一人親方労災保険の「労災センター通信」

労災保険の申請手続きはどうする?基本的な流れと必要書類のまとめ

 労働災害が発生した場合、労災保険の申請手続きはどうすればよいのでしょうか。手続きの流れや必要書類について知っておくなら、労災保険の補償給付をスムーズに受け取ることができるでしょう。
 本記事では、労災保険の申請手続きの基本的な流れや労災保険給付の種類、必要書類をご紹介します。また、手続きする際の注意すべきポイントや加入手続きについても解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
労災申請

労災保険の申請手続きの基本的な流れ

 「労災保険」とは、「仕事中や通勤途中の事故が原因で怪我をしたり病気になったりした場合に、治療費などの保険給付が受けられる制度」のことです。
 正社員・パート・アルバイトなど雇用形態に関わらず、会社から賃金の支払いを受ける労働者は労災保険が適用されます。一人親方など個人事業主の場合でも、任意の特別加入制度を利用すると、労災補償を受けられます。
 しかし実際に労働災害が発生した場合、「何をすればよいのか分からない」という方は少なくありません。ここでは、労災保険の申請手続きの流れを大きく3つのステップに分けて解説します。

勤務先に労働災害が発生したことを連絡する

 労働災害が発生した場合、勤務先に速やかに連絡してください。連絡事項に以下の点を含めると、労災保険の申請手続きをスムーズに行えるでしょう。

  • 被災労働者の名前
  • 労働災害が発生した日時
  • 事実関係を知る人の名前と連絡先
  • 労働災害の発生状況

 近くに「労災病院」や「労災保険指定医療機関」があるかを確認し、診療や治療を受けるようにします。救急搬送の場合も、隊員に「労災」であることを伝え、労災保険指定病院に搬送してもらうようにしましょう。最寄りに労災保険指定病院がない場合、指定外の病院で治療を受けることも可能です。

労災保険給付の請求書など必要書類を提出する

 労災保険給付の請求書など、必要書類を所轄の「労働基準監督署」に提出します。請求書は「厚生労働省」の公式サイトでダウンロード可能です。労災保険給付の種類ごとに必要書類が異なるため、確認しましょう。
 労災保険指定病院で診療や治療を受ける際は、会社の証明が記載された請求書を医療機関に提出します。一方、労災保険指定病院以外で治療を受ける場合や、その他の給付を受ける場合は、請求書と必要書類を用意して直接労働基準監督署に提出します。

労働基準監督署による調査と給付の決定

 労災保険給付の申請をすると、労働基準監督署は受診した医療機関や会社などを対象に調査を行います。被災労働者への聞き取りが行われることもあるため、その際は調査への対応が求められるでしょう。
 申請書類の確認と調査に基づいて労災保険給付の可否が決定されますが、最終判断を下すのは労働基準監督署長です。

労災保険給付の種類と必要書類

労災申請の必要書類
 労災保険給付の種類により、提出する必要書類が異なります。また仕事による「業務災害」と、通勤中の「通勤災害」でも必要書類が異なるため注意が必要です。
 ここでは、労災保険給付の種類とそれぞれの必要書類についてまとめます。

療養補償給付

 業務または通勤が原因で怪我をしたり、病気になったりして治療を受ける場合、「療養補償給付」が支給されます。労災保険指定病院の場合、会社の証明を受けた以下の請求書を病院に提出すると、無償で治療を受けられます。

  • 業務災害…療養補償給付たる療養の給付請求書 業務災害用(様式第5号)
  • 通勤災害…療養給付たる療養の給付請求書 通勤災害用(様式第16号の3)

 労災保険指定病院以外で治療を受けた場合は、病院でかかった費用をいったん全額自己負担しなければなりません。その後、労働基準監督署に請求書を提出します。提出する請求書は以下のとおりです。

  • 業務災害…療養補償給付たる療養の費用請求書 業務災害用(様式第7号)
  • 通勤災害…療養給付たる療養の費用請求書 通勤災害用(様式第16号の5)

 病院への支払いや看護・移送などにかかった費用があれば、領収書なども添付して提出してください。

休業補償給付

 労災による怪我や病気が原因で仕事を休まなければならない場合、「休業補償給付」を受けられます。休業補償給付は、休業4日目以降からが対象となり、補償されるのは休業特別支給金とあわせて給付基礎日額の80%です。業務災害の場合、休業3日目までは平均賃金の60%が会社から支払われます。
 以下の必要書類を労働基準監督署に提出し、休業補償給付の申請手続きを行います。

  • 業務災害…休業補償給付支給請求書 業務災害用(様式第8号)
  • 通勤災害…休業給付支給請求書 通勤災害用(様式第16号の6)

障害補償給付

 業務または通勤における怪我や疾病により後遺症が残る場合、「障害補償給付」を受けられます。障害補償給付は、障害の程度により以下のように分けられます。

  • 障害等級第1級から第7級に該当するケース:「障害補償等年金」「障害特別支給金」「障害特別年金」
  • 障害等級第8級から第14級に該当するケース:「障害補償等一時金」「障害特別支給金」「障害特別一時金」

