一人親方労災保険の「労災センター通信」

労災保険の適用範囲とは?補償を確実に受け取るための知識

 感染症が流行すると、以下の質問が多く寄せられます。

 「職場でうつった可能性が高いけど、労災の適用は認められるの?」

 結論は、ケースバイケースです。労災保険の適用範囲に関して微妙な判断を必要とするケースも多いのが実情です。感染症の他にも、判断が難しいポイントはいくつもあります。

 「トイレ休憩に行こうと思ったら転んでケガをした」
 「会社のクラブ活動で捻挫をした」
 「テレワークだから自宅で仕事をしていたら、ケガをした」

 上記のように多くの方が疑問に感じる労災の適用範囲のポイントについて、一人親方団体労災センターが解説します。労災の適用範囲について迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
労災保険の保険給付

労災保険の適用範囲とは?

 労災保険が適用されるか否かによって加入者にとってはどのような違いが生じるのでしょうか?労災保険加入のメリットを把握するためにも、まず両者の違いを明確にしておきましょう。

適用された場合

 労災保険が適用になる場合、以下の補償給付を受けられます。

  • 療養補償(医療機関での治療費の自己負担が0になります)
  • 休業補償(まったく仕事できない期間の収入が補償されます)
  • 障害補償・傷病補償(一定期間を過ぎても完治しなかったり、障害が残ったりしてしまったときには、年金もしくは一時金を受け取れます)
  • 介護保険(介護が必要になった際は、介護費用が補償されます)

 上記のようにさまざまなリスクに対して幅広く補償されているのがおわかりいただけると思います。民間の保険商品などを組み合わせてさらに補償を厚くすることも可能です。

適用外の場合

 労災保険が適用外の場合に、ケガや病気で病院にいったときに受けられる補償は以下のとおりです。

  • 健康保険(治療費の自己負担割合が3割になります)

 労災保険が適用にならない場合の補償は、基本的に上記のみです。他に受けられる可能性があるのは、個人的に加入している民間の保険商品のみです。
(交通事故のように事故の相手方が存在する場合は、慰謝料や損害賠償を受け取れる可能性があります)
 労災保険が適用されるか否かによって、補償される範囲が大きく異なることがおわかりいただけたかと思います。

労災保険の適用範囲の判断が難しいケース

 続いて、労災保険の適用条件について具体的なケースをチェックしていきましょう。
 この章では、多くの方が判断に迷う場面を6つご紹介します。

感染症など

 感染症の労災認定は、医療従事者であるかそのほかの職種であるかによって判断基準が異なります。
 医療従事者の場合は業務中以外に感染したことが明らかである場合を除いて労災認定されますが、そのほかの職種の場合は業務中に感染した可能性が高いことを証明しなくてはなりません。
 新型コロナウイルスに関して、バスの運転手や生活関連サービスなど、ウイルスの保持者と密に接触するケースが高い職種について労災を認める事例がありますただし、従来は認定基準がかなり厳しいことや、認定に日数を要するなどの懸念点もあります。

 ※新型コロナウイルス(PCR陽性反応)の方は、傷病手当金制度の申請を検討しましょう。
 通常、社会保険加入者が利用できるサービスであり国民健康保険では申請できませんが、特例で認められるケースがあります。その場合、仕事を休業した4日目以降の収入が一定額補償されます。ただし、この国民健康保険の傷病手当金は特例的な制度のため給与の支払いを受けている方が対象です。一人親方は自営業者として働くのが原則のため国民健康保険の傷病手当金の支給対象となるケースは稀といえます。

休憩中のケガ

 休憩中のケガに関しては、業務との直接的な関連性の有無が争点になります。例えば、休憩中にキャッチボールをしていてケガをした場合などは労災認定されにくいですが、トイレに行く途中に躓いてケガをした場合には認定されるでしょう。
 また、職場のイスが破損していたせいでケガをした場合など、設備面に問題があった場合に関しても労災が認定されやすくなります。

テレワーク・現場直行時の労災

 テレワークの場合は、業務との関連性が認められれば労災が適用されます。例えば、自宅で業務に関する資料を手に取ろうとして転倒してしまった場合などが該当します。
 逆に、気分を変えて喫茶店で資料作成をしていたが店内で転倒してケガをした、というケースでは喫茶店に行く必要性がないため労災認定される見込みも低いでしょう。

精神疾患

 うつ病・パニック障害などの精神疾患に関しては、疾患の発症6ヵ月以内に強度のストレスが生じていた場合に、労災が認められます。
 強度なストレス要因の具体例は以下のとおりです。

  • 業務上で重大なミスをし、取引先や顧客に対して事故対応をおこなった結果、精神的に大きな負荷がかかった
  • 未経験の職種などに配置転換となり、緊張状態での仕事を強いられた
  • 継続的に長時間労働を強いられた(さまざまな研究・調査により、長時間労働と精神疾患の相関性が認められています)
  • パワハラ・セクハラなど職場内での人間関係のトラブルが生じていた

 精神疾患による労災認定のためには、状況を客観的に示すデータなどを提出する必要があります。

「通勤中」の判断

 「通勤中」であるか否かの判断は、合理的なルートをとっているか否かが争点になります。
 顧客先や作業現場への直行直帰する場合に関しても、ルートに合理性があれば問題なく労災が認定されます。しかし、業務完了後に同僚や取引先の担当者と長時間にわたり私用の歓談をした後、帰宅していたケースでは、合理的なルートを外れていると判断されるでしょう。
 また、日用品の買い物などにより途中スーパーマーケットに立ち寄る場合などは、店内でのケガは通勤中とは認められませんが、その後会社に向かった時点で合理的なルートに戻ったと判断されます。

労災保険の適用を受けるために必要な証明

労災保険の証明書類
 労災保険の適用範囲を問題にする際、無事に適用されるための証明事項についても意識をもつことが重要です。
 この章では、3つのポイントについて解説します。

業務との関連性

 労災を労働基準局に認定してもらうためには、業務とケガ・病気との関連性を証明する必要があります。
 会社員の場合には、労災保険の給付認定書の事業主記入欄に詳細を記入してもらいましょう。会社側が記入に応じてくれない場合には、空欄のまま直接労働基準監督署に用紙を提出します。
 また、一人親方など特別加入団体の方は、労災保険加入団体を通じて申請の申し込みをしてください。

災害の原因・状況

 ケガや病気と業務との関連を労働基準監督署が判断する際のポイントとなるのは、どのような状況でケガや病気が発生したのかという点です。
 いつ・どこで・どのようにケガ・病気が発生したのかを可能な限り詳細に記載し、申請しましょう。
 記載内容によって、適用されるか否かや適用されるまでの期間が大きく左右されます

診断書

 労災保険の申請の際、場合によっては病院での医師の証明や診断書が必要です。医師の証明が必要なケースの具体例は、休業補償の給付を受ける際です。病気やケガの影響により就労ができない状況であることを医師に証明してもらう必要があります。

 診断書が必要なケースは、障害給付や傷病給付を申請するケースです。いずれのケースにおいても、病院で事情を説明して対応を依頼しましょう。

まとめ

 労災保険の適用がされるか否かによって、治療時の自己負担額や給付金の金額が大きく異なります。
 適用されるか否かの判断は労働基準監督署の判断次第ですが、大きなポイントとなるのは業務とケガとの関連です。業務中や通勤中にケガや病気をしてしまったときは状況を整理したうえで、本記事を参考に適切な手続きを進めてください。

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