一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方は交通費を請求できる?請求書の書き方と注意点を解説

一人親方としてさまざまな現場に行く中で、「交通費は請求してもよいのだろうか」と疑問に感じたことのある方もいるでしょう。
交通費は、業務上必要な実費であれば元請けに請求できますが、請求方法や経費処理を誤ると、思わぬトラブルにつながる場合もあります。

本記事では、一人親方が交通費を請求できる範囲や請求書の書き方、注意点などを解説します。

交通費の請求の仕方が知りたい一人親方は、ぜひ参考にしてください。

一人親方は元請けに交通費を請求できる?

一人親方は、業務で発生した交通費を元請けに請求できます。

なぜなら、現場への移動などにかかる費用は、仕事を遂行するために必要な実費だからです。

請求の際には、交通費を請求することに元請けがあらかじめ同意している必要があります。
請求書に記載できるかどうかは元請けとの取り決め次第であるため、仕事を始める前に話し合っておきましょう。
契約時に交通費について決めておけば、請求トラブルを防ぐことができます。

また、決めた内容が記載された契約書やメールなどは記録に残しておくことが重要です。

一人親方が交通費を請求できないケース

一人親方であっても、すべての交通費を請求できるわけではありません。
なぜなら、交通費の請求には、実際に費用が発生したことを証明できる書類や請求書への正確な記載が必要だからです。

たとえば、領収書を保管していなかったり、請求書に移動日や経路などの情報が不足していたりする場合、交通費が認められないかもしれません。

また、事務所から近距離での打ち合わせのように、通常は交通費が発生しないと判断されるケースでは、請求自体が断られるケースもあります。
さらに、元請けによっては交通費の支払い条件を細かく定めている場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。

請求前には、ルールを確認し、書類や情報を整えておきましょう。

一人親方が交通費を請求できる範囲

一人親方が交通費として請求できるのは、業務に必要な移動にかかった費用に限られます。
交通費は仕事のために実際に支払った金額でなければ、正当な請求と認められません。

交通費として請求できるのは、主に以下のような費用です。

  • 現場への往復にかかった電車運賃やバス代、ガソリン代
  • 高速道路の料金
  • 有料駐車場を利用した際の料金
  • 出張にかかった新幹線代や飛行機代
  • 必要に応じて使用したタクシー代

これらはすべて、業務遂行に直結する移動費用であることが条件です。
昼食のための私的な移動や個人的な用事での交通費は含まれません。

交通費の請求書の書き方

交通費を正しく請求するには、請求書に「交通費」という項目を設け、内訳を明確に記載することが重要です。

請求書の内容があいまいだと交通費として認められない可能性があります。

たとえば、単に「交通費 3,000円」と記載するだけでは、業務に必要な移動だったのかを判断できず、認められないかもしれません。
そこで下記のように、移動日、目的、区間、金額などを1件ずつ記載するのが基本です。

日付 品番・品名 数量 単価 金額
6/1 交通費(現場打合せのため、〇〇駅~△△駅) 1 1,000 1,000

このように、交通費を工事代金などと一緒にせず、項目を分けて明記しましょう。
移動が複数回ある場合は、1件ごとに分けて書くことで相手も確認しやすくなります。

請求先によっては、移動手段や目的の詳細を求められる場合もあるため、記載内容について事前に確認しておくと安心です。
見やすく納得感のある請求書を作成することが、スムーズなやりとりにつながります。

請求書を書くときの注意点

請求書の内容が不十分だったり税金の取り扱いに誤りがあったりすると、正当な請求として認められないおそれがあるため、交通費を請求書に記載する際は注意が必要です。
ここでは、交通費を正しく請求するために押さえておきたい2つの注意点を解説します。

交通費の金額に消費税を上乗せしない

交通費を請求書に記載する際は、交通費の金額に消費税を上乗せしないようにしましょう。

交通費に含まれる、バスや電車、タクシー、ガソリン代にはすでに料金に消費税が含まれているため、別途上乗せすると二重に請求することになってしまいます。
これらを他の費用と合算して再度消費税を加算してしまうと、不正確な請求として受け取られるおそれがあります。

そのため、請求書では交通費の項目を分けて記載し、消費税の欄は対象外や非課税と明示することが大切です。
交通費を請求する際は、税率や区分を明確にし、元請けに誤解を与えない記載を心がけましょう。

領収書を受け取る

交通費をきちんと請求するには、支払いの証拠となる領収書や明細書を添付することが重要です。

理由は、実際にかかった費用を証明できなければ、請求内容に信頼性がなくなってしまうからです。

たとえば、タクシーを利用した場合には、その場で領収書をもらいましょう。
また、電車やバスなどの交通系ICカードを使ったときは、アプリなどで利用履歴を残しておきましょう。
入金のレシートでは、交通費に使われた証拠にはならないので注意が必要です。

