一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方が法人化するメリットは?後悔しない注意点や流れを解説

 個人事業主として働く一人親方の年収がある程度増えてくると、法人化をすすめられるケースがあります。そこで、以下のような疑問が生じるでしょう。
 
 「一人親方が法人化するメリットは?」
 「法人化するにあたり注意点はある?」
 「法人化するタイミングはいつがよい?」

 本記事では、法人化を検討している一人親方のために、法人化の4つのメリットと5つの注意点を解説します。法人化のタイミングや流れについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

一人親方の法人化とは

 一人親方の法人化とは、個人事業主として行っていた事業や所有する資産・建物・車両などを引き継いで、会社を設立することです。混同されやすい言葉に「起業」がありますが、この場合は引き継ぐものはなく、個人事業主を経ずに新しく法人を立ち上げることを意味します。
 個人事業主として働いている一人親方は、事業の拡大を検討するにあたり、あるいは年収が一定を超えたタイミングで税理士にすすめられるなどで、法人化すべきか悩むケースがあるようです。確かに、法人化することで税負担が減る可能性があるなどさまざまなメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。
 そこで、一人親方は法人化を検討する際に、メリットや注意点を比較検討して、最適なタイミングを見計らう必要があります。

一人親方が法人化するメリット

 一人親方が法人化するメリットは、大きく4つあります。

  • 税制面で優遇される
  • 信用度が上がり事業拡大がしやすくなる
  • 賠償責任が有限になる
  • 決算日を自由に設定できる

 ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説します。

税制面で優遇される

 一人親方が法人化するメリットのひとつに、税制面で優遇されることが挙げられます。
 以下の表からもわかるように、個人事業主が支払う所得税と、中小法人の法人税では、税率が異なります。

所得金額(1,000円未満切り捨て) 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」

区分 法人税率
年800万円以下の部分 15%
年800万円超の部分 23.20%

 参考:国税庁「No.5759 法人税の税率」
 上記の税率を比較すると、所得が高くなるほど法人化したほうが税率を低く抑えられるとわかります。
 これに加えて、法人化すると経費の幅が広くなり、以下のような経費を差し引くことで節税につながるのも大きなメリットです。

  • 役員報酬
  • 社員社宅
  • 法人保険
  • 退職金

信用度が上がり事業拡大がしやすくなる

 一人親方が法人化することで、信用度が上がり事業拡大がしやすくなるメリットもあります。
 法人化すると必ず登記が行われ、資本金・役員・商号・事業目的などが公にされます。大手企業などでは、取引相手として個人事業主ではなく事業の実態が明らかな法人を選ぶケースも多く、今後仕事の幅を広げたいと考える一人親方にとって重要なポイントです。
 また、法人化して信用度が上がると金融機関などから融資が受けやすくなり、事業拡大だけでなく事業継続が困難な時期にも助かるケースが考えられます。
 求職者にとっても、個人事業主よりも福利厚生が充実している法人に魅力があり、アルバイトや従業員を雇って組織を大きくしたいとき、有利になるでしょう。
 事業拡大を検討している一人親方は、2023年からはじまる「インボイス制度」にも注目する必要があります。これは、仕入税額控除の適用にインボイス(適格請求書)の発行が必要になる制度のことです。
 インボイスは、課税事業者で適格請求書発行事業者の承認を受けた事業主しか発行できなくなるため、免税事業者として活動する個人事業主の一人親方は仕事の依頼が減ると考えられます。
 そこで、課税事業者である法人になることが、仕事量を維持するためにメリットとなると言われています。

賠償責任が有限になる

 一人親方が法人化すると、賠償責任が有限になるメリットもあります。
 個人事業主の場合、取引や仕入れなどで生じた借金や、万一の事故で賠償責任を求められるようなときは、個人事業主である一人親方自身が返済責任を負うことになります。個人の財産を手放すなど、家族の生活に影響が及ぶ可能性も考えられるでしょう。
 一方で、法人の借金や賠償責任は、一人親方自身が連帯保証をしていない限り、個人で返済責任を負う必要はありません。法人と代表者は別個の存在として扱われ、破産や個人で抱えきれないほど大きなトラブルが生じても、個人の財産で賠償することはなく安心です。

