一人親方労災保険の「労災センター通信」

労働安全衛生法とは?個人事業主が適用対象になって変わった点をご紹介

 2023年4月の法改正により、これまで対象とされていなかった個人事業主も、労働安全衛生法の一部規定が適用対象となりました。
 「具体的にどのようなことが変わったのか?」
 と、疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
 今回の改正により、作業を請け負わせる一人親方や、同じ作業場所にいる労働者以外の者に対してもさまざまな措置が義務付けられました。
 本記事では、一人親方がさらに安心して働ける環境を作り出すために必要な「一人親方労災保険」についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
労働安全衛生法

労働安全衛生法とは?

 労働安全衛生法とは、事業者が守るべき規制が定められている法律のことです。この法律が制定された目的や対象について、労働基準法との違いも含めてご紹介します。

目的

 労働安全衛生法は、労働者が健康と安全を確保しながら働くことや、快適な職場環境を形成できるようにすることを目的とした法律です。
 労働者が安全で快適に働ける環境を作り出すことは、事業者の重要な役割です。そのうえで、職場での危害を防止するための対策にはどのようなものがあるのか、万が一のときの責任は誰が負うことになるのかなどの内容が定められています。
 労働安全衛生法が制定されたのは1972年で、制定以降、労働災害の発生件数は大幅に減少しました。しかし、時代の移り変わりとともに新たな労働問題が発生するようになり、その変化に応じて労働安全衛生法も繰り返し改正が行われています。

対象

 労働安全衛生法の対象となる労働者と事業所の定義を確認しておきましょう。
 労働安全衛生法でいう「労働者」とは労働基準法における定義に当てはまるもので「事業または事業所に使用され、賃金を得ている人」のことです。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規雇用者も含まれます。
 ただし、同居の親族のみで経営されている事業所に雇用されている場合や、家事使用人は対象外です。また、船員や国会議員・裁判所職員などは労働安全衛生法の適用対象外になることもあるため、注意してください。
 事業者については、事業のために労働者を雇っているほぼすべての事業者が対象になります。

労働基準法との違い

 労働基準法も労働安全衛生法と同じように、労働者を保護するための法律です。
 もともとは労働基準法に労働安全衛生の項目がありました。しかし、高度経済成長期に労働災害が多発したことからより詳細な規定が必要と判断され、昭和47年に分離・独立する形で労働安全衛生法が制定されました。
 労働基準法には最低賃金や最大労働時間・休日・休憩時間・有給休暇など、労働者の基本的権利に関する内容が定められています。一方で労働安全衛生法には労働現場の安全基準や労働災害の予防などに関する内容が詳しく盛り込まれています。

労働安全衛生法は個人事業主にも適用されるのか?

一人親方、個人事業主
 これまで労働安全衛生法では、対象を「事業者に雇用されている労働者」としていました。
 しかし、2021年の「建設アスベスト訴訟」の最高裁判決で「労働者だけでなく、同じ場所で作業を行う一人親方なども、労働者と同じように保護されるべき」という判が下されたことにより、個人事業主に対する安全衛生対策の在り方について考え直されることになったのです。
 また、一人親方など個人事業主にも業務上の災害が多く発生している状況であったことも確かであり、2023年4月からは労働者と同じ場所で働く者に対して、労働者と同等の保護措置が講じられることが各事業者に義務付けられました。

2023年4月に改正された労働安全衛生法の主な変更点

 2023年4月1日より、作業を請け負わせる一人親方や、同じ作業場所にいる労働者以外の者に対しても、労働者と同等の保護が図れるよう、一定の措置が義務付けられました。
 これは「危険有害な作業」をおこなう事業者が対象となっています。「危険有害な作業」とは、労働者に対する健康障害防止に必要な「保護措置」の実施が義務付けられている作業のことです。
 2023年4月の改正における具体的な変更点は、以下の通りです。

作業を請け負わせる一人親方等に対する措置の義務化

 一人親方等に作業の一部を請け負わせる場合は、以下の措置を実施することが義務付けられました。

  • 事業者が設置した局所排気装置等の設備を稼働させる(または請負人に設備の使用を許可する)等の配慮を行うこと
  • 特定の作業方法で行うことが義務付けられている作業については、請負人に対してもその作業方法を周知すること
  • 労働者に保護具を使用させる義務がある作業については、 請負人に対しても保護具を使用する必要がある旨を周知すること

 出典:厚生労働省「事業者・一人親方の皆さまへ 」

 今まで自社の従業員以外に作業を請け負わせていた場合は、新たにルールが追加となるため注意しましょう。

同じ作業場所にいる労働者以外の者に対する措置の義務化

 一人親方や他社の労働者、資材搬入業者、警備員など、同じ作業場所にいる労働者以外の者に対しても、以下の措置の実施が義務付けられています。

  • 労働者に保護具を使用させる義務がある作業場所については、 その場所にいる労働者以外の人に対しても保護具を使用する必要がある旨を周知すること
  • 労働者を立入禁止や喫煙・飲食禁止にする場所について、 その場所にいる労働者以外の人も立入禁止や喫煙・飲食禁止とすること
  • 作業に関する事故等が発生し労働者を退避させる必要があるときは、 同じ作業場所にいる労働者以外の人も退避させること
  • 化学物質の有害性等を労働者が見やすいように掲示する義務がある作業場所について、 その場所にいる労働者以外の人も見やすい箇所に掲示すること