ガソリン代や高速道路料金の場合も、走行距離や利用経路がわかるレシートを提出するのが望ましいです。

明細や領収書は移動の都度きちんと保存し、請求書に添付して提出しましょう。

一人親方が交通費を請求するときの経費処理の方法

交通費を請求したときの処理には以下の2つの方法があります。

  • 売上として計上する
  • 立替金として処理する

どちらの方法を選ぶかによって、税金の扱いや帳簿への記載方法が異なります。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

売上として計上する

交通費を売上として計上する方法は、報酬とまとめて請求金額に含める考え方です。
作業代が10万円で交通費が3,000円の場合、合計10万3,000円として請求し、その全体を売上として処理します。
このように請求すると、交通費も報酬の一部として扱われます。
源泉徴収の対象となっている場合は、交通費部分からも税金が差し引かれることになるのです。

つまり、所得税が差し引かれて入金されることになり、帳簿上の収支に差が出る場合があります。
そこで、経理上では交通費部分を「旅費交通費」として計上し、源泉徴収による差額を調整する必要があります。

立替金として計上する

もう1つの方法は、交通費を立替金として処理するやり方です。

これは、本来元請けが負担すべき交通費を、一人親方が一時的に立て替えたと考える方法です。

交通費を支払った時点では、帳簿の借方に立替金、貸方に現金を記載します。
そして、元請けから交通費が振り込まれたときには、借方に現金、貸方に立替金を記載して、帳簿上で金額を相殺します。

元請けにも実費精算として伝わりやすく、処理が明確になる点がメリットといえるでしょう。

一人親方は交通費を経費にできる?

一人親方は、仕事で使った交通費を経費にできます。

現場への移動費や、元請けとの打ち合わせにかかった電車運賃、ガソリン代などは経費の対象です。

ただし、プライベートでの移動や遊びに行くときの交通費は含まれません。
交通費を経費に計上できるのは、仕事に必要なものに限られます。

条件を満たしていれば、税金の負担を軽くすることにもつながるので、記録を残しておきましょう。

交通費以外で経費にできるもの

一人親方が経費として計上できるのは、交通費だけではありません。

仕事を行ううえで発生するさまざまな支出も、正しく記録すれば経費として認められます。
これにより、課税される所得を減らせ、節税につながるでしょう。

経費にできる主な項目は以下のとおりです。

  • 地代家賃:作業場や事務所、駐車場などを借りるために支払う費用
  • 材料費:作業に必要な部品、資材、工具などの購入費用
  • 水道光熱費:仕事場の電気代、水道代、ガス代などの料金
  • 通信費:仕事用の電話、スマートフォン、インターネットなどの使用料
  • 車両費:仕事に使う車の購入費用、車検費用、保険料、修理代など
  • 接待交際費:元請けとの打ち合わせや贈り物、懇親会の費用など

これらの費用は、事業に必要な支出であると明確に説明できることが前提です。
私用と交ざらないようにしましょう。

一人親方が交通費を経費にしたら確定申告で計上する

一人親方が交通費を経費として計上した場合は、確定申告で正しく申告する必要があります。

なぜなら、一人親方は個人事業主であり、毎年の所得を自分で申告しなければならないからです。

確定申告には、青色申告と白色申告があり、青色申告の方が節税のメリットが大きいです。

確定申告をスムーズに行うためには、日ごろから経費の記録と整理をしておきましょう。
領収書やレシートは支払い日、金額、内容がわかるように保管し、できればスキャンしてクラウドで管理すると便利です。

また、事業用の銀行口座やクレジットカードを用意して、仕事に関する支払いを分けておくと申告時の手間が減り、税務調査にもスムーズに対応できます。
経費をきちんと管理すれば、確定申告も安心して進められるでしょう。

まとめ

一人親方が交通費を正しく請求するためには、事前の取り決めと明確な記録が欠かせません。

請求が認められるのは、業務上必要な移動にかかった費用であり、元請けとの合意のあることが前提です。
請求書には、移動日や区間、目的などの詳細を記載し、交通費が業務に関係していることを明示する必要があります。

また、消費税の二重請求を避けるため、交通費項目は他の費用と分け、非課税として記載しましょう。
領収書や利用履歴などの証明書類も忘れずに準備することで、請求の信頼性が高まります。

交通費の請求は単なる事務作業ではなく、適正な報酬を受け取るための重要なステップです。
基本ルールを押さえて、スムーズでトラブルのない請求対応を心がけましょう。

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