「外国人労働者はなぜ増えたのか」「外国人労働者が増えると、自分の仕事や建設現場にどのような影響があるのか」と疑問に感じている方もいるでしょう。
背景には、少子高齢化や労働人口の減少による人手不足に加え、外国人材を受け入れる制度の整備・拡大があります。
近年は、コロナ禍後に外国人の入国が回復したことも増加を後押ししました。
本記事では、外国人労働者数の推移や増加による影響、建設業で受け入れが進む背景を整理します。
建設現場での安全確認や、一人親方が知っておきたい労災保険の扱いも解説するため、現場の変化に備える参考にしてください。
Contents
外国人労働者が増えた主な理由
日本で外国人労働者が増えた背景には、人手不足と外国人材を受け入れる制度の整備・拡大があります。
これらは長期的な増加要因であり、近年はコロナ禍後の入国回復も外国人労働者数の伸びを後押ししました。
少子高齢化と労働人口の減少で人手不足が進んでいる
日本では少子高齢化が進み、将来的な労働力人口の減少が見込まれるなか、多くの企業で人材確保が課題になっています。
国内の人材だけでは必要な労働力を確保しにくい分野もあり、その担い手として外国人材の受け入れが進んできました。
建設業も担い手不足への対応が求められている業界の一つです。こうした背景から、外国人労働者の増加は、建設現場にとっても身近な変化になりつつあります。
外国人材の受け入れ制度が整備・拡大している
外国人労働者の増加には、日本で外国人材を受け入れる制度が段階的に整備・拡大されてきたことも関係しています。
従来の技能実習制度とは別に、深刻な人手不足に対応するため、2019年4月には在留資格「特定技能」による受け入れが始まりました。
2026年時点では技能実習制度が続いている一方、これに代わる「育成就労制度」は2027年4月1日に運用を開始する予定です。
こうした制度の変化も、外国人材が日本で働く環境の広がりにつながっています。
コロナ禍後の入国回復も近年の増加を後押しした
外国人労働者が長期的に増えてきた主因とは別に、直近の伸びにはコロナ禍後の入国回復も関係しています。
コロナ禍では水際対策により外国人の新規入国が制限され、2020~2021年は外国人労働者数がほぼ横ばいとなりました。
その後、水際対策の緩和に伴って外国人の入国・就労が再び進み、増加ペースも回復しています。
人手不足や受け入れ制度を構造的な要因とすれば、コロナ禍後の入国回復は近年の増加を加速させた要因と捉えるのが適切です。
外国人労働者はいつから増えている?現在までの推移
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況を見ると、日本で働く外国人労働者は長期的に増加しています。
外国人労働者数の推移を整理すると、下表のとおりです。
| 時期 | 外国人労働者数・増加状況 | ポイント |
|---|---|---|
| 長期的な傾向 | 外国人労働者数は長期的に増加 | 一時的な増加ではなく、長期的な増加傾向が続いている |
| コロナ禍 | 外国人労働者数の増加ペースが大きく鈍化 | 外国人労働者数そのものが減少したのではなく、増加の勢いが弱まった |
| 2024年10月末 | 230万2,587人 | コロナ禍後も外国人労働者数の増加が続いた |
| 2025年10月末 | 257万1,037人 | 届出義務化以降の過去最多を更新した |
推移からは、外国人労働者の増加が一時的な動きではなく、長期的な傾向であることが分かります。
コロナ禍後も増加は続いており、日本の労働市場で外国人材の存在感は高まっています。
外国人労働者が増えるとどのような影響がある?
雇用や賃金への影響は業種や人手不足の状況によって異なり、言語・文化の違いを踏まえたコミュニケーションや安全管理も必要です。
人手不足を補えるメリットと、受け入れ側に求められる対応の両面から考えましょう。
人手不足の緩和や人材確保につながる
外国人材を受け入れることで採用対象が広がり、人材を確保しにくい業種や職種では、必要な担い手を確保する選択肢の一つになります。
特に人手不足が深刻な分野では、外国人労働者が不足する労働力を補う役割を担っています。
ただし、外国人材を「安価な労働力」として捉えてはいけません。
受け入れる際は、適正な労働条件を整え、適切な労務管理を行うことが求められます。
日本人の仕事や賃金への影響は一概にはいえない
外国人労働者が増えたことだけを理由に、日本人の仕事が直ちに奪われたり、賃金が下がったりすると一律に判断することはできません。
雇用や賃金への影響は、業種ごとの人手不足の状況や求められる技能、労働市場の状況などによって異なります。
外国人材が人手不足分野の労働力を補っている側面もあります。
そのため、外国人労働者の増加と日本人の雇用・賃金を単純な因果関係として結び付けず、状況に応じて慎重に捉えることが大切です。
言語や文化の違いを踏まえた安全管理が必要になる
外国人労働者と働く職場では、言語・文化・仕事上の慣習の違いから、指示内容や職場のルールに対する認識のずれが生じる可能性があります。
特に安全に関する情報は、単に伝えるだけではなく、相手が内容を理解できる形で正確に共有することが不可欠です。
伝えたつもりでも、内容が正しく理解されていなければ十分な安全対策にはなりません。
建設現場における具体的な安全確認やコミュニケーションについては、後ほど詳しく解説します。
建設業でも外国人労働者が増えている
外国人労働者の増加は、建設業で働く一人親方にとっても無関係ではありません。
建設業でも外国人労働者は増えており、同じ現場で働く機会が身近になっています。