決算日を自由に設定できる

 一人親方が法人化すると、決算日を自由に設定できるようになります。
 個人事業主の場合、確定申告の時期が毎年2月半ば~3月半ばと決まっており、繁忙期と重なるとたいへん忙しくなります。 確定申告の時期をずらすことはできず、この時期は必要書類の作成と現場作業に追われることになるでしょう。
 一方で、法人化すると決算日の2ヵ月以内に法人税の申告を行うことになりますが、決算日は会社の任意で365日のいずれの日にも設定できます。
 会社の繁忙期とずらして決算日を設定することで、時間的余裕をもって決算業務に集中できるのは大きなメリットです。また、決算日を変更することも可能で、設立1年目に何も考えずに設定してしまった場合でも安心です。

後悔しないために!一人親方が法人化する際の注意点

 一人親方が法人化するメリットとともに、以下の5つのデメリットも検討する必要があります。

  • 法人設立時に手間と費用がかかる
  • 高額の社会保険料が負担になる
  • 赤字決済でも法人住民税の支払いが必要になる
  • 会計処理が複雑になる
  • 法人のお金は自由に使えない

 ここでは、それぞれの注意点を詳しく解説します。

法人設立時に手間と費用がかかる

 一人親方が法人化するにあたり、法人設立時に手間と費用がかかるため注意が必要です。
 まず、法人の種類や会社の基本的事項を決定し、会社の定款の作成と認証など、手間のかかるさまざまな取り決めや手続きをしなければなりません。また、すでに個人事業主として建設業に携わっている場合でも、法人として新たに建設業許可の申請が必要です。
 これらに加えて、定款認証費用として公証人の手数料が5万円、登録免許税は最低でも15万円かかります。資本金に関しては、1円から設定することも可能ですが、経営に必要な資金の確保や会社としての信用を得るために、ある程度のまとまった金額が必要になるでしょう。

高額の社会保険料が負担になる

 一人親方が法人化すると、健康保険と厚生年金への加入義務が生じ、高額の保険料が負担になる場合もあります。
 個人事業主の一人親方は、国民健康保険と国民年金に加入し、個人で費用を負担します。しかし、法人化により健康保険と厚生年金に切り替えると保険料は高くなり、さらに従業員を雇う場合は会社の負担分もあり、従業員の数や月給に応じてまとまったお金が必要です。
 社会保険に加えて雇用保険や労災保険の加入義務も加わり、複雑な手続きを社会保険労務士に依頼する場合はさらに手数料が発生します。

赤字決済でも法人住民税の支払いが必要になる

 一人親方が法人化すると、赤字決済でも法人住民税の支払いが必要になるため注意が必要です。
 個人事業主の場合、事業が赤字で所得がない年は、所得税と住民税は発生しません。法人の場合も赤字決済の年に法人税は発生しませんが、法人住民税に関しては利益の有無にかかわらず支払う義務があります。
 赤字額を問わずに法人住民税は年間7万円発生するため、法人化するメリットとよく比較することが大切です。

会計処理が複雑になる

 一人親方が法人化する際の注意点に、会計処理が複雑になることも挙げられます。
 会計処理を自ら行っていたとしても、個人事業主の確定申告と法人決済では難易度が大きく異なります。より複雑な会計処理や税務申告を税理士に依頼すると、さらに数十万円の費用が発生し、大きな負担になることもデメリットのひとつです。
 また、法人化後に事務処理を外注したとしても、書類に目を通したりその他の事務作業を行う必要が出たりして、職人として現場に入る時間が取りにくくなるケースも考えられます。

