや病気のリスクは高いと認識する必要があります。
  • 健康保険に加入しているからOKであるとの思い込み
    そもそも国民健康保険だけでは、業務や通勤の間に大きなケガや病気をしたときのリスクをカバーしきれません。
    長期で仕事ができなくなったときに収入が途絶えても問題ないか否かをイメージしてください。
  • 保険料が高いとの誤解
    労災保険の補償内容を民間の保険商品でまかなおうとする場合、保険料負担は労災保険よりも高額になります。
  • 手続きがややこしい
    全国に労災保険特別加入団体があり、一人親方の労災保険加入をサポートしています。
    手軽に手続きできます。

 もし、これらの誤解によって労災保険に加入されていない場合は、かなり損をされてしまっているかもしれません。

一人親方労災保険未加入者が知っておくべき労災隠し問題

 一人親方の労災保険未加入とは直接的には関係がありませんが、建設業界を含むいくつかの業界で労災隠しが問題視されることがありました。労災隠し問題とは、労災事故が生じたときに労災であると届け出をしないことです。
 労働者にとっては、労災保険が下りないため治療費の負担額や給付される保証金が少なくなりますが、あえて労災隠しをするのは雇用元の会社に対する配慮からです。労災保険を利用すると、保険料の上昇や世間からの風評被害リスクが生じるためです。
 一人親方の場合、労災保険を使用したからといって翌年に支払う保険料がアップすることはありません。また、一人親方の安全管理の責任は請負会社にありますが、労災保険を使用したからといって請負元の建設会社から不利益な扱いを受けることはありません。むしろ、労災保険に未加入であることが契約を敬遠される要因になります。
 もし、労災保険に該当する事案が発生した場合は、速やかに治療を受けて、労災保険加入団体を通じて補償給付の申請をしてください。

一人親方労災保険の加入方法

 一人親方が労災保険の加入をするための方法を3つのステップでご紹介します。

  • 一人親方の特別加入団体を探す

 最初に、一人親方の特別加入団体を探しましょう。一人親方が労災保険の特別加入手続きをおこなえるのは、都道府県の労働局から正式に承認された団体だけです。一人親方労災保険特別加入団体の選び方のポイントは、組合費の安さ・手続きのスムーズさ(ていねいさ)・対応の早さの3点です。
 組合費を比較する際の注意点として覚えておきたいのが、年会費が安そうに見えても、2年目以降の更新費用が高額であったり、補償給付を受ける際の手続きが別料金になっていたりするケースがあることです。基本の「組合費」の他に追加でかかる費用がないのかを冷静にチェックしましょう。

  • プランを選択(給付基礎日額の設定)
    必要な補償から逆算して、プラン(給付基礎日額)を設定します。
    給付基礎日額は、3,500~25,000円まで16段階に分かれており、休業補償では給付基礎日額の80%の金額が給付されることになります。
     基本的には前年度の年収からおおよその日給を割り出した金額が、適正な給付基礎日額の目安になります。
  • 申込
    申込をする特別加入団体とプランが決まったら、申込手続きに入ります。
    具体的な手続き方法は、団体ごとに異なるため、窓口などで確認しましょう。
    また、このとき身分証明書の提示を求められることが多いため、免許証やマイナンバーカードなどの持参を忘れないように注意してください。
     窓口で申込をして、労働局長に申請が承認されれば手続きが完了します。申込開始から承認が下りるまでの日数は、1日~1週間程度です。

労災保険に加入していれば必ず認められる?

 労災保険は、業務中や通勤中の病気やケガについて広範囲にカバーをしてくれます。ただし、「業務中」「通勤中」であるか否か?が曖昧なケースもあります。例えば、流行の感染症にかかった場合、感染経路を厳密に特定するのはほぼ不可能です。
 もちろん、作業中でのケガをはじめとした業務中・通勤中での事故が誰の目にも明らかな場合には基本的に労災保険がおりますが、判断が難しい状況もあり得ることを理解しておきましょう。具体的な事案が労災保険の対象になるか否かについては、労働基準局でその都度判断されます。

まとめ

 労災保険に未加入の一人親方が一定数存在するのは確かです。しかし、労働環境の是正や働き方改革が叫ばれる昨今において、一人親方がご自身の健康リスクを考えることの重要性は以前にも増して高まっています。
 幸い、一人親方労災保険に加入をすれば、業務や通勤の際のさまざまなリスクに対して幅広くカバーできます。費用の負担や安心感などを総合的に考慮して、まずは安心して相談できる特別加盟団体を探すことからスタートされてみてはいかがでしょうか?

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