そのため、受け入れが進む背景だけでなく、現場で求められる安全確認や意思疎通についても理解しておく必要があるでしょう。
人手不足と外国人材の受け入れ制度が増加の背景にある
建設業では担い手の確保が課題となっており、外国人材の受け入れが進んでいます。
厚生労働省によると、建設業で働く外国人労働者は2025年10月末時点で20万6,468人となり、前年から16.1%増加しました。
深刻な人手不足に対応するための在留資格「特定技能」では建設分野も対象となっており、一定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れる仕組みが設けられています。
外国人労働者と働く現場では安全確認やコミュニケーションが重要
建設現場では、危険箇所や作業手順、安全ルールについて認識のずれが生じると、事故につながるおそれがあります。
特に墜落や重機、工具などを扱う場面では、指示を伝えるだけでなく、相手が内容を正しく理解できているかまで確認しなければなりません。
厚生労働省も、建設業に従事する外国人労働者向けに「安全衛生教育教材」を提供しています。
一人親方も同じ現場で作業する立場として、外国人労働者を含む周囲の作業者と安全情報を確実に共有し、意思疎通を図ることが重要です。
口頭で伝えるだけでなく、指差し確認や図・写真を活用し、相手が内容を理解できているかまで確認すると、認識のずれを防ぎやすくなります。
雇用される労働者と一人親方では労災保険の扱いが異なる
建設現場で働く人の労災保険の扱いは、外国人か日本人かという国籍だけで決まるものではありません。
事業主などに雇用される「労働者」に該当するか、自ら仕事を請け負う「一人親方」かによって、適用関係が異なります。
そのため、「外国人労働者」と「一人親方」を対比するのではなく、働き方の違いを基準に整理することが重要です。
雇用される労働者と一人親方では、労災への備えにも次のような違いがあります。
| 比較項目 | 労働者 | 一人親方 |
|---|---|---|
| 働き方 | 事業主などに雇用されて働く | 雇用される労働者とは異なる立場で、自ら仕事を請け負って働く |
| 労災保険の基本的な扱い | 原則として労災保険の対象となる | 一般の労働者とは労災保険の適用関係が異なる |
| 労災への備え | 雇用される労働者として労災保険が適用される | 一定の要件を満たす場合、労災保険の特別加入制度を利用できる |
| 判断する際のポイント | 国籍ではなく、労働者として雇用されているかを確認する | 一人親方として特別加入の対象になるか、現在の加入状況を確認する |
| 現場で確認しておきたいこと | 労災保険の適用関係 | 特別加入の状況や、必要に応じて加入証明の有無 |
このように、労災保険の適用関係を確認する際は、国籍と働き方を混同しないことが大切です。
雇用される外国人労働者には原則として労災保険が適用されますが、一人親方は一般の労働者と同じ仕組みで自動的に対象となるわけではありません。
一人親方として働いている場合は、特別加入の対象になるかを確認したうえで、自身の加入状況も把握しておきましょう。
関連記事:一人親方と個人事業主との違いとは?わかりやすく解説
雇用されて働く外国人労働者にも原則として労災保険が適用される
日本国内で労働者として雇用されている場合、外国人であっても国籍にかかわらず原則として労災保険の対象です。
仕事中や通勤中に労働災害が発生した際は、要件を満たせば労災保険による給付を受けられます。
つまり、労災保険の適用を考えるうえで重要なのは、外国人か日本人かではなく、労働者として雇用されている立場にあるかどうかです。
一方、自ら仕事を請け負う一人親方は、雇用される労働者とは労災保険上の扱いが異なります。
一人親方は労災保険の特別加入制度を利用できる
一人親方は一般の労働者とは異なり、通常の労災保険の対象にはなりません。
ただし、一定の要件を満たす場合は特別加入制度を利用し、業務中や通勤中の災害に備えることが可能です。
建設現場によっては、元請などから労災保険への加入状況や加入証明書の提出を求められる場合もあります。
一人親方として働いている方は、自身が特別加入しているかを確認し、加入証明書が必要な場合や急ぎで現場入りを予定している場合は、早めに必要な手続きを確認しておくと安心でしょう。
「一人親方団体労災センター」では、一人親方の労災保険特別加入に関する案内を行っています。
労災への加入費用は、通常加入の場合、入会金1,000円・月々の組合費500円・給付基礎日額に応じた労災保険料のみで、最短翌日の加入・加入証明書の即日発行にも対応しています。
労災保険の特別加入制度の利用を検討している方は、お気軽に一人親方団体労災センターへご相談ください。
関連記事:一人親方労災保険の特別加入制度とは
外国人労働者が増えた背景を理解し、建設現場の変化に備えよう
外国人労働者が増えている背景には、少子高齢化や労働人口の減少による人手不足に加え、外国人材の受け入れ制度の整備・拡大があります。
コロナ禍後の入国回復も近年の増加を後押ししており、建設業でも外国人労働者の存在は身近になっています。
同じ現場で働く機会が増えるなかでは、言語や文化の違いを踏まえ、安全に関する情報を確実に共有することが欠かせません。
また、労災保険の扱いは国籍だけでなく働き方によって異なるため、雇用される労働者と一人親方の違いを理解しておく必要があります。
一人親方として建設現場で働く方は、自身が労災保険の特別加入制度を利用できるか、現在の加入状況に問題がないかも確認しておきましょう。
外国人労働者が増える背景と現場への影響を正しく理解し、安全に働ける環境を整えることが、これからの建設現場ではより重要になります。