法人のお金は自由に使えない

 一人親方が法人化すると、法人のお金は自由に使えないことにも注意が必要です。
 個人事業主として仕事で得られた利益は、基本的にすべて自分のお金で自由に使えました。しかし法人化した後は、会社のお金と自分のお金を区別する必要があります。
 自由に使えるお金は役員報酬のみとなり、繁忙期であったとしても普段と変わらない一定額を受け取ることになります。

一人親方が法人化するタイミングと流れ

 「今すぐに法人化すべきだろうか」「法人化する流れを知りたい」などと考える一人親方もいるでしょう。
 ここでは、一人親方が法人化を検討するタイミングや流れをわかりやすく解説します。

法人化を検討するタイミングは?

 一人親方が法人化を検討するタイミングの目安は、主に以下の4つです。

  •  年間の売上が1,000万円を超えたとき
    売上が1,000万円を超えると、翌々年から消費税課税事業者となります。
    消費税の納付義務が生じる前に法人化すると、個人事業の売り上げ実績がリセットされ節税につながります。
  • 課税所得が900万円を超えたとき
    課税所得が900万円を超えると、所得税率が法人税率を上回ります。
    税制面でのメリットを考慮して、法人化を検討できるでしょう。
  • 社会保険に加入したいとき
    法人化すると健康保険や厚生年金に加入できます。
    「年金受給額を増やしたい」「労働時のリスクを減らしたい」などの場合に法人化を検討できます。
  • 事業拡大を目指したいとき
    大手企業を含めより多くの仕事を受注したい場合は、法人化して信用度を上げるのが効果的です。
    また、法人化して福利厚生を充実させると、求職者へのアピールになります。

法人化する際の5つの流れ

 一人親方が法人化する際の流れを、大きく5つのステップにまとめます。

  1. 会社の基本事項決定
    法人の種類(合名会社・合資会社・合同会社・株式会社)・商号・事業目的・所在地・発起人・出資金額・取締役と任期・事業年度・決算日などを決めます。
  2. 個人と会社の実印作成
    発起人と取締役の実印、会社の実印を作成して印鑑証明書を発行します。
  3. 定款の作成と認証
    「絶対的記載事項」を忘れずに設定した定款を作成し、公証人の認証を行います。
  4. 資本金の払い込み
    発起人の口座に資本金を払い込み、振込証明書を作成します。
  5. 登記申請書の作成と登記申請
    登記申請書の作成とその他の必要書類を揃えて、法務局に登記申請を行います。

一人親方が法人化した場合の労災保険はどうなる?

 会社に雇われている従業員やアルバイトなどは、強制的に労災保険に加入し、労働災害時には労災保険から必要な給付が受けられます。しかし、自ら仕事を受注して働く建設業の一人親方の場合は、労災保険の対象外です。
 ただし、任意で労災保険の特別加入が認められていて、労働災害時には加入時に設定した給付基礎日額に応じて補償が受けられます。
 一人親方が法人化した場合も、以下のいずれかにあてはまる場合は一人親方に該当すると考えらえます。

  • 会社との雇用関係はなく個人で仕事を請け負っている
  • 特定の会社に所属しているがその会社と請負で仕事を行っている
  • グループで仕事をしているがお互いに雇用関係はない

 なお、法人化後に事業拡大して、労働者の雇用が年間100日以上になると、一人親方ではなく中小事業主になるため注意が必要です。
 一人親方労災保険への加入に関する疑問や質問は、「一人親方団体労災センター」まで、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

 一人親方が法人化することのメリットや注意点をまとめました。
 税制面での優遇が受けられるなどメリットは大きいため、一定の売り上げを超えた場合や事業拡大を考えている場合は、法人化を検討するとよいでしょう。その際は、費用や手間などデメリットも考慮して、トータルでメリットになるかを確認することが大切です。
 また、個人・法人を問わずに一人親方は労災保険に特別加入できます。法人化の検討とともに、業務中のケガや病気へのリスク対策も忘れずに行いましょう。

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