独立に向けた資金調達方法として融資を受けたいと考える一人親方もいるでしょう。
建設業は先行出費が多いうえに、売上金の回収まで時間がかかるため、資金繰りに苦労することも少なくありません。
本記事では、一人親方が受けられる融資や手続き方法、審査の流れについて解説します。
融資以外で資金調達する方法もご紹介しますので、資金繰りにお悩みの一人親方はぜひ参考にしてください。
Contents
一人親方が利用できる融資
個人事業主である一人親方が融資を受けるためには、経理作業を正確に行い、納税していることが求められます。
一人親方が利用できる融資と審査にかかる目安期間は、次の通りです。
<融資の審査目安期間>
- 日本政策金融公庫:約2~3週間
- 信用金庫:約1~4週間
- 銀行:約2〜4週間
- 商工会議所:約1~2ヶ月
- 地方自治体:約2~3ヶ月
- ビジネスローン:即日~約1週間
必要書類の準備や手続きに時間がかかり、審査から入金まで3ヶ月以上かかるケースもあるため、余裕をもって申請しましょう。
また、審査によって融資額が決まり、融資上限額まで借りられるとは限らないため、注意してください。
一人親方が利用できる融資について、それぞれ解説します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が全額出資する金融機関です。
通常の借入れに比べて低金利のため、新規開業時や事業を開始して間もない場合に向いています。
2024年4月以降は、新規事業者や事業を開始して約7年以内の方を対象にした融資として「新規開業資金」が拡充されました。
返済期間が延長されたほか、新事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として利率が0.65%引き下げられています。
「新規開業資金」には、35歳未満や55歳以上での創業支援や、創業に再挑戦する方の支援など、条件次第で融資を優遇して受けられる制度もあります。
信用金庫
信用金庫とは、地域の繁栄を目的として中小企業や個人を組合員とする協同組合組織の金融機関です。
おもに組合員が対象ですが、融資金額が小口の場合は、組合員以外でも利用できる場合があります。
利益第一主義ではなく、資金は地域の発展に生かされるため、地域に根付いて事業を行う一人親方は、融資先として検討するとよいでしょう。
信用保証協会の保証付融資
実績が少ない一人親方が信用金庫や銀行などの金融機関から借入れする際は、信用保証協会の保証を利用すると融資を受けやすくなります。
信用保証協会とは、信用保証協会法に基づき、中小企業や個人事業主などの資金調達の支援を目的に設立された公的機関です。
信用保証協会の保証付融資を受けると、金利以外に借入期間や借入額などに応じた信用保証料が発生し、審査に約2~3週間かかります。
金融機関への返済が滞った場合は、信用保証協会が事業者に代わって借入金の弁済措置を行いますが、残債の債務は免除されないため、注意してください。
銀行
都市銀行や地方銀行の融資は、金利と限度額がともに高い傾向にあります。
銀行は、地域の利益を優先する信用金庫と違い株式会社組織の営利法人のため、株主の利益を優先します。
ハードルが高い融資先のため、事業が軌道に乗り実績が増えたときに向いているでしょう。
担保や保証人が必要なケースが多いものの、信用保証協会の保証を得る際は、連帯保証人や担保がなくても利用が認められます。
商工会議所
従業員20人以下の法人または個人事業主が商工会議所や商工会などの経営指導を原則として6ヶ月以上受けていると、小規模事業者経営改善資金「マル経融資」を受けられます。
「マル経融資」は経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度で、税金を完納して直近1年以上、商工会議所または商工会の地区内で事業を行っていることが条件です。
融資限度額は2,000万円、返済期間は運転資金・設備資金ともに10年以内(据置期間2年以内)となっています。
地方自治体
地方自治体によっては、地域経済の活性化や雇用創出を目的とした個人事業主向けの融資制度が独自に設けられていることがあります。
低金利や無利子のケースが多く、地域密着型の支援制度として地域の金融機関と連携したサポートが期待できます。
ただし、金利や対象者などの融資条件は自治体によって異なるため、直接問い合わせたりオンラインで調べたりしてみましょう。
ビジネスローン
ビジネスローンは、個人向けのカードローンではなく、ノンバンクの消費者金融やカード会社などが行う事業用融資です。
高金利で上限額が通常の融資より低く、原則として無担保・無保証人で受けられます。
即日融資も可能なほど入金が早いことが特徴で、一時的な資金や少額の融資が必要な場合や、資金調達に時間がない場合などの緊急時の資金調達に向いています。
融資の手続き方法や審査後の流れ
融資の手続き方法は、各融資先によって必要書類が異なりますが、基本的には以下の流れです。
申請書類の作成→申し込み→面談・審査→書類提出→融資実行→返済
日本政策金融公庫での融資審査の手続き方法と審査後の流れを具体的に解説します。
申請書類の作成
融資審査では、確定申告書類や決算書などをもとに判断されるため、健全な収支状況や返済計画を示すことが大切です。