 障害補償給付の請求手続きをする際は、労働基準監督署に以下の書類を提出しなければなりません。

  • 業務災害…障害補償給付支給請求書 業務災害用(様式第10号)
  • 通勤災害…障害給付支給請求書 通勤災害用(様式第16号の7)

 加えて、医師の診断書やレントゲン写真などの資料を提出するよう求められる場合もあります。

介護補償給付

 労災により被災労働者が重度の後遺障害を負った場合、「介護補償給付」が支給されます。対象となるのは、障害等級・傷病等級が第1級の方、および第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している方で、現に介護を受けている場合です。
 以下の請求書や必要書類を労働基準監督署に提出して手続きを進めます。

  • 介護補償給付支給請求書(様式第16号の2の2)
  • 医師の診断書や介護費用の金額を証明する書類など

遺族補償給付

 業務または通勤が原因で被災労働者が亡くなった場合、遺族に対して「遺族補償給付」が支給されます。労働基準監督署に申請しますが、手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 業務災害…遺族補償年金支給請求書 業務災害用(様式第12号)
  • 通勤災害…遺族年金支給請求書 通勤災害用(様式第16号の8)
  • 死亡診断書、戸籍謄本証明資料、被災労働者の収入で生計を維持していたことを証明する書類など

葬祭給付

 労災により死亡した被災労働者の葬祭費用については、葬祭を執り行う遺族または会社に対して、「葬祭給付」が支給されます。以下の書類を労働基準監督署に提出して申請します。

  • 業務災害…葬祭料給付請求書 業務災害用(様式第16号)
  • 通勤災害…葬祭給付請求書 通勤災害用(様式第16号の10)
  • 死亡診断書、除籍謄本、住民票など

労災保険の申請手続きで注意すべきポイント

 労災保険の申請手続きをスムーズに行うためのポイントがいくつかあります。ここでは、手続きの流れで特に注意すべきポイントを2つご紹介します。

治療はできるだけ労災保険指定病院で行う

 先述のとおり、労災が発生した場合、できるだけ「労災保険指定病院」で治療を受けます。労災であることを病院に伝えると、無償で診療・治療を受けられるからです。なお会社の証明を受けた請求書を病院に提出すると、手続きをスムーズに行えます。
 労災保険指定病院以外で治療を受ける場合は、医療費の全額をいったん自己負担しなければなりません。自己負担は一時的ですが、かかった費用の支給までに時間がかかることがあります。治療が長引くような場合は家計に負担となる可能性もあるでしょう。
 万一に備え、事前に最寄りの労災保険指定病院をリストアップしておくと安心です。

労働災害で健康保険は使用できない

 労働災害は健康保険を使用できないため注意が必要です。「勤務先に迷惑をかけたくない」「手続きが面倒だ」などの理由で、健康保険を使って治療を受ける方も少なくないようです。しかし、労働災害は健康保険の対象外となるため、必ず労災保険を使って治療するようにしてください。
 知らずに健康保険を使って治療を受けてしまった場合、医療機関に労災である旨を伝えて労災保険に切り替えてもらいましょう。病院で切り替えできない場合は、医療費をいったん全額負担してから、労働基準監督署に労災保険の申請手続きをします。

労災保険の加入手続きについて

 「労災保険に加入するために、労働者も何らかの手続きをしなければならないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。労災保険の加入手続きに関しては、正社員・アルバイトなど会社に雇われている場合と、一人親方など個人事業主の場合で異なります。
 ここでは、それぞれのケースを解説します。

労災保険の加入手続きは事業者が行う

 正社員・パート・アルバイトなど会社に雇われている場合、労働者が労災保険の加入手続きをする必要はありません。なぜなら、加入手続きを行う義務は「事業者」にあるからです。
 雇用形態に関わらず、1人でも労働者を雇った場合、事業者は速やかに労災保険の手続きをしなければなりません。労働者を雇用した日が労災保険の加入日となります。
加入後に労働災害が発生した場合、被災労働者は労働基準監督署に労災保険の申請手続きを行えます。

一人親方など個人事業主の場合

 一人親方など個人事業主の場合は、労災保険の対象外とされています。しかし「一人親方労災保険の特別加入制度」があり、任意加入が認められています。
 加入手続きは簡単です。例えば「一人親方団体労災センター」の場合、インターネット・郵送・FAXのいずれかの方法で申込み可能です。
身分証の写しなど必要書類を添付して申込むと、費用が案内されます。費用の支払い後に労働局へ加入申請が行われ、最短で振込翌日に加入できます。

まとめ

 本記事では、労災保険の手続きの流れや必要書類について解説しました。労災保険は、業務災害や通勤災害で怪我をしたり病気になったりした場合に、必要な保険給付を受けられる制度です。
 万一のときにスムーズに給付を受けられるよう、労災保険の申請手続きの流れを把握し、最寄りの労災保険指定病院をリストアップしておくとよいでしょう。
 一人親方など個人事業主の方も、特別加入制度を活用するなら、万一の場合にも労災保険の給付を受けることができて安心です。

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