突然の事故で大切なご家族を亡くされた際、大多数の方はこれからの生活に困惑と不安を覚えることでしょう。
労災保険の遺族年金は、残されたご遺族の生活を亡くなった労働者に代わって経済的に支えるための大切な制度です。
この制度を正しく活用するには、受給できる遺族の条件・金額・申請期限などのルールを把握しておく必要があります。
そこで本記事では、労災保険の遺族年金の仕組み・受給資格・手続き方法などについて分かりやすく解説します。
万が一の際、ご遺族が安心して生活を送るための一助として、本記事の内容をお役立てください。
Contents
労災保険の遺族年金とは?
労災保険の遺族年金とは、仕事中や通勤中のけがや病気が原因で労働者が亡くなった場合に、遺族に支給される制度です。
収入を支えていた方が亡くなると遺族の生活は大きな影響を受けるため、その生活を経済的に支えることが目的です。
労災保険の遺族に対する給付には、継続して支払われる「遺族(補償)等年金」「遺族特別年金」と、まとまった金額が支払われる「遺族(補償)等一時金」があります。
本章では、これら3つの給付制度について詳しく解説します。
遺族(補償)等年金
遺族(補償)等年金とは、業務災害や通勤災害で労働者が亡くなった場合に、遺族の生活を支えるために継続して支給される年金です。
遺族(補償)等年金の受給資格者や給付内容などについて詳しく解説します。
受給資格者
遺族(補償)等年金を受け取れるのは、亡くなった労働者の収入によって生活していた遺族(配偶者・子ども・父母・孫・祖父母・兄弟・姉妹)です。
被災労働者の収入で生活費の一部を維持していた「共働き」も遺族に含まれます。
ただし、妻以外については障害の有無や年齢が遺族の資格要件となります。
受給資格者と優先順位は次のとおりです。
- 妻、または60歳以上もしくは一定の障害がある夫
- 18歳になった後の最初の3月31日までの子、または一定の障害がある子
- 60歳以上、または一定の障害がある父母
- 18歳になった後の最初の3月31日までの孫、または一定の障害がある孫
- 60歳以上、または一定の障害がある祖父母
- 18歳になった後の最初の3月31日までの兄弟姉妹、または60歳以上もしくは一定の障害がある兄弟姉妹
- 55歳以上60歳未満の夫
- 55歳以上60歳未満の父母
- 55歳以上60歳未満の祖父母
- 55歳以上60歳未満の兄弟・姉妹
一定の障害とは、障害等級第1級~第5級の身体障害のことです。
受給できる遺族には優先順位があり、順位の高い方が受給者となります。
給付の内容
遺族(補償)等給付の対象者には「遺族(補償)等年金」「遺族特別年金」「遺族特別支給金」の3つが支給されます。
遺族(補償)等年金と遺族特別年金は継続的に支払われる年金で、遺族特別支給金は一時金です。
それぞれの支給内容は表のとおりです。
| 遺族の人数 | 遺族(補償)等年金 | 遺族特別年金 | 遺族特別支給金(一時金) |
|---|---|---|---|
| 1人 | 給付基礎日額×153日分 | 算定基礎日額×153日分 | 300万円(1回のみ) |
| 2人 | 給付基礎日額×201日分 | 算定基礎日額×201日分 | |
| 3人 | 給付基礎日額×223日分 | 算定基礎日額×223日分 | |
| 4人以上 | 給付基礎日額×245日分 | 算定基礎日額×245日分 |
ただし、遺族が1人で55歳以上の妻または一定の障害がある妻の場合は、遺族(補償)等年金の給付基礎日額の175日分と遺族特別年金の算定基礎日額175日分がそれぞれ支給されます。
遺族(補償)等年金と遺族特別年金は、支給要件を満たした月の翌月分から2ヶ月分をまとめて年6回の支給です。
受け取れる金額
遺族(補償)等給付の金額は、給付基礎日額と算定基礎日額の2つの金額をもとに計算されます。
給付基礎日額は主に遺族(補償)等年金の計算に使われ、算定基礎日額は遺族特別年金の計算に使われます。
給付基礎日額とは、けがや病気が発生する直前3ヶ月間に支払われた賃金の合計を、その期間の日数で割って計算した1日あたりの賃金額のことです。
これは平均賃金に相当する金額で、月給・日給・残業代などは含みますが、ボーナスや臨時に支払われる賃金は含まれません。
例えば、3ヶ月間の賃金総額が90万円・日数が90日の場合、90万円÷90日=1万円となり、給付基礎日額は1万円です。
遺族が1人の場合は1万円×153日分となるため、遺族(補償)等年金は年間153万円となります。
算定基礎日額は、過去1年間に支払われた賞与などの特別給与の合計を365日で割った金額です。
例えば、過去1年間の賞与総額が73万円の場合の算定基礎日額は、73万円÷365日=2,000円です。
遺族が1人の場合、2,000円×153日分となるため、遺族特別年金は年間30万6,000円となります。
前払一時金制度について
遺族(補償)等給付を受給する遺族は、将来受け取る年金の一部をまとめて受け取る前払一時金制度を利用できます。
前払いできる金額は、給付基礎日額の200日分から1,000日分までの範囲です。
ただし、前払一時金を受け取ると、その金額に達するまで遺族(補償)等年金は支給停止となります。
なお、前払一時金は被災労働者が亡くなった日の翌日より2年を過ぎると請求できなくなるため、利用する場合は早めに手続きを行いましょう。
