一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方に労働基準法は適用される?判断基準と労働安全衛生法を解説

一人親方として働く中で、「自分には労働基準法は関係ないと言われたけれど、本当にそうなのだろうか」と疑問を感じる方もいるでしょう。

一人親方は原則として労働基準法の対象外ですが、働き方の実態によっては例外的に適用される場合があります。
また、労働基準法が適用されなくても、労働安全衛生法によって守られるルールは存在します。

本記事では、一人親方に労働基準法が適用されるかどうかの判断基準と、一人親方にも適用される労働安全衛生法についてまとめました。
自身が労働基準法の対象かどうかを確認したい一人親方は、ぜひ参考にしてください。

労働基準法とは?

労働基準法とは、労働者の最低限の労働条件を定めた法律です。

賃金・労働時間・休憩・休日などの基準を設け、使用者が一方的に不利な条件を押しつけることを防ぐ役割があります。

本章では、労働基準法の対象者や、労働基準法で定められている主な事項を解説します。

労働基準法の対象者

労働基準法の対象となるのは、使用者の指揮命令を受けて働く労働者です。

正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなども含まれます。

雇用形態にかかわらず、雇用契約に基づいて働いていれば、原則として労働基準法が適用されます。

一方、会社の役員・一人親方・業務委託として働くフリーランスなどは、雇用関係にないので労働基準法は適用されません。

労働基準法で定められている主な事項

労働基準法では、労働者が安心して働くために必要となる基本的なルールが定められています。

労働基準法で定められている労働条件に関する主な事項は、次のとおりです。

  • 労働条件を書面などで明示する義務
  • 賃金の支払い方法や支払期日
  • 労働時間の上限
  • 休憩時間や休日
  • 時間外労働や休日労働に関するルール
  • 解雇を行う際の予告や手当
  • 年次有給休暇の付与

使用者は、労働基準法の内容を正しく理解し、定められているルールを遵守する義務があります。

一人親方に労働基準法が適用されない理由

労働基準法は、事業者と雇用契約を結びその指示や管理のもとで働く労働者を守るための法律です。

そのため、個人事業主として仕事を請け負う一人親方は、原則として労働基準法の適用を受けません。

ただし、一人親方でも働き方の実態によっては労働者と判断され、労働基準法の対象となる場合があります。

一人親方に労働基準法が適用されるかどうかの判断基準

本章では、一人親方に労働基準法が適用されるかどうかの判断基準を、7つの項目にわけて解説しましょう。

労働基準法では、労働者かどうかを契約書の名称だけで判断するのではなく、実際の業務内容や報酬の支払われ方などを総合的に判断します。

特に重要となるのが、事業者の指示や管理のもとで働いているか、報酬が労働の対価として支払われているかという点です。

これらは「使用従属性」と呼ばれ、労働者にあたるかどうかを判断する中心的な考え方とされています。

仕事の自由度

一人親方と労働者を分ける違いのひとつが、仕事を諾否する自由があるかどうかです。

一人親方であれば、仕事の依頼や業務の指示内容に納得がいかない場合は拒否できます。

仕事の依頼や業務指示を断れずに従わなければならない状況であれば、事業者との間に指揮監督関係があると判断されやすくなるでしょう。

一人親方でも、断る自由がない働き方をしている場合は労働者に近いとみなされ、労働基準法適用の可能性があります。

指揮命令の有無

作業内容や手順まで細かく指示されている場合は、指揮命令を受けて働いている状態とみなされることがあるでしょう。

一人親方であれば、本来は業務の進め方に一定の裁量が認められます。

一般的な注意や連絡の範囲を超えて具体的かつ継続的な指示を受けている場合は、指揮監督下の労働と判断されて労働基準法の対象となる可能性がありそうです。

勤務時間や場所の拘束

勤務時間や作業場所があらかじめ決められ、自由に変更できない状態で働いているかどうかも判断材料になります。

一人親方であれば、原則として働く時間や場所は自分で決められる立場です。

例えば、工事が終わったら帰宅できたり、ほかの現場の仕事に行けたりします。

しかし、特定の時間や場所での作業を強く求められ自由に離脱できない場合は労働者に近い働き方となり、労働基準法の対象となる可能性が高まります。

代替性の有無

本人の代わりにほかの人が作業を行ったり、自分の判断で補助者を使えたりするかどうかも判断基準のひとつです。

代替が認められている場合は、指揮監督下の労働ではないと評価される要素になります。

一方、代わりの人を使えずに必ず本人が対応しなければならない場合は、労働者に近い働き方と判断されやすくなります。

一人親方でありながら本人しか作業できない働き方をしている場合は、労働基準法が適用されやすいでしょう。

報酬の労務対償性

労務対償性とは、成果物ではなく、指揮監督のもとで一定時間働いたことへの対価として報酬が支払われる性質を指します。

そのため、働いた時間に応じて報酬が決まっているかどうかも重要な判断基準です。

例えば、次のような場合は、労務対償性が高いと判断されやすくなります。

  • 時給・日給・月給など、時間を基準に報酬が計算されている
  • 欠勤や早退をすると、その分の報酬が差し引かれる
  • 残業すると、通常の報酬とは別に残業手当が支払われる