 出典:厚生労働省「事業者・一人親方の皆さまへ 」
 つまり、従業員や一人親方以外だけでなく、同じ作業場所に立ち入る可能性のある方全てに対して、安全への配慮をおこなう必要があるということです。

個人事業主が労働安全衛生法の適用対象となった場合に変更となる点

 今後、個人事業主が労働安全衛生法の適用対象になった場合には、以下のような対応が必要になる可能性があります。

  • 「休業4日以上の死傷災害」について、労働基準監督署への報告が義務付けられる
  • 脳・心臓疾患および精神障害は、個人事業主自身が労働基準監督署へ報告可能になる
  • 危険有害とされる作業を行う際には、個人事業主本人や発注する事業者に対して適切な措置が義務付られる

 具体的には「個人事業主が使用する機械について定期自主点検を行うことを義務付ける」「危険有害業務の前に安全衛生講習を受講することを義務付ける」「特殊健康診断を受診することを推奨する」などの措置が実施されることになるでしょう。
 さらに、個人事業主の健康を確保するために、健康診断を受診するよう国が促したり、長時間就労を防止したりするための対策が行われるようになるといわれています。

一人親方労災保険に特別加入してさらなる備えを

一人親方労災保険
 一人親方など個人事業主も労働安全衛生法が一部対象になるにあたり、さらに安全に配慮して働けるよう備えることが大切です。一人親方として活動されるにあたって労災保険に未加入の場合は、特別加入することを早めに検討したほうがよいでしょう。

一人親方が労災保険に特別加入する方法

 労災保険は労働者を対象としているため、一人親方が加入するには特別加入制度を利用しなければなりません。
 一人親方労災保険には特別加入団体を経由して加入する必要があるため、まずは団体を選ぶところから始めましょう。
 自分に合った団体が見つかったら、給付基礎日額を設定します。給付基礎日額とは労災保険料の金額を決める基になるもので、3,500~25,000円までの16段階から選べます。給付基礎日額が高いほど保険料が高額になり、補償内容が手厚くなるため、バランスを考えて慎重に選んでください。
 郵送・FAX・インターネットなど、団体によって申し込み方法が異なるため、ホームページで確認しましょう。

特別加入団体選びのポイント3つ

 特別加入団体を選ぶ際のポイントにはさまざまなものがありますが、特にチェックしたいのが「費用」と「加入にかかる時間」「安心感」の3つです。
 費用については、労災保険料以外に何がいくらかかるのかを確認しておきましょう。労災保険料は全国一律なので、どの団体を経由しても変わりません。しかし、入会費や組合費、そのほか加入後に発生する可能性のある各種手数料について、事前にチェックしておくことをおすすめします。
 申し込みから加入までにかかる時間については、最短だと翌日加入が可能な団体もあるため、急いでいる場合はそのような団体を選ぶと安心でしょう。
 また、加入証明書の即日発行が可能な団体もあります。急な仕事の依頼が入り、すぐに労災保険に加入しなければならないときでも慌てる心配がありません。
 安心感については、労働局の認可を受けているか、社会保険労務士が在籍しているか、特定の政治団体や宗教団体とつながりがないかなどをチェックしておきましょう。

一人親方労災保険に特別加入するメリット

 労働安全衛生法により一人親方が安全で快適に働けるようになっても、労災事故を完全になくすことは難しいでしょう。
 一人親方労災保険に特別加入しておくことで、労働者と同程度の補償を受けられるようになります。
 例えば、業務中もしくは通勤中の事故や病気により医療機関を受診することになった場合は、治療費が全額支給されます。そのほかにも、療養により仕事を休まなければならなくなったときの休業補償や、障害が残った場合の障害補償、介護が必要になったときの介護補償など、さまざまな補償があるため、確認しておくとよいでしょう。死亡した場合は遺族に対する遺族補償も用意されており、ご家族にとっても安心の保険といえます。
 また、労災保険に未加入だと現場に入れない場合もあるため、特別加入することで請け負える仕事の幅が広がることもメリットの一つです。

まとめ

 労働安全衛生法の目的や対象者の条件とともに、この法律が一人親方を始めとする個人事業主にも一部適用されるようになるとどのようなことが変わるのかを詳しくご紹介しました。
 法律上は「労働者」に該当しない個人事業主も、労働者と同じように安全かつ快適な環境で働けるようにする必要があります。
 2023年4月の法改正により、作業を請け負わせる一人親方や、同じ作業場所にいる労働者以外の者に対する措置についても義務付けられました。
 個人事業主については、労働災害が発生した際の労働基準監督署への報告が義務付けられるほか、災害を防止するための対策や、健康確保のための対策などが行われるようになることが見込まれています。
 本記事では、一人親方が安心して働けるようにするためのさらなる備えとして、一人親方労災保険への特別加入についてもご紹介しています。加入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

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