遺族(補償)等一時金
遺族(補償)等一時金は、遺族(補償)等給付の対象とならない場合などに支給される一時金であり、次のようなケースが該当します。
- 労働者が亡くなった時点で、遺族(補償)等給付を受け取れる遺族がいない場合
- 遺族年金の受給者が受給資格を失い、それまでに支給された年金や前払一時金の合計金額が、給付基礎日額の1,000日分に満たない場合
遺族(補償)等一時金についても詳しく見ていきましょう。
受給資格者
遺族(補償)等一時金を受け取れるのは、亡くなった労働者の遺族のうち、決められた順位に該当する方です。
同じ順位の方が複数いる場合は、その全員が受給者となります。
受給資格者の順位は次のとおりです。
- 配偶者
- 労働者の収入で生活していた子・父母・孫・祖父母
- 上記以外の子・父母・孫・祖父母
- 兄弟・姉妹
このように、配偶者の優先順位が最も高く、その次に生計を維持されていた親族、その次にそのほかの親族という順番で受給者が決まります。
給付の内容
遺族(補償)等一時金は、状況によって支給される内容が異なるため、それぞれのケースごとにどのような給付が受けられるのか確認しておきましょう。
まず、労働者が亡くなった時点で遺族年金を受け取れる遺族がいない場合は、次の給付が支給されます。
- 遺族(補償)等一時金:給付基礎日額1,000日分
- 遺族特別支給金:300万円
- 遺族特別一時金:算定基礎日額1,000日分
次に、遺族年金を受けていた方がすべて受給資格を失った場合で、それまでに支払われた年金や前払一時金の合計額が給付基礎日額1,000日分に満たない場合の支給は次のとおりです。
- 遺族(補償)等一時金:給付基礎日額1,000日分から、支給済みの遺族年金や前払一時金の合計を差し引いた額
- 遺族特別一時金:算定基礎日額1,000日分から、支給済みの遺族特別年金の合計を差し引いた額
このように、遺族(補償)等一時金は、遺族年金を受け取れない場合や支給総額が一定額に満たない場合に、その不足分を補うため支給される仕組みになっています。
受け取れる金額
遺族年金を受け取れる遺族がいない場合、どのくらい遺族(補償)等一時金が支給されるのか見ていきましょう。
亡くなる前3ヶ月を90日と仮定して賃金総額が90万円ならば、給付基礎日額は90万円÷90日で1万円となります。
この場合、遺族(補償)等一時金は給付基礎日額の1,000日分となるため、1万円×1,000日分で1,000万円が支給されます。
また、過去1年間の賞与総額が73万円だった場合、算定基礎日額は73万円÷365日で2,000円です。
遺族特別一時金は算定基礎日額の1,000日分となるため、2,000円×1,000日分で200万円が支給されます。
このように、遺族(補償)等一時金は亡くなった方の賃金と賞与をもとに計算され、その金額に応じて受け取れるのです。
労災保険の遺族年金はいつまでもらえる?
遺族(補償)等給付は、受給資格のある間は継続して受け取れます。
優先順位が同じ方が複数いる場合はその全員が受給者となり、年金は人数で分けて受け取る形になります。
配偶者の場合は、再婚するまで遺族年金の受け取りが可能です。
子・孫・兄弟・姉妹は、18歳に達した日以後、最初に迎える3月31日まで受給できます。
また、障害を理由に受給している場合は、その障害の状態に該当しなくなるまで受給が続きます。
なお、最も優先順位の高い受給者が死亡や再婚などによって受給資格を失った場合は、次の順位の遺族が新たに受給者となり、遺族年金を受け取れるのです。
労災保険の遺族年金の申請手続きと必要書類
労災保険の遺族年金を受け取るためには、「遺族補償年金支給請求書」または「遺族年金支給請求書」に必要書類を添付し、労働基準監督署へ提出する必要があります。
主な添付書類は、死亡診断書・戸籍謄本・住民票・生計維持関係を証明する書類などです。
障害のある遺族が請求する場合は診断書も必要になります。
書類の提出先は、亡くなった労働者の勤務先を管轄する労働基準監督署です。
不明点がある場合は、提出前に労働基準監督署へ相談することをおすすめします。
労災保険の遺族年金の申請期限
労災保険の遺族年金や遺族(補償)等一時金には申請期限があり、期限を過ぎると請求できなくなります。
遺族(補償)等年金と遺族(補償)等一時金の請求期限は5年です。
起算日は労働者が亡くなった日の翌日で、この期間を過ぎると時効となり、その後は給付を受けられません。
また、遺族(補償)等年金の前払一時金については、亡くなった日の翌日から2年が時効となります。
前払一時金を希望する場合は、期限が短いため注意が必要です。
まとめ
労災保険の遺族(補償)等給付は、仕事中や通勤中のけがや病気で労働者が亡くなった場合に、遺族の生活を支えるために支給される制度です。
遺族(補償)等給付には、年金として受け取る遺族(補償)等年金・遺族特別年金・まとまった金額で受け取る遺族(補償)等一時金があり、遺族の状況によって支給される内容が異なります。
給付申請の時効は労働者が亡くなった翌日から5年ですが、遺族(補償)年金前払一時金の時効は2年です。
不明点がある場合は、亡くなった労働者の勤務先を管轄する労働基準監督署に確認しましょう。