一定時間の労務提供に対する報酬と評価される場合は労働者性が認められやすくなり、労働基準法の規制対象となる可能性が高まるでしょう。

専属性の程度

特定の発注者の仕事だけを長期間続けている場合、専属性が高いと評価されます。

専属性とは、特定の発注者にどの程度依存して働いているかを示す考え方です。

例えば、次のような場合は専属性が高いと判断されやすくなります。

  • ほかの仕事を自由に受けられず、実質的に1社に縛られている
  • 特定の発注者の仕事だけを長期間続けている
  • 正社員と同じような稼働時間を求められ、ほかの仕事を入れる余裕がない
  • 契約によって他社の仕事が制限されている
  • 報酬に固定給部分があり、生活保障的な要素が強い

専属性の程度は、労働者としての要素が強いかどうかを判断する基準であり、専属性が高いほど労働基準法の対象になりやすいでしょう。

事業者性の有無

事業者性とは、雇われて働く立場ではなく、自ら事業を営む立場として仕事をしているかどうかを示す考え方です。

自分の判断と責任で仕事を請け、利益だけでなく損失やリスクも自分で負って、仕事に必要な機械や道具などを自分で調達したり業務上のトラブルに自ら責任を負っていたりすると、事業者性が高いと評価されます。

また、同じ仕事をする従業員と比べて報酬が著しく高い場合も、賃金ではなく事業の対価とみなされて事業者性が高いと判断され、このような要素が多いほど自立した事業として仕事をしていると評価されるので、労働基準法の対象にはなりにくいでしょう。

一人親方が労働基準法の対象になるとどうなる?

一人親方であっても、仕事に自由度がない・指揮命令がある・拘束性が高い・代替性がない・労務対償性が高い・専属性が高いような場合は労働者と判断されて労働基準法の対象になり、社員と同様の最低賃金・残業時割増賃金の支払いや、社会保険への加入などの義務が企業に発生します。

また、契約上は請負でも、実態が労働者と同様の働き方になっている場合は「偽装請負」と判断される可能性があり、企業側に法的リスクが生じる点にも注意が必要です。

一人親方自身が「労働基準法の対象となる可能性があるのでは」と感じた場合は、まず契約先の企業に確認してください。

それでも疑問が残る場合は、最寄りの労働基準監督署 へ相談するとよいでしょう。

自治体によっては、「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」 を設置しています。

関連記事:2.一人親方 偽装請負

一人親方にも適用される労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法とは、働く人の命と健康を守り安全な作業環境を整えることを目的とした法律です。

これまでは主に雇われて働く労働者を対象としていましたが、近年の制度改正により、一人親方などの個人事業主も保護の対象に含まれるようになりました。

具体的には、事業者が仕事を請け負わせる一人親方・同じ作業場所にいる労働者以外の人に対しても、一定の安全対策を行うことが義務付けられています。

どのような内容なのか見ていきましょう。

関連記事:労働安全衛生法とは?個人事業主が適用対象になって変わった点をご紹介

作業を請け負わせる一人親方などに対する措置の義務化

事業者が作業の一部を一人親方などに任せる場合、次のような安全配慮を行う義務があります。

  • 事業者が設置した局所排気装置などの安全設備を、請負人が使用できるようにする
  • 法律で定められた作業方法がある業務について、その方法を一人親方などにも周知する
  • 保護具の着用が義務付けられている作業では、一人親方にも着用が必要であることを周知する

これらは、雇用関係がなくても危険な作業から一人親方の安全を守るために事業者へ求められている措置です。

同じ作業場所にいる労働者以外の者に対する措置の義務化

同じ作業場所にいる人が労働者でなくても、次の安全対策を講じることが求められます。

  • 保護具の着用が必要な作業場所では、労働者以外の人にも着用を求める
  • 立入禁止や喫煙・飲食禁止の区域について、労働者以外の人にも同様に適用する
  • 事故などが発生し退避が必要な場合、労働者以外の人も含めて避難させる
  • 化学物質の危険性などを掲示する必要がある場所では、労働者以外の人にも見やすい形で表示する

各ルールにより、作業現場にいるすべての人が同じ基準で安全を確保できます。

まとめ

一人親方は、原則として労働基準法の適用対象ではありませんが、働き方の実態によっては例外的に労働基準法上の労働者と判断され、適用対象となる場合があります。

また、労働基準法が適用されない場合でも、労働安全衛生法については一人親方であっても一定の規定が適用される点を理解しておきましょう。

自分の立場と適用される制度を正しく理解することで、トラブルや事故を未然に防ぐことにつながります。

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