返済の見込みがあり、貸し倒れのリスクがないこと、資金の用途や必要性を客観的に証明しましょう。
書類には、おもに事業内容や経営戦略、開業資金の調達方法、収益の見通しなどをまとめます。
<融資申請時に必要な書類>
- 融資申請書
- 事業計画書
- 月別収支計画書
- 資金繰り表(収支集計表)
- 納税証明書
- 決算書(確定申告書の控え)
個人で融資申請する場合は、本人確認書類、法人として申請する場合は登記簿謄本、ほかに借入れがある場合は銀行取引一覧表が必要です。
申し込み・日程決定
書類作成後は、日本政策金融公庫のホームページか、最寄りの支店から直接申し込みを行います。
オンラインの場合は、申請後に日本政策金融公庫の担当者から電話がきて、面談日時の調整を行います。
基本的に、面談の日時は平日9時~17時となっており、追加で面談時に必要な書類の指示があれば、当日までに用意しましょう。
面談・審査
基本的に、面談は30分~1時間程度で、代表者本人のみが出席し、事業内容と信頼性をアピールします。
面談では、おもに創業の動機や経営者の略歴、取引先や借入の状況、事業の見通しや必要な資金と調達方法に関して質問されるようです。
合理的な理由があり、担当者へ相談して認められた場合には共同経営のパートナーが同席することも可能で、支店によっては税理士の同席が認められているケースもあります。
審査後に必要な書類の作成
審査後は、必要な書類を準備しましょう。
日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、事業資金用借用証書・個人情報利用に関する同意書・預金口座振替利用届・収入印紙などを用意します。
銀行融資の場合は、決算書、月次試算表、資金繰り表、事業・経営計画書も必要です。
銀行などで信用保証付き融資を受ける場合は、契約書・商業登記簿謄本・住民票・納税証明書などを銀行宛と保証協会宛に2部ずつ用意します。
ほかにも融資金の送金と返済に使用する通帳や、印鑑と印鑑証明書などが必要なため、詳細は、担当者に確認してください。
融資実行
無事に審査が通ると融資実行となります。
融資後も事業の状況について報告を求められることがあるため、適切に運用することが大切です。
日本政策金融公庫の場合、送金手数料が220円、信用保証付き融資を受ける場合は所定条件によって信用保証料が発生します。
借入した元本の返済金は経費にできませんが、利息分は経費に計上できるため、帳簿管理を正確に行い、青色申告制度を利用して節税するとよいでしょう。
返済
融資の実行後は、各金融機関や契約内容で決められた返済条件に基づき、借入金の返済を行います。
据置期間中は、利息のみの返済となり元本を返済する必要がないため、資金繰りを安定させられるでしょう。
日本政策金融公庫の返済方法は原則として元金均等返済で、返済期間は以下の通りです。
設備資金 | 20年以内(うち据置期間5年以内) |
運転資金 | 10年以内(うち据置期間5年以内) |
銀行などで信用保証付き融資を受ける場合は、資金の用途や保証制度によって異なりますが、運転資金の返済が10年以内、設備資金の返済が20年以内であることが多いようです。
万が一、売上が減少して毎月の事業融資の返済が厳しい場合は、融資先に返済の条件変更を相談してください。
一人親方が融資以外で資金調達する方法
一人親方が融資以外で資金調達する方法について解説します。
ファクタリング
ファクタリングは、保有している売掛債権の売却を行い資金調達する方法です。
ファクタリングは審査もスピーディーで、売掛金の入金日よりも早く資金調達できるため、突発的な出費で資金が不足した場合や赤字経営で融資審査に通らない可能性が高い場合に向いています。
手数料が高く、売掛先の経営状況が悪い場合は審査に落ちることもあり、法的規制が少ないリスクがある点に留意してください。
クラウドファンディング
クラウドファンディングも資金調達方法の一つで、地域に根ざしたプロジェクトや地元の人々の共感を得られるような新しいビジネスの立ち上げに向いています。
クラウドファンディングには「購入型」「寄付型」「投資型」の3つのタイプがあり、手続きや税金の種類が異なります。
ただし、多くの支援者を募ることができず、目標金額に達しなければ資金が調達できないため、注意が必要です。
補助金や支援金
補助金や支援制度の対象条件や目的に合致する必要があるものの、補助金は返済の必要がない資金調達方法です。
一人親方でも利用できる補助金として「小規模事業者持続化補助金」「事業再構築補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」「IT導入補助金」などがあります。
取引先の倒産に備える「下請債権保全支援事業」や「建設業退職金共済制度」などの支援制度を有効に活用しましょう。
まとめ
一人親方が受けられる融資先は、日本政策金融公庫や信用金庫、銀行、商工会議所、地方自治体、ビジネスローンなどです。
審査には3ヶ月かかる場合もあり、必要書類の準備が大変な面もあります。
融資以外でもファクタリングやクラウドファンディング、補助金などで資金調達する方法はあるため、用途や上限額に合わせた方法で検討しましょう。